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13〜出会いと別れ〜

 外ですよ。

 動きますよ。

 出会いと別れ。

 ここからですよ。

 ホームドラマから?

 どんな話に進むのか?



「透子、これって……」


 ヘタりこみ下を向く楓香が問うのは勿論なりすましの件だ。


「あの子まだ生きてるかもしれないのにアンタは! 私、私の為にアンタはあの子にも……ごめんなさい」



「逆よ!」



 罪悪感と闘う自身への怒りもぶつけられずに謝り涙を流す楓香にエレベーターを先に降りた透子がキッパリと(さと)す様に応える。


「あの子が生きてる事に賭けたの!」

「?」

「勿論アンタの為にも私の為にもね……」

「何を言ってるの?」


「あぁ、うん。本物の楓香が何に狙われてるにせよ、生きているならココに居る楓香は誰? 奴等(アイツら)が狙った楓香とココに居る楓香どっちが本物の楓香か何て奴等(アイツら)にとってはどうでも良い事だろうけど、ココに居る楓香が何が目的で何者かは絶対に気になるはずでしょ?」

「あぁ、まぁ」


「そうなると何が目的で何者か判るまで迂闊に楓香を殺せないじゃない!?」

「……ああ、でもそれじゃあ」


「そうよ! 私達が危険に晒される」

「何で、そんな危ない事」


「アンタ、私と共有してんでしょ?」

「!」



「なら決まりでしよ!」

「…………もう、ズルい!」


「デブる! だっけ? アレとかアンタの指とかイメージとか何だか戦い用は有りそうじゃない。期待してるわよ!」

「…………」



「ちょっと、何でそこで黙るのよ? 悪い冗談はヤメてよね!」

「……デブる…………」


「え、あぁアレならちゃんとテーブルの上に置いて来たわよ」



「ぃいゃぁあああああ!!」


「え? 何、何かマズかった?」

「マズい何てもんじゃ、早く戻らなきゃ!」

「え、えぇ?」




 そう言うと透子の腕を掴みビーチサンダルとは思えない走りで猛ダッシュしていた。



「待って、待ってって……ストーーーップ!!」


「何よ、急がないと」


 透子は溜め息を吐き冷静になる事の大切さを問いかける。


「家、逆よ……」




――KAAKAAKAA――



「こんな夕暮れにビーサンで走ったら怪我するから。まぁアンタは治せるんだろうけど人前ではマズいでしょ? 慌てる乞食は……ってね! 小走り程度には急ぐから私に付いておいで!」


「うん、でも急いでよ」

「解ったからイクよ!」


〈考えてみれば土地勘以前に、この世界自体が初めてなのよね……イメージだけで良く……〉


 近道を選び駅を抜け、更に裏道を使って緑深い公園を抜けようとした所で透子が何かに気付いて足を止めた。




「何、どうしたの? 急がな」

「しぃっ! アイツ……」



 楓香を黙らせた透子も小走りで荒れた息を潜め木の影に隠れて睨む先には、あの隣の部屋から来た男達が公園のベンチの裏辺りから大きなバッグを三つ程引っ張り出して誰かに電話をしていた。


 その下でバッグの中から顔を出す女。


「あ、居た! まだ生きてる!」

「本当だ! 良かったぁ」


「どうやって助けるの?」

「さっきの……デブる……」

「あ、」

「あ、」


「クソっ! 他に何かないの?」

「他にって言われても……」



「あぁ、まぁそうよね。こんなスグに尻尾出すなんて私も思わなかったもの。あぁクソぉ……アイツ等にさっきの私に対する恐怖心って残ってないの?」

「うん、多分……」




「あぁ、こおなったら直球勝負よ! 私の張り手で……」

「えっ? 駄目よ、ちょっと待って……」



 透子が木の影から出ようとした瞬間、またあの時と同じ衝撃が襲う……

 脳がピキピキときしみ出し頭痛と目眩が襲い、身体中の力が抜け血の気が引き顔面蒼白に喉や肌は渇きピリピリとヒビが入る様で酷い耳鳴り……

 まるで電子レンジみたいな強電磁場の中に入れられた様な感覚……


「え、これって……あんたのミイラ化のせいじゃなかったの?」



 意識が遠退きかける透子に楓香が首を振る。

〈まさか、アイツ等!?〉

 振り返るとバッグの中の楓香に奥の男が何かを向けている。



「アレか? ぃゃ、あのバンの中?……どうすれば……」

――BATANN――

「……楓香? クソっ」



 後ろで倒れる楓香と前で拷問されている楓香、どちらも救えないでいる透子の目には無力感と悔しさともどかしさで抗い立っているのがやっとだったが、バンの中から出てきた男が公園の土に何かを突き刺した。



――BIBIBIBIBIBI――


「さっきと全然威力違ぇぞ! やっぱお前んとこの壁のせいだろ!」

「ウチのじゃねぇ自治長の……」



 何分程か? 倒れていた様で目を覚ますと同時に強烈な頭痛が襲う。


「クソっ、楓香?」


 横で同じ様に目を覚ました楓香が公園を指した。歪む目で振り返ると公園に紺のバンで乗り付けたスーツの男がバッグをバンに乗せるように指示している。



「アイツ、何処かで……」


――BEAAANN――

 バンのドアが閉まり男達が乗り込んだ。


「しまった! あ、ナンバー」


 スマホを取り出しカメラアプリを起動したが暗がりで距離があって全くピントが合わない。透子は慌てて走り出した。


「透子!?」

「あぁもうヤケだ! チッキショーーーッ!」


――BURURURUNN――

 エンジンをかけた男達に叫び声と迫る透子のシルエットがミラーに映り込んだ。


「な、何だ?」

「判らん、あ、いやさっきの?」

「違うだろ!」

「いいから出せ面倒は御免だ」


――GAKON!BUBUBU――

 走り出したバンに猛追する透子だがビーチサンダルの限界が来た。と、共に足がもつれる。


――KASYAKASYAKASYA!ZUTEEENN――



「イッたたたたァ…………床鍋公ゆかなべこうかい?」




「透子、大丈夫? もう、無茶し過ぎ! さっき私に駄目って言った事全部やってんじゃん!」


 走り寄って来た楓香が手足の傷を指でなぞり消してイク。


「……ごめん、なさい」

「まぁこの程度なら私が治せるからいいけどヤメてよね」


「ぃ、ぃゃ、ごめん。それよか、コッチは直せる?」


 怪我よりも破れた服を見て物凄くショックを受けている透子の顔がさっきより本気だったのを見て透子のセンスを思い知ると同時に、悟った楓香の溜め息に似た返事が漏れた。




「あぁぁぁ……」


 

 〜出会いと別れ〜はこれで終わりです。

 次回から新章スタートです。乞うご期待。


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