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83〜狂想曲の強襲〜

 ガードは両脇を締める



――PURURURURU――


「ん? ちょっとガソリン入れさしてくれ、この先コンビニ無いからその向かいのが最後だけど何か必要なのあれば行っといで」


 二人が降り満タンに頼むと、二瓶は携帯を手に取り履歴を確認するが、見た事の無い番号。

 だが、地区番号から推測し思い当たる節にかけ直すと案の定藤が出た。



「おお、やっぱお前か、どした?」


――PUUUUUUUUUUUUU――




――TIINN――



「早く釣ろうよ」



 電話を切ると足元で藤真が急かしていた。


「おお、釣るにも色々準備が必要なんだわ、兄さん悪いけどこの子達の仕掛け見てやってくれないか?」



 バイトらしき若者に教えられ、藤真が麻友子の前で間違った結び方をしていたのを指摘され顔を渋らせる。

 その脇で藤は管理棟受付の(あるじ)と二人モニターを覗き何やら困り顔で話していた。



「ああ、ウチも問題起こす客はお断りだからね」

「助かったよ」


「でもそんな簡単に釣れるかねえ?」

「俺が釣るから 見てろよ麻友子」

「あ? おお、待て待て」



 勘違いした藤真が麻友子を連れ歩み出し、藤が慌てて追うがバイトの若者が、藤と主に大丈夫と親指を立てて合図し子供達に付いて行った。

 後ろから主が言う


「大丈夫だ、柵もあるしアンタが行くまで釣れもしねえ、針の怪我もねえよ、ほれ!」


 主が顎で示したすぐ脇のベンチには、置きっぱなしになっている針と餌。


 それを見た藤が顔に手をやり溜め息ひとつに呆れていた。







――TIKKATIKKATIKKA――

 信号待ちに二瓶が、緊張なのか元々かあまりに大人しい後部座席にバックミラー越しに声をかける。


「これ曲がったら十分位で着くから、今頃ちょうど飯が出来てるんじゃねえかな? キャンプの飯は何食っても美味いぞお」


「すいません、夜は私も手伝いますので」



 野上の応えに、意味を違えて伝わったかと二瓶も謝りバックミラー越しに二人で気を遣い合っていると、ミラーの外から指摘が入る。



「青」


 二瓶が指摘に反応し前と右を確認すると走り出し何とも言えない気不味さに、その先の面倒事にも付き合わせるのが申し訳なく、その後の埋め合わせを考えていた。そこに野上が口を入れる


「あの、一応までに、先程の言い方だと奥様方が怒ると思いますので修正をお勧めします」

「え?」


「何を食ってもは、不味い物と意味を成してしまい兼ねません」

「あ、おお、そうだな……確かに、気をつけよう。さすが野上さんだ」




――BURORORORO――

「五番と、あとは……」


――BATAMU――



 駐車場に着いてから何かを確認すると、二瓶が先に降りて周囲を見回り二人を後ろにテントへ向かいエスコートしていると、車の影から二瓶に男が飛び出して来た。


 寸での所で避ける二瓶に男は持っていたビールの缶を手放し散乱させた。



「おお、危ねえだろが! テメーのせいで……」


 二瓶も野上達も誰も慌てる事なく拾いもせずに呆れ顔で立っていた。



「何突っ立ってんだコラ! 拾う位しろや!」


 二瓶の胸ぐらを掴むと途端に、男は二瓶に背を向け後ろ手にお辞儀し、二瓶が男の膝裏を足で軽く叩くと男は膝を着き、それでも抵抗していた。


 二瓶が余裕を見せて、もう大丈夫と気を遣おうとしたのか振り返り顔を野上に向けた時だった。



「ふざけんなあ!」


 女が別の車の影から飛び出し後ろから野上に迫っていた。


 二瓶がしまった! と、慌てて動こうにも抵抗する男に手を外せずに後手を踏む。

 野上が女の声に振り返るが、二瓶が叫ぼうにも歯をくいしばり窄む


「野上さん逃げ……」



 迫る女が右足を振り上げ野上に飛びかかるのを、いつから察していたのか左横から女の左の軸足を持ち上げるようにしがみつき、捻りを入れて巻き取るように女を投げ落とし、脇で仁王立ちする女……の子に野上が一瞬の驚きの後に、またかと呆れ顔で拍手する。



 自分の振り上げた足の遠心力で自身の身体を地面に叩き付けた女が、地面を見ている自分に何が起きたのかも理解出来ず、まるでアイスバーンですっ転んだ様な何処から何処までが痛いのかも判らない衝撃に打ち(ひし)がれていた。



「あ、え……野上さん……」


 男の手を乱暴に括り上げたままに驚きを隠せずにいる二瓶の声に、振り返り不味い顔をする野上が観念したように少し考え口にした。



「ああ……これが、私のボディーガードです」




 仁王立ちする女の子に目を移し、考えるに男の腕を掴んでいる自身の手を見返しては何かに負けた感じがして感服していると、キャンプステージの管理棟から男が頭を掻いて近付いて来た。


 仁王立ちの女の子が振り返り戦意を見せると二瓶が察して、あ、と漏れる程度に野上が口にした。



「透子! 待て」


「え?」


 二瓶も向かって来た男も怯む程の野上の叫ぶ覇気には、まるで強犬を制するような凄みがあった。

 男が様子を伺い口にした。



「あ、あの警察ですけど……どうしましょうか」


 二瓶も野上も刑事と思しき男も想定していた状況からはかけ離れた惨状にどう対処すべきか頭を悩ませていた。

 サイレンが響き近付いて来る中、二瓶が申し訳なさそうに口を開く



「いや、まさか俺等を狙うとは思わなくて……つい」

「でしょうね……」


「とりあえず、そっちで確保して貰ってもいいかい?」


 惨状を見回す刑事が困り顔で考え答えを探る。

 打ち拉がれて(うずくま)る女の脇で仁王立ちの女の子に、男を後ろ手に取り押さえる男、見た目にどちらを捕り押さえるか悩ましくも苦し紛れに答えを見つける。



「……そう、ですね、まあ通報もあるし証拠映像も、暴力……は、未然に防いだという事で、宜しいですかね?」


「勿論」


 二瓶は元々下手な被害届等出す気も無かっただけに寧ろそれを喜んでいた。

 気付けば周りには他のキャンパー達がパトカーのサイレンに、何があったのかと集まる野次馬の中に細井達を見つけ気不味そうに顔を伏せ、遅れて到着した警察官に男を引き渡した。


 起き上がった女と男を囲み駐めたパトカーへと連行する警察官を前に、思わぬ所から面倒事を口にする男が現れた。


「馬鹿野郎! そいつはウチが追ってたんだぞ」



 不意を突かれる発言に、その場の空気は一変していた。

 刑事に目を合わせ二瓶が首を横に振る。そして……


 


 カードは隠して使い処を探る


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