第七話 完成したから。
最後だから。
「ねえ、海里。ちょっと相談があるんだけど、放課後に聞いてくれないかな?」
快凪くんと話して少ししたら、流架くんが話しかけてきた。
「いいよ~。」
「ありがとっ。」
まだ、作り笑いになちゃうな。
はやく、流架くんの前でも、らいくんの前でも普通《本当の笑顔》で話したい。
ーー
「らいくんっ! 次、体育だから、着替えに行こ~。」
「いいよー。」
「やった~。ねえ~、さっきの授業、面白かったよね~。」
「うん。先生が メニスカスを目に透かすってことですね。 ってな~。」
らいくんが先生の真似をしながら言った。
ちゃんと似ていて笑いの声が大きくなる。
「そうそう。思い切り滑ってたよね~。」
「ああ。あの先生があんなに滑ってるの久しぶりに見たわ。」
「な~、雷斗。次のサッカーのチーム俺ら一緒じゃん? キャプテン頼める?」
快凪くんが後ろから話しかけてきた。
僕たちはチームが一緒。
と言うのも、快凪くんにも協力してもらって一緒にしたんだ。
ちなみに、朔くんも同じチーム。
この前チーム分けをしたばっかだから、今日からサッカーの本格的な授業が始まるんだ。
「いいけどさ~。じゃあ、次のバスケのときは快凪がキャプテンな。」
「わかったよ。今回は頼むからな。」
「りょ~。サッカーだったら、海里も強いしな。」
「ねえ~、“サッカーだったら”ってなにさっ!」
「海里、身長ちっせ~から、バスケは無理じゃん。」
「いいじゃん。小さい方がかわいいし~。バスケもダンク決めるし~。」
「あっそ~。がんばれよ~。」
「ね~えっ、僕小さいからかわいいでしょ~。」
「...まあな。」
らいくんが小さい声でなにか言ったけど、聞こえなかった。
それを聞こうとしたのを最後に更衣室に着いてしまった。
会話がずっと続いていてほしい。
でも、僕はずっとらいくんが何か言いかけていたのに気づかなかった。
そして、らいくんの視線にも気づけなかったんだ。
ーー
「ねえ、海里。さっき言った相談を聞いてほしいんだけど...。」
放課後になって、流架くんと話す時間になった。
「いいよ~。学校のこと~?」
「あっ、んと、それもあるんだけどさ、、 ...快凪って好きな人いるの?」
流架くんの顔が赤いことに気づいて、僕は混乱した。
「えっ? わかんないけど...。」
快凪くんとの約束があったから、そう答えた。
「そう、なんだ。...あの、ね、海里。俺、快凪のこと、恋愛的に、好き、になったみたい。応援、してくれる?」
──このとき、一本線が完成したんだ。