第5話 違和感
サーキット場にて、合流した信濃が
速多に、コースを走ってくるように伝える
信濃「取りあえず一周してみてくれ」
速多「わかりました!」
速多は愛車に乗りコースを走る
信濃と凛はピットから様子を見る事にする
速多(おかしいなぁ
確かに、加速は比べ物にならないくらい
良くなっている、でも、なんか少し走りにくいな)
凛「本当に伝えなくてよかったの?父さんは、速多が 違和感に気づくと思うの?」
信濃「どうだろうな」
凛「ちょっと!何よそれ!」
(速多は気付くわけないわ!もし違和感に気付けたなら、それはドライバーとしては優秀の部類に入るわ
ましてや車の構造を知らない素人の速多が気付けたら、それはホントに凄いことよ)
信濃「まぁ、スイスポが好きな速多のことだ
気付くだろう」
(恐らく今、速多はチューニングをする前のほうが、気持ち良く走れていたと感じているはず、もし違和感の原因がわかれば大したもんだ)
コースには、スイスポのエキゾーストサウンドとスキール音が響いている
ブオォーン!ブゥワーン!
速多(なんだろう、シフトチェンジする時に
スイスポが、何かを我慢しているみたいだ
なんだろう?この変な感じは?)
コースを一周して速多が戻って来る
その顔は何処か不思議そうにしていた
信濃「どうだった?速くなっていただろ?」
速多「確かに加速は比べ物にならないくらい
速くなりました、、ただ、」
信濃「ただ、なんだ?」
速多「シフトチェンジをする時に
何か変な感じがするんです、レッドゾーンで
シフトチェンジをしているはずなのに、スイスポが『まだまだ回せるよ!』って言っている様な気がするんです」
信濃はニヤリと笑い、凛は驚愕する
凛(嘘でしょ!ホントに気付くなんて!)
信濃「すまない、実はタコメーターを変えていなかったんだ、エンジンは9000回転まで回せるものだが、今のタコメーターでは7000回転でレッドゾーンに達してしまう、速多が感じた違和感はそれだ」
信濃は、スイスポに新しいタコメーターを取り付ける
信濃「これで気持ち良く走れるはずだ、もう一度走ってきてくれ」
速多は、もう一度コースを走る
アクセルを踏み込みレッドゾーンの9000回転まで回すスイスポが先程よりも、甲高い迫力のある音を奏でる
ヴオォォーン!!ヴアァァン!!!
速多(凄い!なんて走りやすいんだ!自分が思った通りにスイスポが応えてくれる!)
信濃「速多のやつ、もう乗りこなしてやがる
気持ちよさそうに走りやがって」
信濃は満足気に笑う
凛「まだまだよ!あのスイスポのポテンシャルなら、もっと速く走れるはず!あんな走りで満足してもらったら困るわ!」
信濃「凛、そんなに速多の事が気に入ったのかぁ?」
凛「そんなじゃないわよ!」
信濃「ハイハイ」
速多が帰ってくる、愛車から降りて子供のように大はしゃぎする
速多「凄いです!信濃さん!スイスポが自分の思った通りに走ってくれるんです!」
信濃「それは良かったな!」
凛「ちょっとアンタ!
何勝手に操っていると勘違いしてるのよ!
今のアンタはただ高性能な車に乗せられている
だけよ!そんなんじゃ、いつまでたってもアイツら
には勝てないわ!
仕方ないから私が色々教えてあげるわ!」
速多「ありがとうございます!凛さん!」
凛はそっぽを向き赤くなった顔を隠す
信濃が凛をニヤニヤと見るのだった
次の日から、速多は凛にドラテクを叩き込まれていく
凛「何回言ったら分かるの!
ラインがめちゃくちゃだわ!アウト・イン・アウトを心がけて!」
速多「わかりました!」
凛(本当に分かっているのかしら?)
凛「ブレーキングポイントが速すぎるし
アクセルポイントが遅すぎるわ!
私の合図に合わせなさい!」
速多「了解です!」
凛(全く、返事だけは立派ね)
凛「きゃぁ!何してるの!!」
速多「ドリフトです!」
凛「アンタ馬鹿なの!?この車はFFよ!
ドリフトなんて出来るわけ無いじゃない!
スピンするか、横に刺さって大変なことになるわ!」
速多「でもアニメや漫画ではしてましたよ?」
凛「アニメと漫画を現実と一緒にするな!」
そんな厳しい指導が1ヶ月続いた
速多は見違える程に速くなっていて、コースレコードまでコンマ1秒まで迫るのだった
そんな折、信濃は来週の週末に走行会を開くことにした
走行会にはあの男達が必ずやって来る、今の速多なら
絶対に勝てる自信があった
信濃(早く速多が勝つ所が見たいな、頼むぞ)




