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69〜静寂の狂騒曲〜

 まわす舞わす回す心の輪舞曲



『…おひほー、あ?…』

「しっ!」


 楓香が零の軽口を制止する。

 理由は明らかに透子の顔だが……


『…白過ぎだろ…』



 UVケア、春る菜市へ行った日に着ていた七分袖の痕が薄っすらと残る腕の日焼けに、過度な反応をするつもりは無い。

 が、普段から日焼け対策を余りしていなかった透子が持っていたのはファンデの通常UVカット程度で、テレビの天気予報を見た透子がアウトドア用の日焼け止めクリームを塗り終わった処だ。


「やっぱり……そう思う?」

「え、……」


『…楓香、こういうのは言ってやった方がコイツの為だぞ…』



 透子も何となく白が過ぎると理解出来ている。

 しかし、今日は快晴になるとお天気姉さんも言っている上、大泉さんからも気を付けるべき事として聞いていた。

 そしてあの日、実際働いて戻ってきたナグルトレディーのお化粧は紫外線対策と汗対策がメインの人が多かった。


「良いよ! 帽子焼けしたくないもん」


 その帽子の為に髪を切った透子が白塗りの覚悟を決めたのは、知り合いに会わないだろうと考えた訳ではない。

 自転車に乗っている間の紫外線対策は必須だと、以前から見ているブログの自転車で遠出している人も書いていた。


 しかし一つ気になっている事がある。



「楓香の指で日焼けって治るの?」


「ふむぅ……」



 楓香がやってみないと判らないとばかりに指を立てると、透子が腕を出す。

 七分袖の痕に沿って指を這わせた。


「あ、え、いや、これは……」


 歓びもつかの間、日焼け痕のラインが消えて治ってはいるが、ともすれズレただけにしか見えなかった。

 日焼けは火傷と同じと捉えてメラニン色素を正常値に戻せば良いという事か、治るのは判った。

 しかし、それは日焼けした部分全てを治す必要があると気付き、その時間のペースからも楓香の酷使としか思えない。


 流石に申し訳なく感じた透子はライン移動三センチ程で、もう大丈夫ありがとうと遠慮するが、微妙に高さの変わった両腕のラインは何とも言えない違和感を残していた。


『…ひほっ!…』


 零の顔が明らかに悪い何かを思い付いた事を知らせる。

 出掛ける準備に戻った透子を見やり、コソコソとスマホで何かを検索していた。



「朝食は作ったけど昼は二人で適当に……って、零! 分かってるわよね!」


 アレは盗るなよ! とばかりに振り向き透子が零を睨み指をさす。

 目を向け頷くと下を向く零に、怪しむ目をバッグに戻し必要品を確認していた。


 零が朝食がてらに楓香に近付くとスマホの画像を見せヒソヒソと何かを言うが、ロクな事ではなさそうだとは楓香も分かっている。

 が、零は最後にこう言った。


『…これなら透子も、オシャレじゃねえか…』


「オシャレ……ああ、まぁ」




――CHIRIRINN!!――


 そうこうしている間に出る時間になっていた。

 血眼号(チマナコごう)を持ち上げようと手を伸ばす透子に、楓香が声をかける


「透子、コレ」


 楓香に手渡されたビーズのネックレスに、透子は朝の顔から喜びが弾けありがとうを言い首にかけようとすると楓香が違うと言う。

 何が違うのか判らない透子が戸惑い時間が無いからと帰宅後にしようとすると楓香が腕を掴みコレと指した。


「え、デブる?」



 腕にハメていたデブるブレスレットを外し、輪にネックレスを通し首にかけ、更にブレスの輪にネックレスを通してハメるとデブるのブレスレットがネックレスになった。



「これでデブる焼けも無いでしょ」

「……」


 感謝と喜びで言葉よりも先に抱きついた透子だが、日焼け止めクリームの独特の匂いは楓香に海の記憶を想起させていた。


『…ひほ? この展開は違うな…』


「あ、あとコレ」



 そろそろ怒り出すと思って見に来た零の目の前で楓香が透子の腕をとると、まだ何かあるのかと期待の眼差しを向ける透子に楓香が腕に指を這わせていく。

 その指の通った痕跡は、まるでタトゥーのような紋様に……



「ん……楓香? コレは?」

「零がオシャレだって……」


 慌てて腕を引き、止めさせた透子が零を探す。

 が、目下そうスグ下に居た。

 完全にタイミングを図り違えた者の焦る姿は誰もが同じくその場で固まり思考を巡らしていた。


 そして……


――SUTATATATATATAH――

「クソっ」


 逃亡した。



 また騙されたと気付いて謝る楓香に首を振り、ネックレスを掲げてありがとう。

 と、怒っていない事を伝えるが、片腕の紋様をどう隠すかと考えていた。

 そこに零が白い何かを投げつけて来た。


「このっ!」

『…それ着けろ…』


 着けろと言われ白い何かを拾い上げ確認すると、それは腕の日焼け防止グッズだった。

 なんだかんだで気にしてくれてはいたのだと解り一瞬笑顔になるが、周りクドい悪癖に素直に感謝出来ずに拳を握りくやしそうに口を開いた。


「あぁりがとっ!」

『…ひーほー…』

「腹立つぅううう」



――PEROPERONN!PEROPERONN!――


 スマホのスケジューラーが知らせる。


「駄目、遅刻しちゃう。行ってくるね」


 透子が血眼号を持つと零が顔を出し楓香と口を開くが瞬間。

 先に透子が口にした。


「血眼号、認めてあげる」



『…では「血眼号」発進…』


「行ってきまーす」


――CHIRIRINN!!――


 


 心は一つ屋根の下


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