第8話 速多の初レース
各車グリッドに着く
シグナルランプがレッドからブルーに変わった瞬間
一斉に飛び出していく
ハイパワーマシン達の、けたたましい咆哮がレース場に広がる
バアァァーン!!
ヴオォォーン!!
男達のマシンが先行していくが、速多のスイスポは後方に単独でいる
速多「やっぱりストレートでは
置いていかれますね、、」
凛「何を今更言ってるのよ!
そんなのは分かりきってたことじゃない!
相手は3倍の馬力を持つマシンたちなのよ!
今は、我慢の時だわ!しっかり集中しなさい!」
速多「はい!コーナーで差を詰めて
追い抜かします!」
男1(やっぱりあのポンコツじゃ追いつけないか!このまま引き離して、コーナー3つくらい抜けたらバックミラーから消してやる!)
しばらく走ると、すぐに速多達がポツンと単独になっていた
ライドオンのサーキットは、前半はストレートが多く、速多達には苦しい展開になる
しかし後半はコーナーが、かなり多いテクニカルコースに変化する
速多達はそこで勝負を掛けるため、今はとにかく
これ以上離されないようにする
速多「凛さん!前とのタイム差は!?」
凛「6秒よ!悪く無いけど、良くもないわ!」
観客達はレースの行く末を見守る
B「なぁ山岡、今の状況を見てどう思う?」
山岡「悪くないと思うよ!ただ、これ以上離されたら厳しくなる、これからが本番だね!」
(ここからが本番だよ、速多)
レースはいよいよ後半を迎える
男1(意外としぶといな、こっちは全開で走っているのに、ここからはタイトなコーナーが続く、俺の35では走りにくい区間になる、どんな手を使っても前には行かせねぇ!)
凛「速多!差がどんどん縮まって来てるわ!」
速多「了解です!」
速多は凛のナビゲーションに従い、コーナーをトップスピードで駆け抜けていく
一方の男達は、自身のマシンを制御するので精一杯
ハイパワーで車体が大きい男達の車では、この区間のコーナーは、かなり難易度が高い
速多は徐々に追い付いていき、遂にエボ10の後ろに張り付く
男2(嘘だろ!もう追いついてきたのか!?)
スイスポのボンネットに貼られたくま吉が不気味に微笑んでいるように見えた
男2(なんだ?このプレッシャーは?まるで猛獣に追い詰められている気分だ)
凛「速多!慌てることはないわ!
次のコーナーでアウトから抜き去りなさい!」
速多「分かりました!」
男2(くそ!外から抜く気か?舐めやがって!外からは行かせねぇよ!)
その時!
前を走っているNSXがランエボの走路を塞いでしまう
男2「あいつ!何ヤッてんだ!」
ガァシャャン!
ランエボとNSXはぶつかりスピンする
その間を縫うようにスイスポが駆け抜けていく
観客達は大盛り!
A「あいつら!自滅したぞ!」
B「それにしても速多はすげぇ!冷静に避けてったぞ!本当にレースは初めてなのか!?」
山岡(見事なオーバーテイクだ、初めてのレースとは
思えない位に落ち着いている、流石だ!)
信濃(後は35だけか、この先はタイトなコーナーしか残っておらず物理的にオーバーテイクは難しい、どうする?速多)
男1「あのバカ共!何してるんだ!」
速多「ぶつかるかと思いましたよ!凛さん!」
凛「えぇ、流石に肝が冷えたわ!やるじゃない!」
速多は35のテールにノーズを近づけてプレッシャーを放つ
くま吉が『次は君の番だよ』と言わんばかりに男に不気味に微笑んでいるように見えた
男は何とも言えない不安に襲われる
男1「なんなんだ!スイスポにここまで追い詰められるなんて!冗談じゃない!だが、ここからは道幅が狭く追い抜かれる事は無い!この勝負もらった!」
スイスポと35はコーナーを抜けて
最後の180°コーナーに差し掛かる
35はブレーキを掛けコーナーに備える
しかし、スイスポはそのまま突っ込んでいく
男1「馬鹿か!死にたいのか!そんな速さで曲がれるわけない!ウォールに突き刺さるぞ!マシントラブルか!?」
凛「まだよ!まだブレーキは踏まないで!
私の合図をしっかり聞きなさい!」
速多「分かりました!」
スイスポはトップスピードで35をオーバーテイクする
凛「今よ!思っきりかましなさい!」
コーナーに差し掛かる直前
スイスポのものすごいスキール音が鳴り響く
ギュルルル!
スイスポはウォールのスレスレを見事曲がり切り
そのままゴールする
観客達は大盛り
A「うぉぉ!すげぇ!見たかあの走り!」
B「あぁ!まるで狂気の沙汰のような走りだ!あんな走りが出来るなんて、速多も凛ちゃんもイカれてやがる!」
山岡(なんて走りなんだ、速多と凛さんは
スイスポの限界をギリギリまで引き出している!
鳥肌ものだ!)
信濃(勝ったか、まぁまずまずの走りだな、だが、久し振りに良いものが見れたな)
???(あのスイスポはチェックしておくか)
速多は初レースで見事勝利を納めるのだった




