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34〜戦場の選択〜

 狙う者と狙われる者の間に戸一枚




「どうも! ご注文はお決まりですか?」

「亜子、三人で登山しても」

「ああんっ?」


「駄目だよ真……すいません亜子さん」

「鈴木さんは! お決まりですか?」

「はい、ナポリタンで」

「……ん、透子と同じ……か」


「何か?」

「いえ、素敵です」

「亜子?」


 恋路と食事の交差点、すり抜け追い越し煽りに注意。茶尾と鈴木の話も済み、藤真の虚しい疑問符を残し亜子は注文も聞かずキッチンへ向かって行った。


「亜子、俺等の」

「しょうゆしめじあさりとたらこいかでしょ」


 登山しない日のお決まりの注文に亜子は聞かずとも覚えていた。それ程に二人はこの店に通っているのだと鈴木も理解した。

 が、当の藤真は理解出来ていない。


「俺、今日は違うの頼むかもしれないだろ」


 それでなくとも鈴木の前で揶揄され苛つく中での面倒臭い奴感丸出しの一言に、亜子が返す



「では2倍盛にしておきますね」


 振り返る亜子の笑顔に茶尾と藤真の二人は固まり青ざめ、自分のしてしまった事の後始末を思案せざるを得ないと心得ていた。

 しかし、亜子の笑顔の裏の怖さを知らない鈴木がドン底に突き落とす。


「二人はあの店員さんと仲いいけど、茶尾さんの彼女なんですか?」


「違うわっ!! いや、違いますよ鈴木さん。絶対に! そうよね? チャっビー! トーシン!」


 はち切れんばかりの笑顔に勘の良い茶尾は冷や汗を垂れ流し縦に振るが、理解出来ていない藤真は鈴木の掘った穴を更に掘り地獄の蓋をこじ開ける。


「亜子と? ないわ、あれはない。ファットと二重顎なんて子供の時から……」


 藤真の顔の隣にキッチンへ向かった筈の亜子の顔が音もなく現れた。

 藤真はハッとした。

 以前にも似た事があった。しかし記憶がボヤケて思い出せない、何故?


 それは……


「あれ? トーシン、外を見て、ちょっとアレ一緒に確認しようか」



 そう言って藤真の腕を背後からガッチリホールドして店の外へと連れ去った。理由は聞くまでもないだろう


――BOKKOBOKO――



 三分程で戻ってきた藤真はスッカリ真人間の如くに粛清されていた。



「やーね、今そこで野良(イノシシ)がトーシンにぶつかってそのまま走り去っていったわ、怖い怖い」



――CHOTOTUMOUSINN――







【天扉岩地区】

 月明かりに浮かぶ川沿いの山村には数件の家がある。その中の狭い窓から灯りが漏れる古くから在る木造平屋建ての家を、山の陰から周囲を警戒しつつ覗く影があった。


 覗かれている家の中から村の住人らしき主婦が二人出て来ると家主と思しき女と何か楽しげに話し、酒が入っているのか老齢か、足元がふらつくのを器用に坂道に合わせ地元ならではの酔いどれ歩きか手を振りまた明日と坂を上がって行く。


 二人の姿が月明かりで見えなくなる程に遠ざかった処で覗いていた影が動き出し、川沿いの道路まで出て月明かりに身を晒した男が家を真正面から確認すると、スグ隣の蔵に目を向けた。


 蔵・倉庫・納屋といった所から物音が鳴っても山村の人間は熊を警戒して出向き覗き込む様な事はしない。

 まして蔵に鍵を掛けるなんて稀だ。


 翌日音を立てて追い払い確認するか、猟銃を持っていれば別かもしれないが、その程度だから泥棒や殺人事件も稀な田舎や山村の事情は犯罪者には都合が良く、近年の外国人犯罪も田舎をつけ狙う事件が増えている。


 田舎の山村に盗みに入る程の小リスク小リターンでも犯罪に手を染める様な貧しい国になってしまった証拠かもしれない。


 この男もまた田舎の事情を知る犯罪者なのか、二人を見送り鍵の開いたままの玄関には見向きもせずに、隣の蔵に侵入しようと蔵の戸に手をかけていた。




――KACYAHNN!――


「たっだいまぁあああ……」


『…ひほ、…』

「ただいま……あ、」


 玄関で透子と楓香の下着を持って歩く零に、気不味く固まる三人?





 ……話は二十分前に戻る。



『…ひっほ、あぁ糞、たかだかカードの偽名だ…』


 バラエティ番組なのか夫婦の有り様で仲直りの秘訣と題しての内容に反応する零、酔いも落ち着いて来ると周りが良く見えて来た。


 部屋に散らばる二人が出かけに脱ぎ捨てた服。

 テレビから流れてくる声に、少しの掃除や手伝いがキッカケになる事も……等と聞こえたかの様に零が奮い立つ



『…糞、雌豚共が、仕方ねえ、序でにこれも…』


――DOTAAANNDOTADOTA――



 脱ぎ捨てた服を洗濯籠に入れる前に、新しい服をだしといてやろうと登ったケースは零の酔いざめの体ではバランスが取れずに倒れてしまった。


『…ひ、まった…』



 静かに畳みケースに戻す姿は健気な主婦、昭和の映画さながらに貧乏ながらも子供達の為にと気丈に振る舞う……

 いや、人形は所詮人形だった。


 ようやくケースが粗方片付き、脱ぎ捨てた服を洗濯籠に入れ、後は下のケースから飛び出た下着を戻せば……


――KACYAHNN!――


 ……そして今に至る。




「おい、徹君よ、私達の下着を持って何をしてるんだい?」


『…ひほ、お前等の為に脱ぎ散らかした……下着、は…違うな…ヤべ…』


「これが悪い事?」

「そうね、これは明らかに悪い事よ。だから罰を」


「相手の気持ちは考えなくて良いの?」

「あ、……考えて見る?」


「えへへへへへ……かな?」

「そうね、でもどちらかと言えばうひゃひゃひゃひゃ、じゃない?」



『…お前等いったい何を言って…』



「うへへへへへ……」

「ぐひゃひゃひゃひゃ……」


『…な、何だ?…変な宗教にでも洗脳されたのか?…ヤメ、よせ…ひほ…』


――UHYAHYAEHEHEGHYAHYAUHEHE――



『…ひほぉぉぉぉお…』


 


 人は尊厳の元になる知を生み出し

 人を正義と悪で別け隔て

 悪は罰して正しい人間に導き選別する

 それが各国の古の神々をも退け自らを教祖とし崇めさせるカルトと呼ばれる新興の信仰

 この話には粗関係無いと思いますが(笑)


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