プロローグ
胸に走る鋭い痛み、胸から下にかけて生暖かい感触がすると同時に鉄のような血の臭いがしたが、次の瞬間には意識を失った。
気がつくと、僕は雲の上で寝ていた。
「おう、気がついたか」
不意にどこからか声がかかる。
声のした方を向くと、そこには仙人のような見た目のお爺さんがいた。
「ここは?僕は確か街にいたのに……」
「君は死んでしまったのじゃよ、鈴木冬馬君」
お爺さんが僕に語りかける。
「そうだ、街にいたら突然襲われて……」
「君は通り魔に刺されて死んでしまったのじゃ」
「そんな……」
「本来君は死ぬことはなかったのじゃがこちらの手違いで君を死なせてしまった」
「そういう意味ですか?それにお爺さんは?」
「自己紹介がまだじゃったな、わしは君たちの世界で言う『神』じゃ、ここは天界、わしらの世界じゃ」
「天界?あの世ってことですか?」
「いや、あの世とは別じゃ、君と話がしたかったので特別に来てもらったのじゃ」
「話って何ですか?」
「実はの冬馬君、別の世界で新たな人生を送る気はないかの?」
「転生ということですか?」
「いや、体はそのままだから転移じゃな、君は本来死ぬはずではなかったが、こちらの不注意で死なせてしまった。そのお詫びをしたいのじゃ」
「わかりました、お願いします」
「おう、そうか、わかった、では、転移させるぞ」
僕は意識を失った。