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『あの人は、俺にとって神様だったんだよ』
珊瑚はそう言った。
神様の依代とされる彼の人達を本気で信じている彼は、俺とは違った。
否。この天文台で、俺だけが違った。
「瑠璃を庇い立てる理由?」
「あぁ。義理とか約束とか、だけじゃないだろ?」
「どうしてそう思った」
「幼馴染の勘」
少し辛くて絵の具のようにドス黒い天文台のカレーを食べながら、珊瑚が言う。
「さぁな。だが、多分、俺とあの人が似ていたからだ」
「似てる?」
「あぁ。俺とあの人だけなんだよ」
「だけって、何が」
「言わない。だって、言ったらお前怒るだろ」
「怒らないから言ってみろって」
カレーが半分残った皿をトレイに置いて立ち上がる。
「ちゃんと、いつか教えてやるから待ってろ」
「あの女に届けるのか」
珊瑚にそう聞かれた。
俺は何も言わずに、その場から立ち去った。