第39話 麻耶の心配
その頃
悠輝の家のリビングでは、麻耶が落ち着き無く時計を
見ては舌打ちをして、貧乏ゆすりをしていた
そんな麻耶に、悠輝は茶化しながら声を掛ける
悠輝「どうした?そんなに信太が心配か?」
麻耶「そんなじゃねぇよ!ただ…」
悠輝「ただ?」
麻耶「うるせぇ!!ちょっと出てくる!」
麻耶ドカドカと外に出て車に乗り信太の様子を見に行くことに
麻耶(まったく…心配掛けやがって)
逸る気持ちを抑えきれずFDをふかして
信太の所に急いで向かうのだった
一方の信太は、近くの動物病院に駆け込んでいた
直ぐに車から信太の背丈程ある狼を抱えて獣医に
見せる
信太「先生!捨て犬です!見てください!」
獣医は驚愕する
まさか、犬と間違えて狼を連れてくるとは思っても
いなかったからだ
獣医「わ、わかりました…直ぐに処置を行います…」
信太「お願いします!」
狼を獣医に預けた信太は
待合室で悲しそうな顔をして待っている
信太(大丈夫かなぁ?それにしても…捨てるなんて…
酷いことする人もいるんだなぁ…)
その時、病院に心配そうな顔をした麻耶がやって来る
麻耶は信太を見つけると、直ぐに顔を引き締める
麻耶「おい、信太!こんな所で何してるんだ!?」
信太「麻耶さん!
実は峠で捨て犬を見つけたんです!」
麻耶「は?捨て犬?」
信太「はい!まったく!酷いですよね!」
麻耶は考える
峠に犬を捨ててくなんて聞いたことがないし、今まで見たこともないからだ
麻耶(変だな…まさかとは思うが…
コイツもしかして…)
麻耶が考えていると、処置室から獣医と巨大な狼が
出てくる
獣医は少し怯えている様に見えた
それを見た麻耶は頭を抱える
信太は獣医に駆け寄り、心配そうに狼を見つめて
獣医にどうなったのかを尋ねる
麻耶(やっぱり…信太が拾ったのは狼だったか…)
信太「先生!この子は大丈夫ですか!?」
獣医「え、えぇ…傷も浅く幸い衰弱もしていなかったので、直ぐに元気になりますよ…ただ…」
信太「ただ?」
獣医「この子は犬ではありません…メスの狼ですね…
」
信太「えぇ!!?狼」
獣医「はい…恐らく縄張りから追い出されて
空腹な所を、信太さんが保護したのかと思われます
もう野生で生きていくのは厳しいと思います…」
信太「そうなんですね…
この子はどうなるんですか?」
獣医「残念ですが…保険所に連れて行くしか…」
それを聞いた信太は悲痛な面持ちになり、今にも
泣き出しそうな顔をしてしまう
その顔を見た麻耶は胸が締め付けられる思いで
一杯になる
麻耶「そんな顔すんじゃねぇよ…」
信太「でも…」
悠輝「だったらウチで飼えば良いんじゃね?」
信太「お兄さん…」
麻耶「兄貴!どうしてここに!?」
2人が声のする方を向くと悠輝が笑って立っていた
悠輝「いや、お前らが遅いから
様子を見に来たんだ!それより…そいつはウチで面倒見ればいいじゃん!なんなら信太も住むか?
部屋とガレージも空いてるしよぉ!」
悠輝の言葉を聞いた信太は元気になる
麻耶は顔を赤くしている
信太「え!良いんですか!?」
麻耶「おい!兄貴!何勝手なこと言ってんだ!」
悠輝「良いじゃねぇか!
お前も信太を気に入ってるんだろ?
先生!そいつはウチが面倒見るから、一通り
注射やら検査とか頼むぜ!」
獣医「わ、わかりました」
獣医は狼に予防接種や検査を行う為、処置室に戻る
悠輝と麻耶は狼を飼うために
必要なものを買いに行くことに決める
悠輝「信太、俺達は必要なものを買ってくるから
お前はあいつを連れて家まで来い!
その時に自分の家から荷物を持ってくるのを忘れるなよ!部屋は準備しておく!お前が良ければ麻耶と同室で…」
麻耶「黙れ!良いから行くぞ!」
悠輝「へいへい」
信太「わかりました!」
悠輝達は帰っていくのだった
残された信太は狼の検査が終わるのを
楽しみに待っている
しばらくすると検査が終わり獣医がやって来る
獣医「これで終わりです…
くれぐれも怪我しないように気を付けてくださいね」
信太「わかりました!」
信太は狼を車の前まで誘導する
狼は不服そうに従う
信太「ほら!こっちだよ!」
「ガウゥ…」(何で我が人間なんかに…)
信太は狼の名前を考える
直ぐに閃き、狼に名前を付けるが
狼は激しく唸り拒絶する
しかし、信太は喜んでいると勘違いしてしまう
狼は諦めて嘆くのだった
信太「よし!今日から君はポチだ!」
「ガウ!?ガルルゥ!!」(ポチだと!?我は犬ではない!!)
信太「うん!気に入ったみたいだね!」
「グゥゥ…」(とんだ間抜けに捕まってしまった…)
信太とポチは
信太の家に荷物を取りに行ってから
悠輝の家に向かうのだった




