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52〜対峙の芽吹き〜

 手出し無用の悪癖



――KATAKATAKATA――


 未だ迷いが残る中。モニターから目を離しハンガーにかかっている楓香が自分用に作った服を見ていれば差は歴然だ。

 既に向上している縫製技術、このまま透子のデザインを使って楓香に作らせて良いものかと。


 しかしスグに一枚売れた実績が邪魔をする、それも八千円もの値をつけて……


 価値とは人が付けるもの。

 人が織り成す人間模様に楓香を織り込む事だけを考えるとスンナリと答えが出ていた。

 迷いが無くなると答えも探し物も出易くなる。

 人生を河川に見立て、川幅を絞った急流に乗りだすかの如くに、モニターに目を戻した零は遂に見つけだした。



『…ひーほー…』




――KATAKATAKATA――



「まさか、コレか?」


 資料を粗方見終わった藤がパソコンで確認していたのは昔の自動車工場の跡地に関する不動産資料に照らし合わせる為に、自動車工場のスグ横を流れる河川の過去と現在の地形図を開いていた。


 デスクには水質汚染検査の資料と廃止になった井戸汲み取り取水施設の水質管理記録。


 工場跡地には先ず病院が建ったが、それ以外の土地は宗教法人が助け舟を出している。

 そこに問題は無く、寧ろ突然の工場移転に市や不動産が慌てた事が伺える。


 つまり問題は工場移転の時期の方だった。


 工場移転の話が出る直前に横を流れる河川の工事があり、その工事はミスにより粘土層を掘ってしまい河川の水が地下に流出。

 それからひと月もせずに今度は工場よりも上流部で同じミスにより十数年間も下流の水量が無くなるが、そこから川底の工事が続く。

 井戸水汚染はとっくに発覚していたのに井戸汲み取り取水施設の廃止はその二十数年後。


 自動車工場の移転先は金皮県である。


 当時その移転を、私が県に連れて来たんだと豪語し自身の成果として売り文句にしていた知事はその後、肝心な予算の話を覆い隠し目くらましに煙草叩きの禁煙条例で県民を分裂させ公営公益公団に車や薬物と様々な利権を立て続ける。


 そして市や企業と博覧会の横領で借金を作り、その返済にグリーン税という変則増税を決めた挙げ句疑惑から逃げる様に参議院となっている。

 この井戸取水施設廃止の直前には水道水の海外への売り込みに、グリーンを基調にして選挙を行なった知事と手を組んでいる。


 あまりにもタイミングが出来過ぎていた。


 当時それを調べていたのは、藤が持っている資料を作った細井だ。

 それと今回の件に何があるのか検討もつかないが、二瓶からの話に藤は思う所の可能性に気付きだしていた。

 そして、確信の持てぬまま二瓶とは別に、真の為にも透子の為にも動き出そうと電話をかけていた……



――PURURURURU――


「お、マサ! 久し振りで悪いがちょっと調べて欲しいんだわ……そ、細井に絡んでるかもしれんのが今狙われとる……詳しい事は追って、また昔のアレに入れとくから頼むな」


 電話を切り細井の最後の資料に目をやる藤は、そこに書かれた暗号の様な数字に何が隠されているのかと考えていた。

 今回の件が答えの鍵か、それとも……








 男は近くのドラッグストアに駐めた車の中から確認の電話を入れていた。


「アレは胡唆と同棲してるんですよね?」

「ええ、内縁の妻」


「一応こちらの影は見せときましたけど、早いですよ。あの手慣れた感じは異常です」

「そお、この件で娘達を巻き込む事だけは避けないと。あなたも気を付けなさいよ」


「勿論、あなたからの話ってだけでも異常なのに、そちらの内部事情に首突っ込むなんて思っても見なったですよ」


「じゃぁ暫く、任せますよ……」

「はい」

――PIPU――




――PURURURURU――


「泉ちゃん正解」


三太(みた)の読みも正解だったな」

「ふひっ」


「まぁコッチの方が先を行ってるのは確かだな」

「うん先手必勝でしょ」


「殺してやろう」

「まだだよ」


「早く兵器(アレ)コピーしろよ」

「うん署の連中も動かしてやろうよ」


「またか、本物のカメラつけられてたらアウトだぞ」


「あぁセンサーライトね、でも犬嫌いの話でみんな信じてたじゃない最新カメラだって」



「ふんアイツら馬鹿だからな」



「で、僕等は子供達の為に悪い奴をやっつける良い人だ」









長林製菓(ながばやしせいか)駐車場】

 高足が車に紙袋を入れると沢沫が早速手を入れ中身を確認していた。

 その意地汚い姿をミラーで見ていた遠藤に、横に乗った高足が発車を促した。

 暫くして数え終えたのか唐突に顔を上げる



「高足、数えたか?」

「いえ」


「これで例のまた買っとけ」

「ハイ」



 遠藤が見ると高足は頷き笑っていた。

 あの感染症以前は違法薬物の買い付け金に転用していたが、感染症からは偽薬の買い付けに代わっているのは知っている。

 それを調べようにも薬に関しては全て高足が行っていた為、取引相手も販売ルートも未だに判らないままだった。



「なんだ遠藤、興味津々だな」


 高足は先程のトイレの恨みか遠藤に対していちいち突っ掛かる様な態度を示している。

 十数年前は、高足の運転する車のナビから違法薬物の保管場所を知る事が出来た。


 縦巾(たてはば)市内の埠頭の倉庫に立ち入り捜査する事は出来たが、既に廃棄の頃合いだった上に何故か暴力団の物とされ、寧ろ沢沫にとって都合の良い処分先になっていた。


 しかし現在は偽薬を製薬会社との契約と国会議員の承認により正規ルートで出回っている為、偽薬が偽薬である証拠が必要だった。


 では、その金で何を買い付けるのか?



「いえ、隣の観光バスから覗かれないかと」

「おお、もう高速だったか」


 


 無様な御用も無用

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