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それからは、何だか怒涛のイベント目白押しな毎日。
『転送』でスッ飛んで来たアリシエラさんがツァイシャ女王様の勅使として、
ニルシェ王都のお貴族さまたちと丁々発止したり、
ナクレイスさんがご主人様の貴族様ときちんと語り合って円満退職したり、
アリシエラさんが俺をエルサニア王都に『転送』拉致しようとしたり。
まあ、何やかんやありましたが結果オーライってことで。
そして今日は、ナクレイスさん出立の日。
アリシエラさんがタンデム『転送』で、
直接エルサニア王都へと連れて行ってくれるのです。
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「お世話になりました、ウェイトさん、リルシェさん」
「この御恩はいつの日か必ず……」
いえいえ、お気になさらず。
ナクレイスさんこそ、向こうでも素敵なメイドさん活動、頑張ってください。
ニエルさんにもよろしくです。
「私の『ヘルダイバーS』の『転送』能力には、まだ若干の余裕がありますよっ」
「それにウェイトさんを連れて行かないと、ツァイシャ女王様がご機嫌斜めモードになっちゃうかも」
えーと、アリシエラさんの方からよろしくお伝えください。
何せ俺はエルサニアから逃げ出した脱走召喚者ですし、
ほとぼりが氷点下くらいに冷めるまでは、
こっちでおとなしく冒険者活動しますから。
「むう、そこまで頑なにノルシェさんとのふたりっきりの旅をご所望、と」
「ノルシェさんを独占されちゃったチームモノカ一同の逆襲が、今から楽しみですねっ」
「それでは、ごきげんようっ」
「おふたりとも、お元気で」
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……行っちゃいましたね。
リルシェさんは良かったんですか。
この機会に里帰りちっくにエルサニアへ。
「……ふふ、そうは問屋が卸し金、ですよっ」
「何せ、ちょっとでも目を離すとイベントに巻き込まれちゃう困ったちゃんな相棒がおりますから」
「冒険者リルシェと相棒ウェイトさんのふたり旅は、まだまだこれからだ! なのですっ」
はいはい、これからもよろしくお願いしますね。
……さて、どうしましょ。
引き続きニルシェ王都で冒険者活動ですか。
俺としては、例の件で王都のお貴族さまたちとアレしちゃったんで、
正直、居心地がアレなのですが。
「おや、ニルシェ王都でいろいろな種族の皆さんと触れ合うという、ウェイトさんのアレな計画の方は?」
あー、アレですか。
確かに、まだまだニルシェ王都ならではの生活を満喫出来たとは言い難いです。
それにその前振りって、触れ合い活動に全力で邁進してヨシッ、
っていうお墨付きをリルシェさんからいただけたってことですよね。
「ケースバイケースっ、ですよっ」
「ウェイトさんがソッチ方面に邁進し過ぎちゃってセクハラ現行犯逮捕されたら、流石に相棒として看過できませんっ」
「チームモノカ魔族領遠征部隊としての矜持、夢々お忘れなきように、ですっ」
はい、つまりはいつも通りにってことで。