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序章  作者: 一樹
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第三話

俺はいつものように生徒会室で金庫を頑張って開ける振りをしていた。




「それでー、先生怒っちゃって職員室帰っちゃったんですよー」




生徒会室ではみかんが授業中に起こった珍事件の話をしており、2人がそれを聞いていた。


何やら話を聞いていると、授業中にクラスの男子たちが動物園の猛獣の如く騒ぎ出すらしい。それに怒った飼育員もとい英語教師が職員室へと逃げ込んだという。


俺はその会話の輪の中には入っておらず、地べたで黙々と作業をしていた。




ももが書類の束を重ね机の上でトントンして綺麗に置く。




「へー、そんな荒れてるんだねー。私が先生ならきっと泣き出しちゃうよー」




それは教師としてどうだろう。


だが、そんな教師も悪くない。




「それで?その生徒たちは独房行きかしら?」




敦賀りんはたまにこういう怖いことを言う。




「独房って!りん先輩らしいなあ。その男子たちは結局、生徒指導の先生に怒られてましたよ。まったくいつから日本の男子はこんな乳臭くなったんだか。ね、先輩」




一年後輩とは思えないほど達観した意見だな。


ここは適当に相槌を返しておく事にする。




「ま、まあそうだな」




「先輩のクラスはなんか面白いことないんですか?」




みかんは優しいからこうして俺に話題を振ってくれる事が多い。俺も別に人見知りで話しかけられないというわけでもないのだがあまり談笑にふけっていても逆に好意値を下げかねない。何より口よりも手を動かせというのが親父の教えなのだ。




まあ今は絶賛その教えに背いて開錠放棄中なわけだが。




「んーそうだなあ。俺のクラスはたいして面白い話はないよ。あ、でも隣のクラスの噂なら色々聞いてるかな」




「隣のクラスってことはもものクラスよね?どんな噂なの?」




りん先輩も食いついてくる。




「はい、色々あるんですけど一番衝撃的だったのは『パジャマ登校事件』ですね。ある女子生徒がパジャマのまま学校に来て問題になったとかって。もも、同じクラスなら何か知らないか?」




俺はももに尋ねた。


しかし、ももは下を俯いたまま喋らない。




「もも先輩?どうしたんですか?」




「どうしたの、もも。具合でも悪いの?」




「はえ!?あ、ああ、いや平気平気。まあなんていうのかな、そのパジャマ事件ってのはきっと本人も恥ずかしいだろうからさ、あんまり噂とかしない方がいいんじゃないかな。かわいそうじゃん、その人がさ。」




みかんとりんはすぐに察した。


パジャマ事件の犯人が山岡ももであるということに。


ちなみに俺は最初からもものことだということをわかった上でこの話題を出している。


ほんの出来心で少しからかってみたくなったのだがおかげさまで可愛らしい顔が見れたので大収穫だ。




「え?まさかあの噂ってももなのか?」




ペテンを利かせてももに問う。




「ほえ!なんでわかったの!?」




「いやあんな反応されたらさすがにわかるって。まさかパジャマ登校事件の犯人が生徒会の会長様だったとは。てかそれって校則違反じゃないのか?」




「う。だって仕方ないじゃん、気付かなかったんだから。あれ以来ちゃんと朝出る前にお母さんに制服チェックしてもらってるもん」




なんだか悲しい情景が頭の中に浮かび上がった。


生徒会会長を務める自慢の娘がパジャマで学校へ行った事実を知った時はさぞ物思いにふけった事だろう。


気苦労お察ししますよ、お母様。




「しっかりしてくださいよ、もも先輩。子供じゃないんですから自分で確認しないと。」




「みかんの言う通りよ。それくらいひとりで出来なくて将来どうするつもりなのかしら。」




「ふえー、2人ともお母さんより厳しいよー」




みかんとりんは楽しそうに笑った。


俺も楽しげに笑ういつもの3人を見て作業に戻る。金庫の解錠とはまるで関係のない時間稼ぎの作業を。






時間の経過を忘れるほど黙々と作業を続けていると、気付けばあたりは少し暗くなり、完全下校時刻が近づいていた。




「じゃあそろそろ終わりにしましょうか。加護野くん、鍵を閉めるから鍵を開けるのをやめて頂戴」




「なにをうまいこと言ってるんですか、りん先輩。」




「あら、本当。気付かなかったわ」




わざとらしく驚いた表情で口元に手を当てている。




「あの、申し訳ないんですけどいま作業がいいところなので先に帰ってていいですよ。鍵なら俺が閉めておきますから」




「そう。じゃあお願いするわね。」




りん先輩は鞄を手に取り、帰宅の準備をする。




「あ、もも先輩。今日駅前のケーキ屋寄って行きません?なんか新作のモンブランが出てるらしいんですよ」




「も、ももも、モンブラン!?すっごく行きたいよ!!……でも」




「りん先輩も行きましょうよ!」




「私、甘いものはちょっと控えてて…」




みかんが不満そうな顔をする。




「えー。巨峰タルトも新作で出てるんだけどなあ」




「行きましょう、今すぐに」




りん先輩が今日一番のキメ顔を見せた。




「さすが巨峰好きのりん先輩!じゃもも先輩も…」






「えと、今日は先に帰ってて。私はちょっと…はるくんと話があるから」




ももは少し照れ臭そうに2人に言った。




「話?なんの話ですか?それなら私達も残って……」




「いえ、私達は帰りましょう。邪魔をしたらいけないわ。じゃあまた明日ね」




「ええ、気になるじゃないですか、一体なんの…」




「いいの。それよりみかん、あなたはレモンケーキが食べたくて私たちを誘ったんでしょう?いいの?急がなくて。あれ人気だからすぐに売り切れてしまうけれど…」




「ああ!やば、もう行かないと間に合わないかも!じゃ、じゃあお二人ともまた明日ですー!」




りんが大人の対応をしてくれたお陰で生徒会室には俺ともも、2人だけとなった。


話というのは一体なんだろうか。

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