第一章 転移
目を覚ますと、そこは広大な草原だった、青々とした緑に遠くに見える山々や町、空高くのぼる太陽、鳥のさえずりや草木が風で揺れる音。
「本当に転移したんだな……」
僕は改めて実感する。
これからどうすれば良いんだろう。
途方に暮れていると、突然頭の中に“誰か”の声が流れ込んできた。
「こんにちは、あなたが冬馬さんですね?」
「そうです。あなたは?」
「私はこの世界の神です。冬馬さんがいた世界の神の配下にあたります。」
「ああ、あのお爺さんの……」
「そうです。といっても私は“あの方”をお爺さんとは呼べませんが……冬馬さんは気に入られているようですね。実は冬馬さんに伝えたいことがあるのです。」
「僕に伝えたいこと?」
「はい、この世界の概要と冬馬さんが授かった特別な力についてです」
そう語りかけるソフトな声はこの世界と僕の力について語り出した。
今、僕がいるのはこの世界の地球のような星にあるジークフリート王国という国だそうだ、日本のような島国ではなく大陸の一部の土地を領土として持っている国の一つで、王政を敷いている。
この世界では、魔法が存在しそれを操る魔物も存在する。その魔物が人間に危害を加えないよう、それを討伐するのが冒険者で、冒険者は冒険者ギルドに入ることが義務だという。
また、僕に授けられた力についてだが、これは神様たちが僕の異世界生活のためのプレゼントで大幅な体力、身体能力、魔力の底上げ、言語の読み方や書き方などがある。
「これだけの力があればこの世界を楽しむことができると思います。私たちからの餞別と思ってください」
「ありがとうございます」
「あともう一つ、冬馬さんに贈り物があります」
「なんですか?」
「私たちから冬馬さんへこの世界でのナビ役を遣わせます。存分に使ってください」
「ありがとうございます」
「そのナビ役を使えば私たち神々と連絡を取ることも可能です。それではあなたの新たな人生に幸福が訪れますように」
そう言い残すと声は聞こえなくなった。
その時。
「鈴木冬馬様」
今度は別の声が流れ込んできた。
「君は誰?」
「私はシエスタ。マスターのナビを務めさせていただきます。」
「ああ、君が……」
「はい、何かお申しつけたいことがございましたら、私を呼び出してください。冬馬様の頭の中で念じれいただければ構いません」
「わかった。早速頼みがあるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「まずは泊まれる場所と資金源を確保したいのだけど」
「それでしたら、こちらに町がありますのでそこで宿を確保できますしギルドで登録することによって収入を得ることも可能です。ですが、マスターはすでに大金も住居もお持ちです」
「えっ⁉︎」
「この世界の神からの餞別として、この国で使える通貨をすでにお持ちなのです。お金は異空間に保管しております。異空間にはマスターとマスターが許可したものしかアクセスできません」
「異空間にあるものはどうやって取り出せばいいの?」
「私にお申し付けいただいても構いませんし魔法を発動し取り出すことも、さらには異空間に転移することもできます。なので宿に泊まれる必要もないのです」
「この世界では一人一人が自分専用の異空間を持っているの?」
「いいえ、これは神からのマスターへの贈り物であり、このような能力を持つ者はこの世界にマスター以外存在しません。」
「わかった、それじゃあありがたく使わせてもらおうかな。早速その空間に転移して」
「わかりました」