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05〜出会いと別れ〜

 吹き荒れる邪風に話の流れに向けて船頭の舵取りを。


「脳、腸、脳、腸、脳、腸、脳、腸、そういう事……なのか?」


――KYURUKYURUGURURUNN!――


 自分と腸女を交互に指さし呟いた事だけで理解したのか自分の頭を抱える腸女の顔が驚きの顔に変わり悶えるのを見て、透子は思っていた。


〈頭の中から鳴り響く腹……頭の虫。こ、これこそ本当に 頭の中に虫がいる! ってヤツじゃない?〉


 と、密かに面白がってる自分に対し、良いのかこれでと自問し苦悩するが自暴自棄でもないのに呆気と不安と色々有り過ぎて馬鹿馬鹿しくなってるのか、現状を受け入れ始めている事に気付きつつあった。


 そのせいか、頭から鳴る腹の虫は今後の事を考えるに問題があり過ぎる!

 との判断に至っていたが、解決策を思案中に腸女を見ていてスグに気が付いた。



「あっ……あんた口閉じてみ」



 ポカーンとする腸女がゆっくりと口を閉ざしていくと音も小さくなっていき、スカシっ屁の如くまでに音が静まった。

 すかさず腸女が喜び勇んで何かを叫び口を開く


――あKYUりRUがKYUとRUこれGUでRUてRUあNN!れ?――


 何を言わんとしてるかは解るが何と言ってるかは判らない、けれども分かったのは口を開くと腹の虫が漏れるという事。

 とりあえず透子は制止する様に手を出し頷いた。



「口は閉じとけ……」


 ため息にも似た一呼吸の後にキッチンに目をやり立ち上がると、口を閉じしょぼくれ顔の腸女に哀れみに似た笑みを向け口を開いた。



「あんたの食い残しで何か作れるか探してあげるから、そのまま待っとけ!」


 そう言い残しキッチンへ向かった。

 見れば見る程の流し周りの惨状に、怒りが再燃しそうになるのを抑えて良く見ると、何か共通点が有る様に思えるが、先ず美味しくて食べ易い部分だけをかぶりつき次から次へと手を出したのは間違いない。


 しかしながら梅干しのタネや大根の皮やが綺麗に捨てられ、チーズやヨーグルトや豆腐のケースは舐めた様に綺麗に食べられている事は引っかかるが、コンニャクと一緒に炭酸割り用の重曹やクエン酸まで食べていた痕跡を見て困惑する。


 今は考えるよりも何が残ってるかを確認しようと冷蔵庫を開けたが、ビールやチューハイやの酒類には一切手をつけていない。


 ハムは喰われたがソーセージや生肉生魚に卵や牛乳は残っていて、生野菜も大根とトマト以外は残っていたが玉葱が三個位減っているのに皮のゴミは無い……


 そして封も開けずに椎茸舞茸平茸エリンギなめこ等のキノコ類と獅子唐や唐辛子や胡椒等の調味料等が全てごみ箱に投げ捨てられていた。



〈…………まさか?〉


 探偵気分に浸るのは後にして、今は料理研究家にならなくてはならない!

 否、ならざるをえない音? 声? が鳴る!?


――なKYUんRUかKYUでRUきGUそRUおRUでRUすRUかぁNN!――



〈ウザい……あ、ひょっとしたら!?〉


 と、透子の頭に天使と悪魔が宿った瞬間!





――PPAAAAANN!――



 雷の様な音と光と共に衝撃がニ人の背中を襲う!?


「ぐはっ!」

「げばっ!」

「なっ!」


 何が起きたのか解らないが背中に叩きつけられた様な痛みが残る。


 ハッとした透子は腸女を確認しようと部屋に戻ろうとしたら向こうから不安そうに顔を出して来た。

 ニ人の震える目が合いスグにお互いが同じ衝撃に襲われた事は判ったが、これが腸女の仕業ではないのも明らかだった。



 では、誰の仕業なのか……


 そしてもう一つの違和感も。


 そんな思考を巡らせていると、左の肩甲骨に違和感を覚えふと目を向けるが背中が見えるはずも無い、腸女を跨ぎ部屋の鏡に向かった。



「はぁぁぁあっ!?」


 呆気と理解不能な理不尽さに対する抵抗を叫ぶ透子は更に目を細め左肩甲骨を凝視する……


「羽……なのか!?」


 それを羽と呼ぶには余りにも小さくガム一枚程度の幅にニ枚の羽根と翼、とても飛べそうには無い。

 が、更に鏡に近付き目を凝らした透子の顔が急に思考を巡らせ始めた。



 その下でしゃがみながら透子と同じ様に自分の左肩甲骨を見ていたが何も無い。

 思い当たったのか向きを変え右肩甲骨を覗く腸女の顔が縦に伸び、口を大きく頬に手を当て……



――ぶKYUふぉRUぉKYUぉRUぉGUぉRUぉRUぉNN!――



 何処かの絵画の様に叫び、透子と同じく思考を巡らせ始めた……

 が、透子とは違い何か思い当たる節はある様で、口を閉じチラチラと透子の羽を確認してはバツが悪そうに顔を歪め出した。




「ぁあもぉっ! 訳分からんっ!」


 頭を抱え悶絶し出した透子が不意にバツの悪そうに見上げる腸女と目が合った。

 途端、コイツが何かを知っている事は明らかになったと同時に冷静さを取り戻した。



「おぃっ! またミイラになる気か?」



 大量の汗を垂らし必死にとぼけようと目線を逸らし口を尖らせる腸女に、怒りよりも先に呆れが来てしまっている。

 この超絶絶後な状況下のたかだか数時間で呆れなのか飽きたのか目の前の腸女に対し、優しさ迄もが芽生えていた自分のお人好し感がくすぐったく諦めにも似た納得をしようとしていた。




 この、天使と悪魔の羽の正体を確認する為に……


 

 邪風がまだ続きますので、しっかり体を固定して。


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