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108〜勇気の一歩〜

 溢れる才は潰され奪われる国で嘲笑うは誰か。



――BOBOBOBOBO――



 丘元都議の選挙事務所に着いた田中は唖然としていた。



 自身の都議選の最中、地盤の選挙区に在る選挙事務所にすら顔も出さず、後援団体に任せ当の本人が不在。


 丘元自身が代表を務める縦巾市内の煙草叩き団体の事務所に籠もり、利益互恵関係にある医療団体に新たな目線逸しの煙草叩きで都議活動報告をメディアに報じさせ印象操作しようと探っていた。




 しかし、感染拡大時に丘元都議は感染対策として掲げたのは、感染者を罪人扱いし、感染者の行動を罰金対象にしろ等と……


 都議としてすべき病床確保や医療体制の整備もせず議員特権に旨味を覚え、庶民を上から目線で規制する考えを露呈し批判が殺到していた。


 応援する筈の都知事も、床鍋と国の金を横流ししていた自身の問題から追求を恐れ、病院で面会謝絶し籠もっている。




 その為、敗戦濃厚と読み応援よりも問題の余波を懸念した沢抹(さわまつ)の指示により、丘元の事務所に残る沢抹との関係を示す書類等の隠蔽工作に来ていた遠藤等と鉢合わせた田中。



「田中さん? 何やってるんですか不味いですよ、丘元都議は縦巾でテメーの事務所に籠もって何かやってますよ」


「いや、だって選挙中だろ?」


「ええ、まぁ私も驚きましたよ」



 丘元の選挙事務所に居たのは自身が代表を務める煙草叩き団体のスタッフと床鍋の面々だった。



 その煙草叩き団体とは、国が収集した煙草税等を含めた地方税を、地方自治体に分配する際に地方交付税から中抜きして賄われているNPO法人。


 丘元都議はそのNPOの法人費をも議員歳費の使途不明金扱いに混ぜ懐に入れている税の二重取り、そのスタッフは選挙事務所にまで転用され床鍋とも協力していた。




 当然、遠藤が驚いていたのはそのスタッフにだが。


 まさか、関係書類の隠蔽を指示され来てみれば、こうも分かり易い利益互恵関係を示す者達が集まり、目の前に居る事に。




 遠藤はとりあえずにと茶を取りに行った際、胸元のペン型隠しカメラのスイッチを入れて戻り田中に茶を渡し、誰にも見られてないかの確認とそれを濁す世間話に織り交ぜ田中が指示されたのは何かを訪ねていたが、目で物を言われた。


 それは床鍋に関連する何かを意図している。ならば田中が指示されたのは先日の床上製薬で出された抹消リストの件だろうと推測して話を切り、見送りに出ると……




 田中の車は事務所前の歩道に乗り上げ横付けされていた。交通量は少ないが、タイミングにより片側交互通行状態になっていた。



 マジか! といった顔で唖然とする、言うべきか否かに悩む遠藤。



 この悪癖はいずれ身を滅ぼす事になり、緩みにも繋がる。それは遠藤にとってはもってこいの話だが、今は沢抹の指示でこの事務所で顔を合わせている。


 ここで注意しなければ、こちらが後に沢抹から文句を言われ信用を失う。悔しいが注意せざるを得ない。



「あの、その駐め方はマズいですよ」


「何が? あ、そうだった」



 普段は運転手任せにしていたからか、自分で駐めるのが久しぶりでそこまで注意が行かず、思い出したか焦りの顔を覗かせると急ぎ車を縦巾市内に向かわせた。


 普段からキチンとした運転を心がけ周囲に気を払っていれば、こんな粗末な路駐等には至らないだろう。そんな思いがこみ上げる遠藤だが、だからこそこの男は議員特権を失ったのだと理解し事務所の資料を胸元に寄せ凝視していた。


――ZIIIIIIIII――






 昼を過ぎ、藤の元へ一通の封書が届いていたが業務終わりに開けることにし、事務作業が進み目星を付けた午後の静寂に、引き出しの中から取り出し深く息を吐いた。



 そこに書かれた差出人名は、懐かしくも昔を思い起こすより緊張感を持たせる偽名。


 糊面に爪を入れると硬く閉ざされている事が判る。

 糊では無く特殊な接着剤……



「相変わらずの、仕事が早ぇなぁ」



 余程の内容が入っている事を物語る偽名と糊面に、一応の念を入れ窓のブラインドを閉じハサミを入れた。



 封書の中で未使用のカーボン紙に挟まれ開封テープを貼られたファイルを躊躇なく引き出せるのは、その意味も理解しているからこそ。



 ファイルの中には簡略的なメモのような手紙と写真が一枚だけ。


 物々しい封書には似つかない梱包が、何処かの過剰包装のようにも思えて来るのは、その手の事から離れていた時の経過から。




「……何だこれ?」



 見ただけでは意味が分からない写真を下にし、メモ書きの手紙を読み始めた藤……



「え?」


 写真を見返す藤。


 そこには端材の木片を適当に釘で打ち付けたのか、所によりセロハンテープで貼り付けられただけの、子供の工作程度の粗末な観覧車のような物が写っていた。



 メモと照らし合わせる藤。


 メモには極秘ファイルである事と共に【半永久的機関】とあり、これを所管した者達と隠蔽した者達の官庁名が記載されていた。


 しかし、これを奪ってきた者達が不明瞭である事と共に、記載されていた製作者の名前に驚きと合点がいって整理され過ぎたのか、頭の中が真っ白になる藤。



「狙いはこっちか……」


 相談された時は土地が狙いかと思われていたが、相手の素性が床鍋の面々だと判りその一部は沢抹(さわまつ)の問題にも絡んでいた。


 そして対象にされ追尾されていた事から、二瓶とのやりとりに……


 ここに来て細井を尊む繋がりから貴重な情報を得た藤だが、沢抹を追う仲間からこちらの情報を得るとは予想外だった。



「いや、重犯罪者から見りゃ動機隠しの良い言い訳か……」




 報告あり、夏休み自由研究発表前に確保。

 (元の管理状態悪く、釘に錆発生し木材が湿気吸い滑りも悪くセロテープが剥がれる迄の観察三ヶ月間回転維持)

 文科省より特許査定に特許庁へ移管。(議員指示あり)

 特許権剥奪作成禁止物認定により製作者内定調査案件。

 公安調査局に移管。

 所管議員へ帰還。

 全ての記録削除要請により現在不明。

 製作者【鈴木良彦5歳】



 逆算調査に何処から調べ始めたのかも記載されている。


 沢抹が一時やたらと関係者を特許庁へ向かわせていた事から、不穏な特許権の空きナンバー等を調べていた折に見付けた極秘ファイルの中にそれは在った。



 現在はログ復元でもしないと発見には至れないだろうこの特秘技術は、当時の沢抹の後援団体や利権互恵関係を考えれば欲する企業も複数思い当たるが

 使う事を良しとされないならわざわざ潰す為に手を加える必要は無い……



「まさか、この所管議員が沢抹とは別だとすれば、アレか……」


 不意に得た情報から何かに繋がったのは良いが、決して喜ばしくはない繋がりに、得体の知れない影を踏むように地団駄を踏む藤。


――DONN!PATANN――



 振動で倒れた写真立てを戻し手にした藤は、苛つく自分に笑いかけてるような細井から、そのキャンプ写真の中に映る透子へと目を向けていた。


 


 覗くも抜くも、紙面より電磁は易し。


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