幸せを繋ぐルームメイト
なろうラジオ大賞6への参加作品です。
私は二十四歳の会社員です。
突然ですが、ある日の帰り道、「たー君」と運命的な出会いを果たしました。
私のアパートに連れて帰る形で同居がスタート。
家に帰ったらたー君がいる。それだけで幸せで、仕事も頑張れます。
「え、っと。その同棲している『たー君』は働いてないの?」
会社の飲み会でポロッともらした話に主任が食いついてきました。シゴデキで姉御肌の主任は既に自立したお子さんがいらっしゃる我が社のボス的存在です。
「はい。同棲というか、私が一方的に好きなだけなので、ルームメイトでしょうかねぇ」
主任の顔がお叱り面に切り替わりましたが、なぜに?
「歳は?」
「たぶん三十を超えたくらいかと」
「さんじゅ!? 投資とか不動産とかの収入が?」
「ないでしょうねぇ」
「じゃあ、家賃とか生活費はすべてあなた持ちなの?」
「そうですね。家に連れてきた以上、責任もって私が」
「まさかお小遣いまであげてるの?」
「それはないですねぇ。でも食事と色々なおもちゃは奮発しています!」
「お、おもちゃ?」
「はい! おもちゃを使わないと来てくれないので!!」
主任が赤い顔で「え」とか「あ」とか言いながら「ヒモとの同棲」「堂々とおもちゃって」「双方合意なら大人同士だし」とぶつぶつ言って黙りました。
変な主任ですね。飲み過ぎたのでしょうか。
その冬、滑って転んで足を捻挫した私は仕事を数日休み、主任がお見舞いに来てくれました。
ケンケンして玄関を開けると、主任は私の後方にいた「たー君」を見て、私を見て、もう一回たー君を見て絶叫しました。
「猫なら猫って言ってよっ!!」
主任の後ろでは見慣れない男性が肩を震わせています。
どうやら主任は、たー君を三十過ぎの無職で、付き合っていないのに身体の関係だけはあるロクでなしのヒモ男だと、ずーっと勘違いしていたようです。暴れたり因縁をつけられると困るので、念のためにガタイの良い息子を連れてきたとのこと。
なんで主任はそんな勘違いをしたのでしょうかね? 不思議です。
お見舞いをありがたく受け取り、後日改めてお礼をしたら、お礼のお返しがなぜか息子さんから来て、更にお返しをしてお返しをされて、?マークを飛ばしながらも連絡を頻繁に取るようになって、会うようになって。
広い部屋に引っ越すと、ヒモでもただのルームメイトでもなく、旦那様が増えました。
いやぁ、人の縁ってどこで繋がるか分からないものですねぇ。たー君が家に来てからずっと幸せです。
読んでくださり、ありがとうございました。1000文字、いかがでしたでしょうか。主人公のほのぼのさが伝わると嬉しいです。
【おまけ】
「え、メスなの!?」
「はい、主任。たー君は女の子ですよ?」
「その呼び方は家ではやめてってば。……なんで『君』なのよ」
「たー君は元保護猫で警戒心が強くて、今でも私からは触らせてくれませんが当時はもっとツンツンしていたので『僕っ娘』かなって」
「(なんの判断基準……)……たー、は?」
「たまき君のたーです」
「(意外にまともな名前なのね……)性別は早く教えて欲しかったわ」
「すみませんおかーさん、男の子です」
「は? 今メスって」
「やだ、おかーさんってば天然さんですね。お腹の子のことですよ!」
「元祖天然が何を言うの……って、は? 今なんて?」
「もしかしてそうかなぁ~と思って病院に行ったら、五ヶ月ですって!!」
「気付くの遅っ!! そして入籍から計算が合わない!! あんのバカ息子が!!」
この二人に限っては嫁姑バトルも楽しそうです。
主任の息子はふわふわ可愛い生き物が大好き。ダメ男に尽くす系の母の部下かと思っていたら(範疇外)、天然オーラ全開(自覚なし)の猫つきバッチ好みの女性というギャップに一瞬で恋に落ち、全力で囲い込みました。シゴデキの息子はやはりシゴデキ。
たまき君(推定4歳のメス)は、おもちゃを使うと、「触らせてあげないけど私から触ってあげるの感謝しなさいよね!」と顔で言いながら、軽くねこぱんちをしてくる可愛い子です。好きなおもちゃは釣竿の先にモフモフがついているヤツ。
それでは、また別の作品でお会いできますことを願って。
ありがとうございました。
m(_ _)m