第35話 赤の疾風と白のスピードスター
大会まで1ヶ月を切ったある日
いつもの様に、スモールアニマルズがライドオンで
練習をしていると
赤のFDと白のインプレッサSTIがやって来る
速多は大はしゃぎし、凛がたしなめている
速多「凛さん!見てください!
FDとインプですよ!迫力ありますね!!」
凛「見れば分かるわよ!そんなにはしゃがないの!」
(あら?この流れ…どこか既視感が)
FDから女性、インプから男性が降りてくる
見た目はかなりヤンチャそうな2人
2人は速多に声を掛ける
???「お前が速多だな?この前の走り見たぜ?
お前!最高にイカれてるな!」
???「兄貴?目的を忘れてないか?」
速多は困惑した様子
凛に至っては2人の時間を邪魔されて
不機嫌になっている
速多「え…えっとー…あなたは?」
凛「要件はなんなのよ?」
男女は自己紹介をする
悠輝「俺は友川悠輝!周りからは
白のスピードスターと言われている!
こっちの目つきのわりぃ女は、妹の麻耶!
赤の疾風って呼ばれてる!
今日は頼みてぇ事があってな!」
麻耶「おい?誰が目つきが悪いって?兄貴の方が
犯罪者みたいな目つきをしてるくせに」
悠輝「あぁ?誰が犯罪者だって?やんのか?」
麻耶「あぁ!?上等だよ!」
2人は一触即発の雰囲気になる
速多は慌てふためき、凛は天を仰ぎ嘆いている
速多「ちょ、ちょっと!やめてください!?」
凛「あぁ…またトラブルメーカーがやってきた」
その時コースを走り終わった山岡が
ボンバーとヘッドを連れてやって来る
悠輝と麻耶は山岡を見て姿勢を正して挨拶をする
悠輝「お疲れさまです!!山岡さん!!」
麻耶「お邪魔してます!!」
山岡は一瞬苦い顔をするが、笑顔で挨拶を返す
山岡「あ…あぁ2人ともお疲れさま…」
速多と凛は頭にハテナが浮かび
山岡に知り合いなのかと聞く
山岡が言葉を濁していると、横から物凄い勢いで
2人が答える
悠輝「俺達は山岡さんの舎弟でした!!」
麻耶「はい!あの時の山岡様のカッコよさと
いったらもう…」
速多「えぇ!!しゃ、舎弟!!?」
凛「何となく気付いていたけど…まさかアナタ…」
速多と凛は驚愕し山岡に本当なのかと尋ねる
山岡は気不味そうに答える
山岡「あー…いや!大したことないよ!
2人が大袈裟なだけで!昔職場が一緒でさ!
あはは…」
そんな山岡に、悠輝と麻耶は興奮しながら否定する
悠輝「何言ってるんですか!?俺達同じ族のチーム
だったじゃないですか!」
麻耶「そうですよ!」
速多「えぇ!!ぞ、族!!?」
凛「やっぱり…アナタ…」
その後も、悠輝と麻耶は山岡の事を話そうと
目を輝かせていたが
山岡は、ちょっと2人に話があるから
と言い物陰に2人を連れて行く
他に人がいないのを見て山岡は2人に静かに告げる
山岡「いいかオメェら?昔の話は絶対に口にするな
速多や凛さん…それに信濃さんには俺が
元族だってことは内緒にしてある…
頼むぞ」
悠輝「何で内緒にするんですか?」
麻耶「何かまずいことでも?」
山岡は少し照れながら答える
山岡「みんなが怖がるからに決まってるだろ!!」
そんな山岡を茶化す悠輝だが、山岡の地雷を
踏み抜いてしまう
悠輝「そんな事無いですよー!速多なんか鈍感そうで馬鹿そうですし!あはは!」
その言葉を聞いた瞬間
山岡の表情が鬼の様に険しくなる
スモールアニマルズのメンバーに対して速多を
馬鹿にすることは絶対にしてはいけない
山岡「お前今なんて言った?あぁ?
もう一回言ってみろや?」
悠輝「や、山岡さん…?」
2人は山岡の威圧感に恐怖する
丁度その時、麗華がやって来て山岡に抱きつく
山岡の怒気が収まっていき穏やかになる
悠輝と麻耶は安堵する
麗華「山岡様!何してるんですか?」
山岡「麗華!なんでもないよ!」
麗華はふと視線を上げると麻耶と目が合う
その瞬間!
麗華のスイッチが入り目のハイライトが消える
山岡は、しまった!と思ったが時すでに遅し
麗華に問いつめられ子犬のように震えだす
マリー達は巻き込まれないようにピットに避難する
麗華「ヤマオカ様?この女は誰ですの??」
山岡「ヒィッ!!」
「こんな物陰で…浮気ですか?ワタクシ浮気は
許しませんと言いましたわよね?
ヤマオカ様はそんなにワタクシを
怒らせたいのですか?悲しませたいのですか?
困らせたいのですか?失望させたいのですか?
何がしたいのか教えてくださいませ?
なんで何も言わないのですか?本当に浮気ですか?
ワタクシしか見てないと言う言葉は
嘘だったんですか?教えてくださいませ?
あぁ!わかりましたわ!
この女が言い寄ってきたんですね?
それならそうと早く申してくださいませ!
お可哀想なヤマオカ様…
この女がいけないのですね…
安心してください!すぐ終わらせますわ!
ワタクシのヤマオカ様をたぶらかすなんて
この女豹が…
許さない許さない許さない許さない!!」
山岡「れ、麗華!ストップストッープ!!」
「クワァン!!」(まずいわ!逃げるわよ!!)
「ウギギ!」(退散だ!!)
「キキ!!」(逃げろー!)
麗華の豹変ぶりに
山岡の怒りとはまた違った恐怖に震える悠輝と麻耶
悠輝(こ、この女やべぇ!)
麻耶(イカれてる!!)
山岡は麗華を抱き締めてキスをする
その瞬間、麗華は先程とは打って変わって
目に光が戻りデレデレになる
麗華「や、山岡様…こんな所で…
恥ずかしいですわ!でも山岡様がお望みなら…」
山岡「あはは…」
山岡は安堵し2人の事を麗華に紹介する
山岡「れ、麗華!この2人は俺がまだ
ヤンチャしていた時のダチなんだ!」
麗華「まぁ!そうだったんですね!ワタクシったら
早とちりしてしまいましたわ!でも…」
麗華は麻耶に近付き耳元で低い声で脅す
麗華「もし、山岡様を誑かしたら…
わかってますわよね?」
麻耶は首が取れるんじゃないか、というくらいに
縦に振る
麗華は笑顔で麻耶の手を握る
麗華「なら安心ですわ!
これからよろしくお願い致しますね!」
悠輝と麻耶は心の中で誓う
悠輝(2度と、速多の事を
冗談でも馬鹿にするのは辞めよ…)
麻耶(あの山岡さんを圧倒するなんて…絶対に逆らわない様にしないと)
麗華は、山岡の腕に自分の腕を絡めて
ピットに戻っていく
残された悠輝と麻耶はしばらくその場から動けなかった




