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最近は良い感じに旅が出来ていたので油断してましたよ。
筋金入りの人見知り野郎が、
こんな大都市のメチャ混みな雑踏に飛び込むなんて、
分不相応どころじゃない無謀な所業……
案の定、盛大に人酔いしてグロッキーな俺は、
リルシェさんから要介護ちっくに支えられながら、
どうにかこうにか表通りの人混みを抜け出せて、
通りから離れた場所にある小さな公園のベンチで、
ぐったりへろへろ……
「大丈夫ですか、ウェイトさん」
「何かお飲み物とか、いかがです?」
「こちらの"魔素ビタンG・マイルド"は、頑張っている冒険者向けの滋養強壮飲料としてクロ先生が新開発した高機能エナジードリンク」
「あんなことがあったばかりですが、騙されたと思って、まずは一本」
……いえ、結構です。
クロ先生の秘薬の特効を疑ってはおりませんが、
今は効能と副作用を天秤に掛けてまでギャンブルしたくないです。
すみませんが、俺はしばらく動けそうもないですし、
回復するまでこの場所でおとなしくしていますので、
リルシェさんは、出来れば宿探しの方をお願いします。
本当にいつも頼りっぱなしで申し訳ないのですが……
「……承りました」
「ウェイトさんに最高の安全と心からの安らぎを提供してくれるお宿、必ずや見つけ出してきますっ」
「それではっ、しばしお待ちを!」
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……情けないです。
いつでもどこでもいつまでも、
リルシェさんに迷惑かけまくりですよ、この駄目召喚者。
せっかく毎日鍛錬に付き合ってもらっているのに、
そもそも俺自身がいつまでたってもこのザマじゃ、
相棒どころか足手まといのままだっての。
やっぱり、いくら一緒にいると楽しいからって、
いつまでも今のままじゃいかんよな。
俺とリルシェさん、それぞれの本来在るべき場所、
本当に必要とされている居場所での暮らしこそが、
お互いのためであり、世のため人のため、だよね……
あー、やっぱりわがまま言わないで、
"魔素ビタンG・マイルド"とやらを飲んどくべきだったよ。
ひとりになった途端、弱気の虫が湧きまくり。
身体もメンタルもどん底気分真っ逆さま。
これぞまさに、お先まっくら。
って、あれ?
マジで目の前まっくら……




