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55〜対峙の芽吹き〜

 呪いの交差点



――KATAKATA……KATA――


『…ひーほー、コレで俺はイヒヒヒヒヒ…』


 零が思い出した様に振り返るが早合点の雌豚こと透子の姿は無く安堵すると、楓香の作業の様子を見ていた零だったが、何となく何をしているのかを理解し始めたと同時に楓香の暗算処理の速度に驚いていた。



――KAKIKOKAKIKO――


 既に透子の図案ファイルの三分の一程は終わっている様だが、とかく書き物に使っているコピー用紙が安物のせいか剥がし辛く都度に紙と格闘していた。

 恐らくこれが無ければ半分以上処理していたのではないかと推察出来る。

 零は自身の体が布だけに静電気を帯びているが故か色々くっ付いていた頃を思い出していた。


『…ひほ…』


 そお、思い出した。自身の首に着けた透子の静電気防止ヘアバンドを。

 そして、思いついた何かが明らかに悪いと判る顔になった零が、楓香に話を持ち掛けていた。



『…ひほー、楓香、それ簡単に取れるんだぜ…』

「あ、そっか」


 そう言ってキッチンに向かった楓香に零は呆気にとられていた。



『…ひほ?…』

「ありがと」


 戻って来た楓香がコップに水を入れて来たのを見て、零は(おぞま)しいものを見たかの様に固まり思い返していた。


 楓香が何でそれ等生活の知恵を習得しているのかを。



『…ひほぉ…』


――KAKIKOKAKIKO――







 二瓶は藤の電話を切ってから何かが頭に引っ掛かっていた。

 人目を避け部屋を抜け出し電話していた為にコソコソと部屋に戻って座った直後だ。



――KONKON、GATYA――


「ありましたよ!」


 驚くも驚いたとは思わせまいと顎を引き寄せ歌舞伎の様に目を向けた二瓶に何かの資料を持った部下と思しき男が気不味そうに部屋を見渡すが客人は見当たらない。

 対して二瓶も男の持つ資料が何か理解した。


「あ、アレか」


「ハイ、やっぱり金皮県警からは出なくて、だったらと大元の役所に行ったんですが、そこも消されてて」



 二瓶が調べていた物を金皮県警に貰おうと要請したがないの一点張りで立ち会いで探させろと懇願して送った部下が、本当に無かったと報告を受けてから随分と時間が経っていたが中々戻って来なくて少し忘れていた部下の存在ではあるが、仕事は信用していた故に。



「で?」


「役所の元職員も駄目ってなっての臨時職員ですよ。元大手書店の監査だったらしくてシッカリキッカリ覚えてました」


「じゃあコレは当時の物では無く今書かせたものか?」



「ええ、残念ながら証拠にはなりません。というか証拠になる物は全て消去しろと上から指示があったそうで……ただ、ここ見て下さいよ」


「おお、工事発注書か」

「ええ、発注者名もほら」


「でかした。裏取りだ」


「もうやってます」



 二瓶の目に兆しが見えたと、資料の中に見覚えのある名前があった。

 記憶を辿るが何処の過程で見た名前か、沢山の案件を抱えているがこの名前は間違いなく最近の何かだとは判っている。


 果たして……


「おい、その臨時職員は大丈夫なのか」

「ええ、別の件でも目立ってますから」



 二瓶の顔が苦くなるのを見て慌てて訂正するように続けた。


「例の近接市で汚染水問題を訴えてる人達の中に居たんですよ」

「あああ!」



 偶然なのかそれ故かと予想外の所からの証人に、また倉庫の時の様な罠の可能性を含めて慎重な考えが必要だと気を引き締めるが、何処までも広がる悪の輪が二瓶達を嘲笑うかのように彼方此方で邪魔していた。


 そして、その汚染水を訴えてるのは透子達が棲む街だった。


 二瓶は藤そして細井の顔を浮かべまたかと天を仰ぐが、ため息と共にまた繋がった事に巡り合わせと似た絡み付く悪の諸行への怒りを力に向き合う気合いを入れ直した。



「信用度は?」

「あの訴えてる人達は汚染水を別件にする為かもしれないですが、発注者の名前は確かと」


「なるほど、そうだな先ずは裏取りしてみないと次に進む手が無いか」

「ええ」







【天扉岩地区】

――GASAGASAGASA――


「うあお、何か居ます!」


 管理棟の庭で呑んでいた茶尾が慌てて椅子から立ち上がっていた。

 後ろの方から草木が揺れ動き何かが去って行った。



「うはははは、そん位で酔っ払ってっと喰われっぞ」

「ははははは」



「茶尾コッチに来な、山に背中向けてたら本当に襲われるかもしれん」


「えええ、先輩それ先に言って下さいよ」


「いや、馴染んでたからお前が営業なの忘れてたよ」



「そんじゃ、俺等もアンマ酔っ払ってっとおっがねえからそろそろ開きにすっか」



 滝がそう言うと役場の関係者も猟銃持ちも皆片付けだした。


「手負いの熊かあ」


「あ、違う違う怖いのは嫁、そういや滝ちゃん娘っ子さっき帰って来てたぞ」


「やべ、また愚痴愚痴言われるわ」


「スガオも帰って来てたってよ」

「そりゃ心配だろ熊来たって聞きゃあ」



「ほれ、さっきの熊出た家の」

「ああ」



 茶尾がボケーっと聞いていた顔を見られて説明されたが、何の話だかは良く判らないままに山から吹く冷たい風に酔いが醒め皆と共に片付けをし管理棟の灯りは消え、静かな川のせせらぎだけを響かせていた。


 


 交差点を制御する者


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