4話 私の気持ち
「美優さん、俺と付き合って下さい」
みんなの前なのに臆することなく隣の席の優生は私に告白してきた。
正直、そんな予感はあった。
恋愛に不器用な私でも、二人で話がしたい、そう言われたら嫌でも分かる。
そんな彼の顔をチラッと見てみる。
正面から見上げた優生の顔は、いつも盗み見てた退屈そうな横顔とは違い、どこか緊張が感じられた。
不覚にも、その温度差にキュンときてしまい、胸が苦しくなる。
な、なんでよりによってこんな奴にときめいちゃうわけ……?
確かに顔が良いのは認める。身長だってあるし、勉強もスポーツも何でもできる。そして、めちゃくちゃモテる。
けど、私は、そんな彼を嫌いだ。
私は不器用で、何をやってもダメダメで。強いて言うなら運動神経は良いのだけれど、不器用すぎて体が上手く使えない……だからスポーツは苦手。
そんな私だけど、一応勉強は頑張っている。
苦手な勉強を毎日頭を抱えながらコツコツと努力している。
なのに、隣のバカはいつも勉強もスポーツも何もかも退屈そうにやってる。明らかに秀でた才能を持っているのにも関わらず。
だから私は彼が嫌い。まぁ、ちょっと優しい所もあるようだけど……。嫌い。
だって、ずるいもん。
だから私はたった今決めたのだ。
コイツと付き合って、一番注目が集まった時に別れる。
そうすれば、少しは一矢報いれる。
「はい」
そう笑顔で告げてみる。
すると、私達を囲む人たちの拍手が中庭いっぱいに響いた。
久しぶりに受けた祝福は、どこか冷たかった。