102〜勇気の一歩〜
三本の矢は教え在ってこその力。
――GARARAANN――
「いらっしゃ……」
透子と藤真の二人で店に訪れた事に対して、亜子が何を言わんとしているのかが丸分かりな顔をしている事に、眉を引き攣らせる透子。
そんな二人の気持ちを知らずか、藤真が亜子に大事な話をするからと奥の隅席を指せば尚更に疑いの目を向けられる事に
「マジか!」
「何が?」
顔を横に振り捲る透子に意地悪な笑みを向ける亜子。
とはいえ、何故に透子が話さないのかに疑いを持たれているのだが、当然の事に違うと口にすれば何故かを話す事になるからだ。
亜子に話したい気持ちはあるが其処はソレ。
少しでも藤真に期待した事に自分が先に口を出すべきだったかとも思うが、果たして何と言っていれば避けられた疑いなのかに答えも見えず。
配慮と云う誤算の副産物にすらも見放され、亜子の恋話に染められた視線を受けて奥の隅席で対面に着いた藤真の自信を向ける顔に、苛つきとムカつきの感情がグツグツと湧いていた。
「今日は俺が驕るからさ、亜子」
「しょうゆしめじあさりとナポリタン大盛りね」
「ナポリタン大盛りのお土産二人分も!」
「え? あ、この前の友達の……って、お前帰ってまた食うのかよ!」
「食べないわっ! いや、食べるのか?」
零が、とは言えずに戸惑う姿は意地汚いのか頭が可笑しいのかの狭間に見られ、脳の異常を疑われる前にと話を切るように亜子に二人分を念押しする。
「二人分お土産追加……」
その圧に押される形で厨房へと向かう亜子だったが、何をどう勘違いしたのか閃いた顔で振り返り、透子と藤真を指差し確認して満面の笑みで去って行った。
「二人分ね」
亜子が去り、勘違いをさせた事にもされた事にも気付きもしない藤真が話を切り出して来た。
――――二十分程前【マサのスーパー裏口事務所にて】
「透子ちゃんさあ、信用してるから別に良いんだけど、コレで何するの?」
マサの質問に対して返答に困る透子。
零という人形が解析するのに必要だとか言える筈も無く、そもそもこれがどう解析されて何になるのかも抽象的に説明されて何となく理解した程度の透子に答えられる質問では無かった。
が、零からそんな時はこう言えと言われていた一言を告げると、マサは目を丸くして逆に答えられずに有無をも言わさずに了承していた。
その折、モニターに映る階段下で待つ藤真の姿に目を細める透子に、マサが気付き一言告げ返していた。
「あれでも心配してんだから解ってやれよ」
「あれでも、って、あれで?」
モニターを指し、嫌そうに苦虫を噛み潰した顔を向ける透子に、顔を逸すマサが苦し紛れに打開策を揚げる。
「とりあえず、ウチの駐輪場に変死体紛いの気を失った男を放置するな!」
「ん、……はぁあぃ」
そう言って階段に出ると、スマホを手に階下の藤真にカメラを向け、零に通知メッセージを送っていた。
――PERONN――
【友達の名前聞いて来い】
「うわっ、マジか」
少し遅い返信に応えも意図せず漏れた心の声が届く程に、藤真が階段を上がり近付いていた。
「何だよ、その対応は」
さすがにこの階段上から張り手をすれば藤真とはいえただでは済まない。
即座に別の絞め技に入ろうかと体が勝手に攻撃姿勢に身構えると、慌てた藤真が一段下りる。
「待った! 話があって来たんだよ。ウチの会長から伝言も預かってるし」
周囲を見回す透子、とりあえず駐輪場にも人影は無く安堵する透子に、自分の言葉が通ったと思い安堵の笑みを浮かべる藤真だったが……
次の瞬間!
透子の顔が目の前に!
いや、首根っ子を掴まれ階段の手摺りに背を付けると途端、その手摺りに通した逆の手が藤真の襟を掴み、離した首元にあった手の拳がみぞおちを押し付ける。
明らかに怒っているその姿勢の意味が、何故かとばかりに理解出来ていない藤真に耳元で静かに囁いて教えた透子。
「誰が何を聞いてるかも判らん中でこの馬鹿トーシンが」
「あ、……ごめん」
理解した時点で透子にも凡その想像はついた藤真が接触してきた理由に、名前を聞いて終わるだけでは済まない話になってきた事に零に確認をする為にと手を離すが、
また馬鹿な真似をしないかと気が休まらない。
「……ここじゃ目立つ。パスタ食べながらじゃ駄目?」
「ああ、この時間なら奥席空いてるか」
そして、現在に至る。
「ごめん! 昨日お前がマサさんの店から貰った物を……」
コピーして持ち帰って会長と二瓶に協力要請したが、その情報を何に照らし合わせて何を見出すのかも判らぬままに無駄に透子がしている何かを邪魔するだけだと説教されたとの告白に……
そのまま過ぎて返す言葉もない話だと、何も言わずにコックリ大きく首肯いて応えとしてみせた。
が、バツの悪い部分の話に自分にも説教が飛んで来そうな顔が浮かび、余計な事をしてくれた藤真に対して、既に説教は済んでいるようだが更成る説教の必要性を感じていた。
そんな折、ようやく零から返信が来た。
――PERONN――
【名前を聞いたら、その情報やるからで黙らせろ】
「どうやって!?」
「何が?」
反省のつもりか下を向いていた藤真が声だけに反応して聞いて来る。
面倒が増えるばかりで埒が明かない。
――PERONN――
【我が社は現在人手不足につき任せる】
「はあ?」
「ん、スマホか、誰?」
明かない処か八方塞がりの状況に、頭をかいて辺を見れば、亜子が笑顔でコチラを見て親指を立てて来た。
それは、どんな勘違いから生まれたグッジョブなのかも解らぬままに、首を横に振る以外に選択の余地も無く……
そんな透子の気持ちを知る由もなく、亜子は自らにも来る事を願う鈴木とのデートに、この店を使うとこんな羞恥心に晒されるのかと身震いしては
これを楽しめるように成れば大人の恋愛なのかもしれない。等と勝手な妄想に華を咲かせている。
三人の話の中心にありながら、まだ出ぬ名前が恋焦がれる亜子の為になるとも知れず、友が友の為にと三人勝手に動き出していた。
誤解の花道……




