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127〜始まりの銅鑼(ゴング)〜

 呪いの記憶は輪廻転生?



『…あれって、こんな所だったのか…』



 零が地図に示し合わせた記憶には、その川の過去の姿に自然豊かとは程遠い汚染以前の汚水垂れ流しに工場排水から何から何までの油や洗剤や溶剤やの泡が浮いた灰色の川だった。


 時に車や冷蔵庫にテレビの家電や酒にビールの瓶缶や玩具と共にバットにグラブや靴までも、ありとあらゆる物が水に流せとばかりに川へ捨てられ、そんな死の川からの脱却へと踏み出した道半ばの頃の事……



「何が? 一々勿体振らずに言ってよ」


『…ひほ?…勿体振らずって……』



 段々と我慢の限界が短くなっている楓香のストレスを推し量るに、やはり明日出かけて貰うのは正解だったと納得も出来、思い出した過去の記憶から伝える必要の無い部分を削って語り出した零の話に透子も耳を傾けていた。



 何故なら……



『…この川の下流域、前のボディの時に居た所だ…』



 まるで昔居た所とでも言ったつもりか自覚も無いのか、零も削る部分にこれを含まず、透子の脳裏に響いたのは


〈前のボディ……〉


 いつから零は透子が作った練習人形の中に居たかの疑問が晴れた訳でもないのに、それ以前の疑問を自ら明けっ広げに語っているのだから当然の興味に化粧の手も止まる。



「懐かしいって事?」



『…いやっ、汚かったんだ。明らかに工場排水や車関連のオイルや油の類いが浮いて泡立って……』



 まだ過ぎった記憶の断片に何を思い出そうとしたのか、答えが出ずに考える零に楓香が問いかけを続ける。



「ここに書かれた地下水脈汚染の原因?」



『…地下水脈汚染。そうだ、渇水して、川底さらって…確か粘土層をどうこう…ん?…』



――KATAKATAKATA――


 思い当たったか零が確認に議事録を読み漁り始めたのを見て、楓香はスマホでの確認に戻るが、それが何の確認なのかも解らない透子には二人のやり取りに、自分が出ていた最中もこうだった可能性に驚愕していた。



 零のスキルは兎も角、楓香がそれをフォローしている事に……




『…やっぱりだ! 間違いねえ! こりゃあ、この沢抹(さわまつ)って政治屋が利権に欲を出して、自動車工場のとんでもねえ汚染問題を隠蔽するのに国の問題に挿げ替えたって訳だ…』



 楓香が手を止め顔を上げるとそのまま考えに上を向く。


 挿げ替えた国の問題とは何か、先程読んだ内容に国が絡むとすれば一つだけ。



「あ、さっきの米軍基地の……でも、その沢抹って人は得があるの?」



『…ああ、当時こいつは金皮県知事の選挙に出馬してる。都民の健康を犯しておいてテメェの手柄に汚染問題を隠蔽して、工場移転で金皮県に仕事を持って来たとか()かしてやがる……ん?…』 



――KATAKATA――




 検索の何かに目を引かれ、その記事を読み込む零の姿に苛つきが見える。


 余程の悪巧みか何かを他人がやっているのは許せないのか、自分より悪い奴等に正義心が生まれたか……



『…コイツ…隠蔽工作で都民の健康を汚染水で害して置いて、健康問題だとか謳って煙草叩きしてやがる!…』





「……それ、ひょっとして縦巾市(たてはばし)の禁煙ファシズムの事?」




 ようやく知った話に、透子は長林製菓の営業時代の老練社員を思い出し、その人が(こぼ)していた愚痴の言葉が口を吐いた。

 

 しかし、その煙草叩きから連想された縦巾市にまつわる顔に対する怒りの感情までをも思い出してしまった事で透子の顔は……



『…何だその顔?…』


「化粧途中だから、じゃない……」



 二人の視線に自身の感情が(おもて)に出ている事にも気付くが、零の手を煩わせる事無く自分が知ってるその政治屋達の悪行三昧の数々を伝えようと口を開けた。




「田中でしょ?」



 不貞腐れたような顔に怒りも伝わる透子の声に、零はモニターをチラ見して田中の文字にそれが禁煙ファシズム当時の縦巾市の市長の名前だと読み解けた。



『…ひーほー…』



 その上で、何故透子がこの全く関係無い金皮県の市長の名前に通じて怒りを露わにしているのかと、話の続きに耳を傾ける零。



「アイツ、沢抹(さわまつ)踏滋(ふみしげ)と田中宏のせいで金皮県は借金まみれになったんだから。交付金目当ての政党渡り鳥が車屋と……」



 一方で、透子も言いたくないのか触れられたくないのか言葉を選んでいるような語り口調に少し違和感を覚える零だが、話に出て来る内容の確認にネット検索していて深く気にする事はしない。


 それよりも……


 出て来る悪行三昧の数々を調べれば調べる程に、検索に出ないようにされていたり不穏に消されたホームページや掲示板やの隠蔽工作を図った痕跡から考えても、透子も知らない悪行がまだまだあるだろう事が覗える。



 沢抹が騒ぐ煙草叩きの記事と覚醒剤による反社会的勢力や宗教団体の事件記事が重なる時期と地域が縦巾市と、何かしらの繋がりがあるのは確かなようで……


 沢抹は当時またも新党起ち上げの票目当てにか、与党に近いがそれとは別の宗教団体に政治家名義で寄稿までしていたのが宗教団体のホームページに掲載されていた。




 不動産売買にも利権を絡ませたのか、地上げに譲渡と関連土地開発業者への関与を示すような違法建築をも合憲にとする改悪を、市民の為とし危険な丘斜面の開発を許可申請に強行している。



 例の車会社との利権にも、車の保険料値下げを目論み自転車には無駄な保険に加入させようと、自転車叩きの吹っ掛け裁判で脅しに億単位の賠償金を請求させている。


 しかもその後に沢抹は別の党へと移り、京都や兵庫の関西圏で保険屋利権を創り出し自転車叩きを展開し、自転車道では無く脅しに危険な矢羽根マークの車道を走らせ保険を義務化した。


 それは府県の財政から車道拡幅の新規事業を引き出す為で、結果として自転車叩きの保険屋利権に乗っかった府県は借金を背負わされていた事が数年後の今明らかになっているが、真実を言えずに別の借金として新たな無駄使いで借金を増やしている。



 一度利権に乗っかりうま味を覚えた議員や役所は、覚醒剤と同じくヤメられないのだろう事と同時に、真実を言えない背後関係を覗かせる。




 その目線逸しにも、吹っ掛け裁判や事件事故があまりにもタイミング良く起こる記事の数々に、都合の良過ぎる目撃者の証言。





 そおいった裁判に絡んで丘元の名前を見付けた零。


『…ひほ? これ、確か都議選に出てねえか?…』



 モニターを楓香と覗き込む透子が名前を見て鼻で笑う。



「それ、例の嫌煙NPOの代表」


『…ひほ?…』


――KATAKATAKATA――



 調べた事実に丘元と沢抹の利権互恵関係に確信を得た零が呆れ顔にため息を吐き、肝心な話をようやく問いかける。



『…で、お前はこいつ等と何の関係が?…』



 語り過ぎた事に気付き一瞬隠そうかと身構えたが、スグに覚悟を決めたのか透子の眼が変わる。




「……調べて欲しいんだけど」


 


 別々の調べに交わる悪漢。


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