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93〜狂想曲の強襲〜

 鶴の一声を聴くは、周りも鶴か狼か……



 高足の様子に違和感を覚えた音岳(おとたけ)が事務所の監視カメラ映像を確認していた。

 休みを取った遠藤のデスクで不穏に立ち止まり唐突に椅子を蹴り飛ばして消え去る姿は良く見る光景。

 しかし、普段から行われている事に疑いをかけずにいた事こそに疑問を持って見ようとしていた。



 十数年前、違法薬物を保管していた家探(ヤサが)割れ縦巾(たてはば)市内の埠頭の倉庫に立ち入り捜査されたが、あれは廃棄に暴力団に罪を擦り着せる為に都合良く敢えて情報を漏らしていたものの、誰が何処から食い付いたのかが問題だった。


 沢抹(さわまつ)が海外から違法薬物を買い込み、バラ撒きとその資金洗浄に宗教団体を利用していた。


 しかし、当然違法薬物の売買には縄張りが在り、暴力団との抗争になり得る状況に、政治屋である事を利用した愚劣な利害関係を結ぶ政策を公に立てた。


 本来は地方に循環され市を潤わせていた煙草税を、NPOと云う地方自治財政で賄う団体を後援団体の中から立ち上げさせて奪い取り、尚且その煙草税こそが利権なのだと一周回った嘘で聴衆を惑わせ、嫌煙を促す為に製薬会社と共同で禁煙治療を宣伝し外資の医療機関を国内に潜り込ませる。


 県内のプロ球団の転売利益を約束手形に売り込み利益供与していた或るメディア企業を使い、時の環境大臣の売名にも使って国連との繋ぎ役に噛ます。


 大使の思いとは裏腹に政治屋の建前の広告塔に利用し国連機関からWHOへと手を伸ばし、環境大臣との蜜月に厚労省に近付きと

 そのメディアが過去に弁護士を裏切った経緯を逆手に、弁護士連盟に近寄り国際連合内部から各機関等への圧力を持つ力とし、権力の武器にした。


 その一つの武器は、声を拡げたがっていたフェミニズム団体や宗教団体をも惹き付ける。

 それは今も尚IOCに対しても圧力となっている。



 【縦巾(たてはば)市内禁煙】


 その文字に至る理由を市民県民国民にと手を拡げ、製薬会社の禁煙治療CMが流れ、規制も無ければエビデンスも無い煙草の危険性を唱う査読の無い論文を掲げたネット情報が踊り、それをあのメディアが取り上げる。


 これでもかと印象操作を繰り広げる様は国民にファシズムを煽りストレス社会へと洗脳か先導か、嫌煙家は利益供与に作られた正義を盾に悪行を助け悪漢を覆い隠して行く。



 気付けば社会のストレスに禁煙にと違法薬物に手を出す者が増加傾向にあり、暴力団との抗争にならない程の買い手を作り出した。


 沢抹に媚びる一部の政治屋やNPOやの懐を潤わせ、その資金洗浄を請負った宗教団体はさながらバブル期となりその勢力を拡げ、他の宗教団体とも手を繋ぎ強大な力をつけて行った。



 そして、一つの武器で得た権力は更なる権力を呼び、影の権力者と成っていく。利益供与するメディアを使えば表面にも株が上がる。

 そのメディア戦略を任されていたのが有名な広告代理店の【豊銅箔(ほうどうはく)】上がりの音岳(おとたけ)だ。


 大きく成り過ぎた権力にぶら下がる企業や団体への利益供与に博覧会で税金を浪費し捲るが、収支のバランスが丸見えの博覧会の入場者数は市民県民に疑心を芽生えさせる。

 音岳も手に負えなくなる前にと進言した。



「この辺りが潮時かと……」


 共に税金を食い潰し、市内禁煙で違法薬物の売り上げに貢献し潤った懐に縦巾(たてはば)市長の田中が尻尾切りに頷いた。


 その後、責任転嫁に煙草叩きが的外れに感じる程に国民のファシズムは異常を極め、沢抹の予想を上回る。偽の正義に我儘勝手を乗せた嘘の正義を振りかざし暴れるプロ市民に、喫煙者は減りに減り違法薬物も余り出し、手元に置いておくリスクが上回る。




 そんな頃だった。厚労省内部の秘匿情報が、繋がりから沢抹の元に漏洩され捜査情報が入る。あのメディアから伝えられた。



「政治家の違法薬物売買として何処かに漏れているみたいです」


「突き止めろ。いや、潰せ!」


 沢抹の一声に何をと笑っていたが、その後の事件を目の当たりにし戦々恐々の面々は辞めていったが、その権力の大きさに皆口を噤む。


 そうして今居る沢抹の取巻は暴力団や宗教団体やメディアやと利益供与にあった者達の中にあって、裏切った者が居る可能性に音岳は当時から探っていた。




「高足か……」


 音岳が何度も見ている映像は事務所を閉める直前の部分。

 遠藤がデスクを立ち電気が消える。

 真っ暗になったカメラが暗視モードに切り替わると高足が遠藤のデスクを蹴って出て行く所から始まる。


 音岳を探して沢抹が入って来た。

 何かを怪しむ姿に不安要素は多く、何の敵かも判らない。沢抹が不安感に尋ねる。


「何だ?」

「……まだ何とも、ただ」



 考え込む音岳の続きを待つ沢抹の眉が寄る。



「床上製薬での話、始める前から何処かに漏れる事の無いように注意しないと、ですよね」



「……当前だ」








 帰宅早々に見せられた床鍋の思考の異常さと零のデジタル脳の洗礼について行こうと頑張るが、気付けば夜。対抗策の説明に透子の頭の限界が来ていた。


 脳の限界に腹を満たそうとスーパーで買って来た物を使い夕食にする。


 根菜を煮込みビーフシチューのルーを入れ、皿にマッシュポテトを置き、トースターで温めたメンチカツを乗せ、シチューをかけてパセリを散らせば、シンプルだが洋食屋の様な雰囲気が出る見た目と味に零も楓香も満足顔になっていた。



「「ごちそうさま」」


『…ひほ、それじゃ再開だな…』

「ぃゃ、片付けないと……」


 逃げ場を求める透子の苦しい言い訳を、楓香が真摯に捉えて親切心から逃げ場を奪う。


「私が洗っとくから頑張って」


 遠い目を見せる透子を嘲笑い、得意分野に引き連れる謂わばヲタクの自慢話しのようにも思える説明に、パソコンの前で待ち構える零の笑顔は床鍋に引けを取らないカルトの目に見えていた。



『…ひーほー、早く覚えようぜお嬢ちゃん…』


「くっ……」


 

 


 狼煙をあげる者は、その煙たさを知る。


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