第九話 壊れたから。
最後だから。
「ねえ、海里。もしかして、藍斗先生と兄弟だったりする?」
朔くんのこの一言が僕を痛め付ける最初の一声だった。
「なんで?」
内心驚きながらも、答える。
「ん~。雰囲気と藍斗先生の反応。」
お兄ちゃん、何かしたの?
お兄ちゃん、天然で変なところ真面目だから、何したか知れたもんじゃない。
「こっち来て。」
僕はそう言って、朔くんを隣の使っていない器具室につれていく。
「ごめんね。教室で聞くべきじゃんかったよね。」
「さっきの答えは、そうだよ。誰にも言わないでね?」
「やっぱり。そりゃ言わないよ。でも、なんで教えてくれたの?言わないかと思ってた。」
「だって、朔くんなら言わないでしょ。信頼してるから。」
「...そ、そっか。」
「うん。いつも優しいもん。」
「...悪いことする気分になるな。」
「えっ、なんか言った? 聞こえんかった。」
「あっ、信頼してくれてありがとうって。」
「ん~。」
「なら、質問なんだけど、藍斗先生って、恋人いたことある?」
「あるよ。元カノが二人。どっちとも半年くらい付き合っていたかな。」
「そう、なんだ。」
朔くんは悲しそうな顔をしていた。
藍斗先生とも仲良いし、言わないよね。
たぶん、藍斗先生のこと好きだし。
このときは信頼していたのに、なんでなの?
ーー
いつもの帰り道、いつもと様子の違うらいくんと歩いていたら、らいくんの一声が僕を壊した。
「あのさ、海里。俺、朔と付き合うことになったから。」
──嫌だ。
えっ。
「なんで?」
「えっと、朔に告白されてさ、まあいいかなって。」
どういうこと?
この言葉が僕を締め付けた。
「そう、なんだ。おめでとう。」
そう言って、僕は家に逃げた。
「ヒック。なんで、なの? 僕が一番らいくんのこと、、好きなのに。」
この夜は今までで一番泣いた。
食欲も沸かないから、部屋に閉じこもって、布団にくるまって一日中泣いていた。
ーー
朔くん、藍斗先生のこと好きなんだと思っていた。
なんで、お兄ちゃんの行動で朔くんは動かされていたの?
うそだったの?
朔くんがお兄ちゃんのこと好きなんだと思ったから、教えたのに。
らいくん、流架くんのことはいいの?
僕が告白したら、僕を選んでくれた?
らいくんのこと僕が一番知っていると思っていたのに。
──らいくん、大好き。
届かない言葉をいくつも僕の頭の中に並べた。
僕は朔くんへの嫉妬と憎悪。
それとらいくんへの思いで壊れそうだった。
──もう、やだ。
ーー
体温 38.6℃
翌日、僕は熱を出した。




