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序章  作者: 一樹
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第二話

時はゴールデンウィーク明け、彼女たちとの関係性もだいぶ深まってきていた頃の事。




「ねえ、まだ開かないの?」




生徒会室の床に直置きされた金庫を眺めていると、敦賀りんが話しかけてきた。


必然と前屈みになるから当然、胸の谷間が俺の真横からチラリと覗く。




「はい、けっこう複雑な造りですね、これは」




谷間を一瞥したあと、冷静にそう答える。


大人の色香に自我を持っていかれそうだ。




「鍵師の息子って言うから相当な実力者だと思ってたのに、大したことないんですね」




生意気な後輩、有谷みかんがそう言った。


机に突っ伏したまま顔だけをこちらに向けて気怠そうな表情で。


その体勢のせいで強調されたヒップラインが再び俺の理性を脅かす。




「金庫開けるのもそんな簡単じゃないんだよ。第一誰が送ってきたかもわからない代物だ、もし危険なものが入っていたとしたら開け方を少しでも間違えただけでみんなを傷つけることになる。多少時間を使ってでも慎重に事を運ぼうとするのは当然だよ」




「う…ごめん…」




みかんは申し訳なさそうに下を向く。


曇った表情も可愛いなんてずるいだろ。




「あ、えと、みかんちゃんも別に意地悪で言ったんじゃないんだとおもうんだよ!みんな、はるくんが頑張ってるの知ってるし!」




慌てて山岡ももが弁明する。


焦っている表情が愛くるしい。


あと机の下からのぞく太ももがなんといっても美しい。




「わかってるよ。とにかくもう少し頑張ってみるから何か手伝うことがあったら声をかけて」




俺は優しくそう言って作業に取り掛かる。


りん先輩も机に戻り、みかんも体を起こして伸びをした。


いつものように生徒会が動き出す。




何気ない日常ー。




夢にまで見た青春がここにはあったーー。












しかしここで一つ、真実を話しておきたい。


俺は先程の会話の中で金庫を開けるのに苦戦をしていると言ったが、これは全くの出任せである。確かに彼女たちの誘惑のせいで多少実力は落ちているが、それで揺らぐほどの実力でもない。


おおよその検討はついているし、危険物でないことのチェックも既に済ませている。


大体ダイヤル式の金庫など過去に何度も解錠しているからお手の物なのだ。




ではなぜそんな出任せを言ったのか、想像力を掻き立てれば自ずと答えは出てくるだろう。




そう、俺はまだこの生徒会にいたいのだ。


せっかく手に入れたこのチャンス、モノにするまでは決してこのポジションを空け渡す訳にはいかない。


おそらく俺がこの金庫を開けるのに成功すれば中身がなんであれ事態は解決しきっと俺はお役御免になるだろう。


廊下ですれ違ったときに挨拶くらいはするかもしれないが、所詮はその程度の関係だ。それで満足できてしまうほど俺の理想は低くない。




俺は今よりもさらに彼女たちと仲を深め、やがて俺の事しか考えられなくなるほどに心酔し、最終的には3人がこの俺を取り合うという構図が見たいのだ。


そうして苦渋の選択を迫られた俺は悩み抜いた末その中から一人を選ぶ。


2人は涙目ながらに俺たちを祝福してくれて、ハッピーエンド。なんと素晴らしい世界。




俺はこの「計画」を現実のものとするためにこの金庫を利用しようと考えた。だから当然、すぐに開きそうであっても苦戦していると嘘をつくわけだ。鍵が開かない限り、俺はこの生徒会に居座ることができる。




しかし、この「計画」には一つ問題がある。


そう、それは俺が「使えない人間」だと思われてしまうことだ。あまりに長くに渡って金庫を開けられずにいればきっと彼女たちは俺の実力を疑うだろう。そうなれば好感度を稼ぐことができず、俺の理想の未来へは到達しない。


最悪の場合、学校側が俺を見限ってどこか他の業者へ頼んでしまうかもしれない。




だから、この金庫はいずれどこかのタイミングで開ける必要がある。そのタイミングはなるべく遅い方がよくて、かつ、彼女たちや学校が許容してくれる範囲、それを俺は試算した。




4ヶ月。


今は5月だから8月中には事を決める。


これがギリギリのラインだと思う。




今でさえ、「三色兼美の生徒会」にこの俺がいることをよく思っていない連中もいるのだ。


偶然聞いた話だが、連中はそんな俺のことをこう呼んでいるらしい。




「生徒会のクズかご」。




どういうことかというと、まずはこの俺の自己紹介をしなければならない。




遅ればせながら、俺の名前は「加護野かごの 陽喜はるき」という。中肉中背の冴えない男子、ということにしておこう。たぶん実際もそんなもんだ。




彼らは俺の名前をもじって生徒会におけるゴミだと揶揄し「生徒会のクズかご」などと呼んでいるわけだ。




存外にこういう噂は人の印象を決める上で重要になってくる。こんな風に呼ばれていることが彼女たちにバレれば、彼女たちの好感度を稼ぐのが容易ではなくなる。ただでさえ容易ではないというのに。




とにかく俺には絶対に開けなければならないものがある。


目下に広がる未だ踏破した者のいない堅牢な3つの扉。


それを4ヶ月という短い期間で攻略し、必ずその奥の景色をこの目で見てやるのだ。

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