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001 アメシスト

この時間はとても気持ちがいい。私は決まって15時を指す頃にこのお気に入りの木の上で休憩を取るようにしている。この場所は日当たりも風通しも良く眠気を誘われる。まさに私にピッタリの場所だ。脳内にはいつものように昔おじいさんが歌ってくれていた子守唄が流れている。

ね〜んね〜んころりよ〜

曲名も作曲者も知らないが何故かこの歌が毎度懐かしく、よくおねだりしていたものだ。

そんな気分のいい日常は終わりがやってくる。


「おい!!何サボってんだ〜!?もう仕事は終わっているのかね!!」


このいかにも偉そうにふんぞり返っていて、髭も長く、お腹は太く、まるで悪役のお決まりのような姿の男性はろうおじさんだ。こんな見た目で喋り方がきついためよく嫌われているが、私は村民思いでとてもいい人なのを知っている。


「荷物の運び出しと権利書の確認だよね〜?もう終わらせておいたよ〜。今は休憩時間だからいつも邪魔しないでって言ってるじゃ〜ん!」


私はいつものように悪態づいたような喋り方でろうおじさんに返した。


「お前はほんとにそこが好きだな!まあ終わっているなら良いのだ!!だがまだまだ手伝ってほしいことがいっぱいあるからな!!そこから降りてきてもらおうか」


やれやれ。とわざとらしい態度を取りながら私は木の上から飛び降りた。いつもこの人は私の休憩を邪魔する。だが、不思議と嫌な気持ちにはならない。


「しかたないな〜。私の力を貸してやろうではないか!せっかくの休憩時間を奪ったんだ。それなりの対価はでるだろうね〜?」


「お前はまったくそういうやつだよな!まあいい。広場の看板裏手にあるスイの家の手伝いをしてきてくれ。報酬はもちろんあるぞ!お前が頑張ればの話だがな。」


お、今回はちゃんと報酬があるのか。なら頑張る価値はあるかもしれないな。

私はいつもどおり羽を広げて空を飛ぼうとした。しかしそこでろうおじさんに止められてしまった。


「ああ、待て待て!この時間は飛行禁止時間だといつも言っているだろう!なぜわからない!!まったくいつまでお前はそんな何だ...!!」


はいはい、もーしわけなかったですよ〜!!

そういえばこの時間帯は飛行禁止時間であった。何でも配達の人が空を飛んで荷物を届けに来る時間のため安全を考慮して考えて、だそうだ。


「あと、そうやすやすと羽を広げるな!お前は亜種なんだからそれを見せると嫌われやすいんだ。この村だから許されているが、他ではちゃんと隠せよ?わかったな!」


うるさいなぁとふてぶてしい顔を見せながら静かに私は頷いた。

亜種、というのはハーフと言うことだ。この世界には3種の種族が主として存在している。人族、獣族そして魔族だ。この3種の中のハーフのことを亜種と呼ばれている。

人族と獣族では交流がとても盛んに行われている。獣族は人族に労働力や金属、食料などの原産品を輸出している。一方人族は加工品などを輸出している。これで獣族と人族の関係は成り立っているわけだ。

そんな中、獣族と魔族も交流が盛んである。獣族は魔族に兵士や労働力を魔族は獣族に魔法や魔術の加工品を輸出している。

しかし、魔族と人族の仲は悪い。一部で交流を取っているところもあるが基本的に戦争を起こしてばかりである。そのため必需的に獣族も人族側と魔族側で分かれる。そのため、亜種には獣族と人族、獣族と魔族の亜種が多いのである。人族と魔族の亜種などほとんど見ない。

私は獣族と魔族の亜種だ。正確に言えば猫族と吸血鬼の亜種である。そのため、頭には猫耳が生え、目は瞳孔が細長く、口には牙が生え、背中には羽が生えている。しかし何故か尻尾は生えていない。亜種はまだまだ謎が多いためそこら辺の情報はないらしい。でも大体キメラのような存在が生まれることが多いらしい。

そういえば私の名前は誰が付けてくれたのだろうか。そんなことをふと考えた。

物心付いたときから私には「神瀬シス」という名前があった。その時の育ての親が付けてくれたと思うべきなのであろうがそれがそうでもなかった。私が物心付いたときには両親はおらず、一人で生きてきていたのだ。今考えれば私も不思議である。気づいたときにはこの村にいて、一人で暮らしていたのだ。交流は近所のおじいさんとろうおじさんくらいであった。だから私はいま自分が何歳なのかもしらない。

そんなことを考えているうちにスイとやらの家に着いた。何を手伝えばいいのかわからないため少し不安もあったが、それより交流が増える好奇心のほうが強くあったため、私はすぐにドアをノックした。コンコン。木の乾いたような音が響き渡る。少し強めに叩きすぎたであろうか。木がきしむ音も少し混じって聞こえた。


「はい、どちら様ですか?」


ドアの向こうから声が聞こえた。少年だろうか?声変わりしかけのような少し高い声。しかし何故か懐かしさも感じた。


「ろうおじさんから言われて手伝いに来ました。神瀬シスと申します。」


私はいつもより少し高い声で応じた。緊張して少し高くなってしまったのだ。


「ああ、先程話は聞きました。手伝いに来てくださりありがとうございます。今手が塞がっているのでどうぞそのまま上がってきてください。」


私は言われるがままに少し古くなったドアを開けた。ギィィ。古くなった木が軋む音があたりに響いた。しかし、そんなドアとは裏腹に中はきれいだった。いや余りにも綺麗すぎる。もはや何もおいていないではないか。


「はじめまして。この村に引っ越してきたスイと申します。ああ、えっと名字はありません。気軽に呼んで下さい。」


ドアから頭だけひょこりと覗いてきたその少年は頭から角が生え、髪は白に黄緑のインナーが入っており、長く、結んでポニーテールにしていた。目は翡翠のように緑色に澄んでいて、どちらかというと女のような顔つきの少年だった。


「こちらこそよろしく。」


少し淡白になってしまったが私も挨拶を交わした。


「で、私は何を手伝えばいいかな?」


「引っ越したてなので荷物の管理と整理、あと部屋の掃除を手伝っていただけると助かります。」


少し申し訳なさそうにスイは答えた。


「りょ〜かい」


私は早速荷物の整理に手を付ける。古びた本に雑貨、用途のわからない木の枝、そんな何に使うかわからないものを整理する中私は奇妙に光る水晶玉を見つけた。


「この水晶はどこに置けばいいかな?」


そう聞くために水晶を手にとって見せようのするといきなり水晶の輝きが増した。


「え?な、なにこれ!?」


私は何かしてしまったのではないかとパニックになった。しかしスイは冷静に答えてくれた。


「ああ、その水晶は人の魔術適性を見るものにあります。えっと...シスさんは紫色なのでアメシストの適性があるみたいですね。」


アメシスト...か。よく自分の髪の毛が紫色のため、アメシストのようとは言われてきたが、まさか魔法適性もアメシストだとは...


「貸してください」


そう言ってスイは水晶を私の手からそっと手に取った。その瞬間、水晶は美しい黄緑色へと変化した。


「私は翡翠型なんです。翡翠型は珍しいらしくてよく驚かれますけどね。これは汎用性が高い型で攻撃や防御、生活魔法に適性があります。」


何だそのチートのような型は...!!生活魔法なんて私が一番欲しい魔法ではないか!!これがあれば速攻で仕事を終わらせてサボることだって可能なのに!!!


「シスさんのアメシスト型はそこまで情報がなくて...これも珍しい型なんですけど扱いが難しいらしくハズレとよく言われていますね。」


ハズレ...か。そうかそうか。私にはどうやら運がないらしい。神様!私は何かあなたにしましたか!

わかりやすく悲しい顔をしていたらスイが励ましてくれた。


「で、でも使いこなせたら凄いらしいですから!錬金術が使えたり、空を飛べたり!あとは触手が出せるようになったり!」


...スイさんや。最後のは余計だったかと思いますよ....

触手だよ触手!何に使うんだよ!!なに?女の子と触手エッチプレイでもしてろっていうの!?風俗でも始めろっていうの!?!?

そんなことを考えると少し馬鹿馬鹿しくなってきた。

...まあそんなこと考えても仕方がないか。私は特にやりたいこともないんだし。

そんなこんなで少し時間はかかったが引っ越しの片付けが終わった。

「今日はありがとうございました!本当に助かりました!これ少ないかもしれないですがお礼です!」

私は少し膨らんだ封筒を貰った。なんだろう?お金かな...?最近欲しいものいっぱいあるしありがたいではないか!!


「いえいえ、お役に立てたのなら良かったです。また何か困ったことがあったら気軽に相談してください。」


そう言って私はスイの家を去った。




私は家に帰り封筒を開けてみた。中身がなかなか出てこなかったので逆さにして振りながら出そうとしてみた。ゴロッ。とても鈍い音があたりに響きわたった。そこには紫色の宝石のようなものがたくさん出てきていた。

なんだこれ....?これが報酬?売れば高いのかな。

お金を期待していたのに流石にこれはテンションが下がる。

まあいい、今日はぐっすりと眠ろう。

そんなこんなで私は深い眠りへとついた。

そのときは夢にも思っていなかった。まさかこの紫の宝石が、私の日常を壊すだなんて。

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