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はじまり

 柴田(しばた)基樹(もとき)は警視庁の刑事だった。

 配属は霊能課だったが、彼自身には霊能と呼べるものがない。

 だが、霊的案件を扱う部署に配属されていた。

「柴田さん、局長からお電話です」

 持っている電話に転送されると通話ボタンを押した。

「はい、柴田です」

 それは有栖(ありす)邦彦(くにひこ)からの電話だった。

『アリスが失踪した』

「えっ、あの、すみません。どういうことですか?」

『だから、娘のアリスが失踪したんだ。君には迷惑かけるが、よろしく頼む』

「すみません…… なんのことか」

 柴田は電話に向かって話し続ける。

「なんだよ『失踪』って。それだけじゃ、何も情報にならないよ」

 実際、局長自らが言い終わった時点で、電話は切れていた。

 だから、柴田が話し続けていたのは、局長に対してではなく、周囲の人に聞いて欲しい愚痴であった。

 電話を置くと、アリスがいない職場のことを考えた。

 彼には霊能と呼べるものが何もない。

 だから、霊能者であり刑事である先輩と組んで仕事していた。

 先輩の名は有栖(ありす)アリス。不思議な名前だが、優秀な霊能者であり刑事だ。さらに、先ほど電話をかけてきた局長は、その父親で、警視庁にこの霊能警察局・霊能課を出来る際に尽力した人物だった。

 それほどの実力者である先輩の身に、一体何があったのか。柴田は考える。

 まずは先輩の家に行って何か手が掛かりを……

「柴田刑事、柴田刑事」

 さっき電話を転送してきた後輩だった。

 柴田の顔を見ると、

「課長がお呼びです」

 と小さい声で言った。

 柴田は立ち上がると、席をぐるっと回り、課長の横に立った。

 課長は右手でマウス、左にシェーバーを持っていた。

 課長には家族がいたが、ほぼ毎日署で寝泊まりしている。だから、家ではなく、いつも署内で髭を剃っているのだ。柴田が来たことに気づくと、シェーバーを机に置く。

 椅子を回し、向き直ると言った。

「アリスが失踪したが、その件について、お前は追うな。絶対にだ。心配するな。有栖局長から除霊事務所へ捜索依頼をかけているそうだ。あと、これからの仕事は……」

 当然と言えば当然だが、柴田が聞くより前に、課長は失踪を知っていた。情報源である局長は、一体何箇所に連絡を取ったのだろう。娘がいなくなった不安や苦しみの中でだ。

「仕事、特にアリスに任せていた分は、必要に応じ、民間の除霊事務所を使って調査しろ。過去依頼した実績のある除霊事務所は、俺がピックアップしておくから」

「アリス先輩は……」

 課長は立ち上がって、柴田の肩に手を置く。

「局長は言わなかった。が、俺の勘だが、これは極めて霊的な案件なんだ。だから、お前は絶対関わるな」

「……」

 柴田はアリスの姿を思い描いていた。




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