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45〜嘘の使い道〜

 男々しい雄叫び、雌の叫びは女々しいか?



「はっ!」


 突然起き上がると慌ててキッチンに向かった透子に、楓香と零は言葉も出ずに見ていた。

 寝起きのトイレかと思う様な慌てぶりに……


――GASYANNGATYAGACHAJAAAAAAH――



 寝てから二十分と経っていないが、零を壁から剥がし体のマチ針をケースに戻し終わってようやく図案に向き出したばかりで、透子が起きてまた何か起きるのかと警戒する二人?


 それをよそに透子は鍋に水を張り湯を沸かし始める。料理だと気付き安堵するのも可笑しな話だと顔を見合わせ緊張が緩みお互い作業を再開しだした。


 まだお昼御飯を食べていない午後の三時半。



 湯の沸き具合を見つめる透子の目の奥に計り知れない思いが溢れていた。


 少しの眠りが少し前に見た夢の内容を舐めた様にチラつかせ、透子が大事に閉じていた記憶の扉の向こうにある大切な記憶が何かに触れたのか、向こう側から騒がしくこじ開けて来るのを抑えようと必死に別の何かに集中したいのもあってか玉ねぎと人参を半分にしみじん切りにし出した。


「そうだ、アレ間違ってたんだ……」



 前回、八合目で止まった理由。せっかくデータ部に調べて貰ったあの【富士山パスタ攻略案】の攻略案トラバースルートで挑んだが、思いのほか苦戦した。

 最初の予定とズレがあった、長林製菓の計算式を使って割り出すのに順番は関係無いと思われていた。


 ルートつまりコース料理は順番通りに出るから関係が有ると考えた様だが、透子が考えた攻略案はコース料理としてでは無く単純に分量質量計算された物。

 その為に六合目と七合目の料理が入れ替わっていた。

 食べる順番は食べる量に影響を及ぼす事を思い知らされるのは腹に溜まりやすい粉物故か量が故か気持ちの入れようか。


 ボンゴレに次いでナポリタンと連続パスタと思って準備したが、しめじいかソテーが間に入っただけと捉えていたが、ソテーを食べている最中に最初のパスタが胃で膨らみ大好きなナポリタンを食べている中で満腹感が顔を出していた。


 あさりのワインむしを食べる頃には腹は膨れ、まるで食後に口を潤すワインそのものの様に胃を優しく閉ざした。

 運動部や大食いではない者にとってはそれが普通だ。



――POKOPOKOPOKO――



 次の魚介全部乗せ(トマトソース)パスタが完食出来れば九合目だが富士山グランプリの登山計画書を出すに辺り確認しないといけなかった。

 そして自分の……いや、二人の胃袋を理解する為に今パスタを茹でて確認してみようと三人前を湯に落としていた。



『…ひーほー、カレーか…』


 フライパンにみじん切りにした玉ねぎと人参を入れ玉ねぎが透明になったらひき肉を入れ塩胡椒を振り、以前飲みかけでやめたワインを料理用にした物を肉が浸る程度にかけ

 バターをスプーン一杯とトマトジュースにシチューの元を入れ溶き煮詰めて水気をある程度飛ばした頃に茹で上がったパスタを皿に出し、フライパンの中身を上からかければ横着ボロネーゼの出来上がり。



 透子は出来上がった横着ボロネーゼを見つめ後悔の念を持たぬように決意しチーズとパセリを振って部屋に持って行った。



『…ひーほー、ミートソースか…』

「ボロネーゼ」


「同じ、一緒」


「まぁ、そおだけど……」



 零の皿をクローゼットに置き楓香の前に座ると、どうぞと手を返した。


『…「いただきます…』」



 そう言い食べ始めた楓香を前に透子は目の前に置かれた自分の横着ボロネーゼに手をつけずただただ楓香の食べる姿を見つめていた。

 半分程食べた所で楓香も気付き何か言おうとするのを制止するように


「良いから良いから、どう、美味しい?」



 と箸を進めさせた。楓香が食べ終わる頃を見計らっておかわりを勧めると自らの皿を出す透子。

 さすがに楓香も不審に思いそっと手を延ばすがさらりと交わされた。



「美味しそうに食べてるの見てると食べた気になるって言うでしょ。良いから」


 と勧めた透子は勿論確認だ。

 しかし予想とは裏腹に何も感じなかった。予想では楓香が食べれば自分にも満腹感が襲うのではと思っていたが何もない。


 むしろ見ていて体が火照り腹が減ってきたのを我慢する程に、水で誤魔化そうと飲み込んだと瞬間だった。




――BAGONNN!――



 途端に襲う瞬間的な満腹感に焦り戸惑う透子に楓香も(むせ)る。が、すぐに元に戻った。


「なにこれ、急に物凄く」


「ん、んん、多分、反動」


『…ひほ、やっぱり実験か…』

「確認よ、別に悪い事はしてないでしょ! って反動?」


「うん、私だけが沢山食べていた状態から急に胃の大きさを整えたから」



 つまり透子と比較して楓香に比重がかかる様に胃の大きさを整え治したと楓香は推測していた。

 透子は考えられる予想を持って楓香に確認する。


「今、私にも感じたアレ位お腹いっぱいなのよね?」

「うん」



 その答えに何も言わず楓香の皿を奪い、残りの横着ボロネーゼを食べだした透子は笑っていた。

 そして尋ねる。


「今私が食べてる感じは楓香にも解るの?」



「ふむぅ……判んない」


 透子は勝利を確信したかの如く両手を突き上げ天を仰ぎパスタを(すす)り、楓香の顔や部屋中に横着ボロネーゼの拭き取り難い汚れを撒き散らし、怒られた。



――PURATOONN!――


「すいません」


 


 秤、分銅はちょっとずつ載せましょうね。


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