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この状況、何だか思っていたのとはずいぶん違うんですけど。
到着したコレイカダンジョン周辺は、
何と言いますか、賑やか過ぎる観光地?
「魔族領大結界が張られた際に、何故か取り込まれたのがこのコレイカダンジョン」
「古来より冒険者の修練や騎士団の訓練の場としても利用されており、その人気っぷりから商人たちの稼ぎ場ともなっていて、いつしかご覧のような賑やかな場所に」
「ですが、今もなおニルシェ王国の認可が降りないため、町では無く、あくまでダンジョン周辺に設営された臨時の商業施設扱い」
「それでも冒険者も商人も細かいことは気にせずにエンジョイダンジョンライフ、つまりご覧のとおりの大賑わいですねっ」
ふむ、一応各ギルドの臨時出張所はあるようですね。
でも活気があるのは良いことですが、治安の方は大丈夫なんですかね、これ。
いわゆるヒャッハー率が凄いことになってますが。
「何となくですが、今のエルサニア王国では失われてしまった昔ながらの冒険者活動、といった風情ですよね」
「えーと、エルサニアの治安に関しては、チームモノカも深く関与しちゃっておりますが……」
はい、俺たちもみんなに負けずにエンジョイダンジョンライフしましょ。
まずは拠点となる宿探し、でしたね。
って、ちゃんとした宿なんてあるのかな。
こんなワヤな場所に……
「大丈夫ですよ、ウェイトさん」
「私たちの一軒家テントの防犯性能は、アリシエラさんの頑張りによって日々進化し続けているのですっ」
あー、また何かとんでもない新機能が?
「近付いてきた不審者には警告後に抗欲薬が噴射されるという、流血沙汰を避けた人道的防衛手段ですよ」
「アリシエラさんの魔導水鉄砲"マスミ"と、クロ先生の抗"欲望"試験薬の見事なコラボレーション!」
「まさにチームモノカの頼もしい仲間たちによる華麗な饗宴、なのですっ」
ちなみにその"抗欲薬"って、効果が永続的、なんてことはありませんよね。
水鉄砲にちゅーってされたら一生涯無欲な聖人人生、なんてことには……
「……テント設営後にクロ先生に連絡してみますね」
「まずは設営候補地を探しましょうっ」
ここでの冒険が平穏でありますように……
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屋台やら出張所やらの賑わいから少し離れたところに、
野営冒険者たちの寄り集まったテント村みたいな場所がありました。
この辺り一帯をナワバリとしている組織が、
ここを利用する冒険者たちから管理費を徴収して運営しているそうです。
うん、割と良心的な価格設定ですね。
「"バーリスク組"という、その筋では名の知られている組織のようですね」
「この辺りの警備・防犯も請け負っているそうですが、無断でキャンプしたり迷惑行為するような連中は容赦無く実力行使で排除、だそうです」
「いわゆる任侠の徒、でしょうか」
ふむ、その任侠組織とやらがあこぎな真似さえしていないのなら、
おとなしくこの場所のルールに従いましょうか。
「では、あちらで睨みを効かせているコワモテ監視員さんに、ここでのルールとかを聞いてきますねっ」
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はて、どういうこと?
リルシェさんが管理費を支払って受け取ってきた利用許可証。
その裏には、利用の際の注意事項と、許可されたテント設営場所の地図。
で、地図の通りに来てみれば、
ここって女性冒険者専用区画じゃね!?
ちょっと、リルシェさんっ、
マズいですって、この場所は。
俺、捕まっちゃいますからっ。
ってか、恐いお兄さんたちからスマキでドボンされちゃいますから!
「大丈夫ですよ、ウェイトさん」
「許可証を見ての通り、ここは女性専用区画の外れにある緩衝地帯」
「つまり、そちらの監視員さんから、ウェイトさんなら乙女のお隣でお泊まりしても大丈夫っていうお墨付きをいただいたってことなのですっ」
……ここまで案内してくれたコワモテ監視員さんが、
にっこり笑顔でサムズアップしてくれました。
この状況って、俺が紳士として信用されてるってこと?
それとも、タマナシへたれ野郎認定されたの?
「これからの行動によって示すのみ! ですよっ」




