19〜変化の決意〜
今回は全編 透子目線のお話です。
「駄目、返して、透子ちゃんに言っちゃうよ」
「バーカ風邪で休んだヤツに言えるもんなら言ってみろ! そもそも揚げパンの日に休むファットが悪いんだよ!」
「でも、まだ透子ちゃん来るかもしれないじゃない」
「午前中休んで給食の時間だけ来る訳無ぇだろ! そんなバ……カ……が……」
――NAZEKOKONINAZEKOKONI――
「……ぜぇハァぜぇハァぜぇハァ……」
――KITAKITAKITAKITA――
「透子ちゃん!」
「どすこぉおおおいっ!」
「グはっ」
「出たぁファットの張り手」
「ナイスキャッチ! 透子ちゃん」
――DETADETADETADETA――
「じゃ!」
――MAJIKAMAJIKA――
「……って帰るのかよっ! アイツ揚げパンの為だけに来たのか?」
「いや、良く見ろ! 先生用に置いといたのに揚げパン以外全部食ってあるぞ!」
「今日も流石だな……それにアノ張り手」
「これで何勝目だ?」
「ファット! ファット! ファット! ファット!」
「クソ、お前らファットに声援すんじゃねぇえ! お前何かに……覚えとけよファットぉおおお」
――YUMEYUMEOTIYUMEYUME――
「誰が、ファットじゃコラぁあああ!」
「透子?」
「え? あ、おはよう。って夢、て、夢じゃないのねアンタも……零も#」
大きな寝言に驚き見つめて来る楓香の愛らしい小顔の先で、クローゼットを夜中の内に堂々と占拠しだした零がハンモックでスヤスヤと寝ているのが寝起きの透子の目に入る。
何となく腹立たしい光景に眼を凝らしていくとハンモックに見覚えが……
「ん? あれって…………私のパンツ!?」
「?」
『…ひーぽー…zzz…ひーぽー…zzz…』
〈あ・の・ヤロー#ちょっと気を許したらコレか! というか何か……何か……〉
透子のデカパンがハンモックとして見事なほど人形にフィットしているのが解せずも認めてしまいそうな自身の葛藤に寝起きの頭では纏まらず諦め、大きなアクビで気合を入れた。
「あぁ、もお! 寝起きから面倒臭ぁあ……で、楓香は寝れたの?」
「うん、透子の寝言が始まるまでは」
――MENGOMENGOMENGO――
「よし、朝食を作って進ぜよう……」
誤魔化しきれずキッチンに向かうと、流しの肉丼の空箱を見て尊んだ後に洗い出した。
透子の予想はハズレ楓香はソーセージも特別問題は無く特に食に関しての話は無かったが一応確認しようと顔を向けると。
「透子が食べれる物なら何でも大丈夫」
「あ、うん〈読まれた? ……寝てる時か……〉あんまり見ないでよ!」
返事はないが読んだのなら理解出来るだろうと思い良しとした。朝から食べる物を気にする程の拘りは無いが満たしたいので結構作る。
食パン4枚
生姜焼き用の豚肉4枚
とけるチーズ
塩・胡椒・ポン酢・マヨネーズ
玉ねぎの輪切り少々
レタスもしくはサラダ菜2枚
生姜焼き用の豚肉4枚を油をひいたフライパンに並べて塩胡椒を振り弱火でジックリ火を通していく間にパンにマヨネーズを塗り胡椒をかけ2枚合わせてスリスリと両面に馴染ませ片側にとけるチーズを置いたらトースターで二分焼く。
フライパンの豚肉を返して生の赤味が消えたら火を消しポン酢をスプーン小さじ一杯程かけフライパンを回して肉に馴染ませたら放置し、レタス類を洗い作り置きの玉ねぎを出し準備する。
パンが焼けたらチーズの無い方に玉ねぎを敷き肉を置きレタス類を被せたらチーズのパンで蓋をする。
「楓香の出来たぁ」
皿にのせ楓香に渡すと冷蔵庫のリッターペットボトルの無糖ブラックコーヒーを半分程コップに入れ水で割って【アメリカン……風】と称して渡した。
「先に食べてて……」
「良いの?」
「良いから良いから、作った人には特権があるのよ」
「? 解かんないけどお先に、いただきます」
そう言って食べ始めた楓香に満足を感じ、トースターへ同じ様にマヨネーズを塗り合わせたパンを入れ一分半。焼けたら具をのせ皿には置かず、フライパンの上で食べ出した。
パンの耳をむしりフライパンに残った汁を拭き取るように浸け、少し焦げたポン酢の香りを纏った塩味ののったラスクの様な味わいが口に広がる。
メインの肉にはまだ口を付けていないのに、まるでサンドウィッチ用のパンの如くにパンの耳が消えて行きフライパンは洗うのも楽になる程拭き取られていった。
持ち手の下の部分だけしか耳がなくなる頃にはスッカリ汁は拭き取られ、ここぞとばかりに外はパリパリなメインの肉が顔を出すサンドウィッチを頬張り出すと肉汁とマヨネーズとレタスの水気がパンの下から溢れ出し、フライパンに焦げたパン粉と共にポタポタと滴り落ちる。
メインの肉の部分 を食べ終わる頃に下の耳を剥がし、またフライパンを拭き取るように浸け食べ出し、最後に残った肉の入った一欠片を放り込み、味わい深気に飲み込み一息つくとアメリカン風コーヒーを流し込んだ。
「ふぅう、ご馳走様でした」
――SYOUGAYAKISANNDO――
「特権……」
「あ、何よ、美味しいのよこれ」
「うん、凄い美味しそうに食べてた」
「ま、ぁね……」
いつの間にか食べ終わり皿とコップを片付けに来ていた楓香は、謎が解けた様なスッキリとした笑顔だ。
「ご馳走様でした」
「どういたしまして」
誰かと一緒に過ごす、こんな爽やかな日常がこの部屋に訪れるとは夢には描いていたが実現は希望的観測だと思っていた……
それが今……
『…ひーほー…良い匂いするじゃねぇか…』
「あ、」
『…何だその顔、俺の分は無ぇのか…』
「……駄フィグがっ」
『…この! 折角夜中調べといてやったのにその態度は何だぁ豚女!…』
「あぁ、もっぺん言ってみろ! デブ人形!」
『…俺、デブと、お前が作ったんだろが…』
「ストーーーップ!!」
楓香に静止され物凄く動揺した。良く考えれば自分の分身と呪いの人形との同居生活の日常……
「〈全然爽やかじゃないし、コレ日常になったら駄目なヤツでしょ……惑わされちゃ駄目よ透子〉うん、ごめん」
『…遊びの時間だ…』でした。
ぃゃ、すみません。えぇ、遊びましたとも。
あんなの料理じゃない? 違うの、透子の生活感を描き出す為に必要だったの……手抜きデブ飯を理解して貰う為で料理してる女を出したいんじゃないの、わかってぇえええ(笑)
次回『…遊びの時間は終わりだ…』てか(笑)