表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/154

06〜出会いと別れ〜

 吹き荒れる邪風……というか、今話は、ちよっと趣向が……


「あぁもぉ、先ずは飯っ! もうお昼過ぎてるし」


 目の前に答えがあるのに口を割らせれば腹の虫……聞き取り辛くて話にならず、冷静さを取り戻していた透子は鼻で笑いキッチンへと向かった。


 追求されるのを覚悟していた冷や汗まみれの腸女には、キッチンへと戻る透子の行動に訳が解からず口が半開きになった。


――KYUふぇRUっKYU?RUGURURUNN!――


 半開きの口から漏れ出た腹の虫にキッチンから透子が苛ついた顔を出す。


「だぁ口閉じとけっての!」


 怒鳴られビクッと体が硬直し口もすぼみ閉じ、腸女はその驚きで思考が巡リ出したのか自身の腹の虫の煩さに気が付くと、顔を上げ透子の行動を理解し更に顔をすぼめた。が、口はしっかり閉じていた。




「さぁて……と、これからか……」


 先ずは流しの片付けと洗い物だ、腕をまくり……

 裸なのを思い出した。が!


「これも後だわ!」


 服を着てない事も後回しにしないとならない程の腹の虫の厄介さに、普通なら一番に考えなくてはならない事も普段なら悩んで決める事も今は食べる為だけに行動するほかない。


 しかしながら生ゴミの片付けや洗い物は、裸でやると思いのほか飛沫が身体に飛んで来て気持ちが滅入る。

 仕方なく先程クローゼットから放り出した服の山から普段着にしていた【I’m not Vegan】と書かれた真っ赤な肉絵Tシャツを羽織り、その違和感に鏡を睨みつけた……



「マジか!?」


 と、昨日までピタTだった服が今やTシャツワンピ……

 愕然とする気持ちを部屋に残しキッチンへと戻るも……横で眺めていた

〈アレが男なら!〉

 と、脳裏に自身の裸エプロンを浮かべ妄想で滅入る気持ちを慰めようとするが、そもそも男が来ない家にエプロンなんか買ってもいなかった事に気付き、この現実では有り得ない事が起きている現実世界に引き戻され、生理中の辛い日に他人の悪口をばら撒く輩に話しかけられた様な心境の面持ちで淡々と片付けていった。




「よし!」


 冷蔵庫の中の食材を次々取り出し下ごしらえをする透子の頭には、既に何を作るか決まっていた。用意したのは


 レンチンご飯2つ

 ウィンナー1袋

 人参半分

 玉ねぎ半分

 ピーマン1

 椎茸3

 キャベツ2枚

 万能ねぎ1本

 塩・胡椒・胡麻 紫蘇(しそ)・和辛子

 ポン酢・ごま油・油


 万能ねぎを5ミリ幅の輪切りにしたら、人参・玉ねぎ・ピーマン・椎茸・ウィンナー・今回はこれ等を1センチ角のサイの目切りにして、鍋に油をひき火を入れたら、万能ねぎ以外の具材とキャベツ2枚をちぎり入れ塩胡椒と和辛子少々で炒める。


 お好みでおろしニンニクや梅等を入れると風味が増しますが、今回はごみ箱からの救済措置で塩胡椒と和辛子のみ……


 炒めてる間にレンチンご飯を2つ温め、椎茸と人参に火が通った頃合いで一旦皿にあげ鍋に油を追加したら卵を2つとき入れすかさずレンチンご飯を投入し塩胡椒を振ったら卵とご飯を良く混ぜ火を入れご飯が黄色くなり始めたら、皿にあげた具材を鍋に戻しポン酢とごま油を香り付けにスプーン1杯鍋の縁に垂らし、具材を回して混ぜ込み火を消し皿にあげ、胡麻と万能ねぎと軽く紫蘇を振ったら出来上がり。



 部屋の中は具材にごま油が絡まりポン酢の焦げた匂いで包まれ、腸女は口からこぼれんばかりのヨダレを飲み続けコチラを覗くが、待てと言われた利口な犬の様に我慢していた。


 それをチラ見して透子は更にミルクパンにコップ2杯分の水を入れ乾燥ワカメと砕いた乾燥椎茸と胡麻を入れると火を点け胡椒とガラムマサラとパセリに粉末オニオンスープの素を1袋入れ沸騰を待つ。


 その間に部屋のテーブルの上を片付け拭いて戻ると、カップの中それぞれにとけるチーズを1枚入れ沸き立つスープをスプーンを使い注ぎ入れた。


 鍋を流しに落とし水を入れ、ようやく部屋のテーブルに皿とカップがニつずつ置かれた。


 腸女は料理から敢えて目線を逸らし透子を見て食べるのを我慢している。

 良く見れば鼻もすぼめて鼻息荒く本当に犬の様でまるでペットを飼った様な錯覚さえあった。



「ヨシっ!」


 思わず口に出てしまい、しまったと思うまでもなく


――いっKYUたRUだKYUきRUまぁGUすRURUNN!――


 けたたましい腹の虫を鳴らし、部活帰りの学生並に貪り食う様を見て透子は自身の甘い考えによる思い違いに気が付いた。


〈犬というより地獄の番犬(ケルベロス)じゃない!〉


 と、呆れ飽きて透子も頂きます! と手を合わせ食べ始め多めのご飯をゴクンッ! と飲み込んだ時だった。



――BAGONNN!――


「うっふ……」


 飲み込んだ食べ物が胃に落ちた様な音と共に衝撃があったが、何かニつの物が当たった様な不思議な感覚。

 それが些細に思えたのはその音と同時に【腹の虫】が鳴り止んだからだ。


 透子はケルベロスから犬に戻った腸女を期待し見たが、食べ方は変わらず貪る地獄の番犬だった。


 十秒程かようやく見られてる事に気付いたのか口と手が止まりチラチラとコチラを覗き警戒心丸出しで思考を巡らせ始めた。そんな姿に安堵し

〈やっぱり犬だわ〉

 フッ……と鼻で笑った透子は


「いいから、お食べ!」


 と、自分も食べだし二人とも静かに……否、カチャカチャと音を立て、むまむまモグモグ頬張った。



 あっという間に皿は空になり腸女は皿やカップに付いた胡麻や紫蘇の細かい具材をかき集めてスプーンをチパチパ舐めている中、透子がスープを飲み干しカップを置いて鼻から抜けるスープの余韻を味わい目を(つむ)り手を合わせ口を開けた。


「ご馳走様でした」


 腸女もハッと理解して正座し直し手を合わせ、透子にお辞儀しながら返す。


「ご馳走様でした」


 透子はコクリと頷き、何かが切り替わった様な鋭い目になり肩をきり顔を上げ、先の不審な(とぼ)け方からも確実に答えられると思える疑問から切り出した。





「先ずは説明して貰おうか、この天使と悪魔の羽について! 知ってるんでしょ?」




 唐突な雰囲気の違いに気不味さが戻りビクッとしつつ、問われた件についても口を尖らせ言って良いのか悪いのか自問自答し目がキョロキョロと泳ぐ腸女への苛つきを抑えて告げ足した。


「まだまだ聞きたい事は山程あるんだから、答えられる事だけでも良いからとっとと言いなさいよね!」



「……ぃ、ぃ、言える事……」


 尖った口を戻し唇を吸い込み下を向き、考えるに思い付いたか答えが出た。

 透子の肩を指差し顔は向けずに言い放つ。




「その、それ、取れますから!」


「ん???…………」



 透子はゆっくりとTシャツをずらし肩を覗き見て想像力を働かせるが、眉をひそめて目から腸女に顔を戻した。



「はぁあああ?」


 

 予想されるより少し広い話になりますので、もう少しホームドラマが続きます。もう暫くお付き合いくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ