第四十話 憎いから。
見つけられないから。
雷斗side(31~40話まで)
「やっほ。雷斗」
俺は、いつものように下校していただけだったはずなのに。
いつもより薄暗い道。
声の聞こえた方向を振り替えると、文化祭の時に海里を見ていた男がいた。
快凪と何か関係があったような、、。
そう考えたとき、俺の頭に何かが蘇ってきた。
「お前、、快凪の兄か?」
快凪の最近の態度。
俺の忘れていた記憶。
思い出したくなかった。
思い出すべきだったのかも知れないけど。
「そうだよ。やっと、思い出してくれたんだね?」
ニコニコした不気味な顔で話してくる。
こいつは、海里のことが好きだと言い張っているやつだ。
快凪が一応兄ではあるとはいいつつ、快凪は嫌いになれないのに快凪を妨げる存在。
俺に話してくれたこともあったな。
でも、記憶が消えていた。
思い出そうともしていなかったからな。
俺も、海里も。
「お前、何しに来たのか?」
俺の記憶が正しければ、こいつは都会へ上京していたはずだ。
「戻ってきたんだよ。会いたかったからね。快凪にも、海里にも」
俺は、よく殴りかからなかったなと思う。
「お前っ、俺らにしたことを忘れたのかよっ」
「覚えているよ? 泣き顔も可愛かったね? あっ、お前って呼ばないでよ。俺にも名前があるんだから」
勝手に誘拐紛いなことをしておいて、知らんぷりしていやがる。
こいつが嫌いだ。
「名前って、何だっけ?」
「酷いなぁ。星凪だよ?」
あー、そんな名前だったか。
「んで、星凪。用は?」
「会いたかったはダメ?」
「そんなはずはねーだろ」
こいつは、普通じゃないほど重度のブラコン。
愛情が歪んでいる。
「そうだね。あのさ、雷斗って海里と付き合ったんでしょ?だから、海里を取るって宣言しとこうと思って」
「は?」
この時、俺は今までで一番低い声で圧を出していた。
「怖いな~。俺海里を好きでもいいでしょ?」
「...まあな。でも、海里を俺から取るのは違うだろ?、というか、何でお前は海里が好きなんだ?」
ずっと気になっていた。
こいつは快凪への愛の方が異常なほどに強いし、海里への執着より快凪への執着の方が異常に強い。
だから、こいつが海里を好きだっていうのも、信用していないし、納得がいかない。
「あんな“かわいい”子が俺の言うことを聞くと思ったら、そそるよね。他の人に取られているから余計にさ」
「は?」
そんな理不尽な、自分勝手な理由で海里を好きになるな。
外見だけ。
俺は、星凪に向けた憎悪を吐き出すように、今までで一番引く声を吐き捨てて、星凪をにらんだ。




