[第十二話]喧嘩の花
まるおが家を出て行ってから、30分が経った。
まるおと言い合いになった時は
「お前のためにやってるのに!!」
「なんでそんな言い方するんだ!!」
という想いが先行しすぎて、まるおに怒りが沸いていたが、30分経過したことにより、俺の怒りが落ち着き冷静になったことで、とんでもないことをしてしまったと後悔の気持ちで心も体も埋め尽くされていた。
椅子に座り、ただ茫然と壁を眺めていた。
机の上には面接や試験対策の本が並んでいるが、今の俺には、もう、どうでも良くなっていた。
今頃まるおはどうしているのだろうか。30分経っても帰ってこないことを考えると、本当に俺のことが嫌になって、二度と戻ってこないのかもしれない。
案外、俺じゃなくても、他のやつと暮らしても何の問題もなく、楽しく過ごしているのかもしれない。
追いかけて確かめないと...
でも、いまさら追いかけたところで、まるおは俺のことを許してくれるのだろうか。
どうしてあんなことで怒ってしまったのだろうか。
まるおは、俺みたいな人間と一緒にいない方が、幸せなのかもしれない。
今からでも遅くない、探すべきだと頭では理解しているが、体が動かない。追いかけて見つけたところで、まるおに俺を否定されたら、俺と過ごすのが嫌と言われたら...
面接官が俺に言い放った、俺を否定するたくさんの言葉が頭の中でぐるぐると回っている。
誰かに、否定されたくない。否定されたくない。
...もしかしたら、ベランダに帰ってきてるかもしれない。
窓のある部屋に移動し、窓の方を眺めると、大きな雨音が聞こえてきた。
強い風が吹いているようで、窓が少しガタガタと揺れている。
慌ててテレビで天気情報を確認すると「大雨警報」「強風注意報」が出ていた。
まるおが出て行った時は雨は降っていなかったはず。今降り始めたのか、それとも少し前から降り始めたのかは分からない。
それでも、この雨の中なら、まるおは帰りたくても帰れないだろう。しかも、この強風だ。まるおが無事である保証もない。
いや、そもそも、俺はなぜ、ちゃんと考えていなかったんだ。
まるおに否定されるのが怖い、怖い、ばかり考えていたが、1人で出かけたことのないまるおだ。車に轢かれていら可能性だってあるし、歩く花の物珍しさで、悪い人間に捕まっている可能性だってある。
まるおに否定されることも怖い。でも1番怖いのは、ままるおを失うことだ。
俺は傘を片手に、外に出て走り出した。




