こんにちは。メルアです。
…ふぅ。昨日も疲れたなぁ。
街から少し離れた、森の中の小さなお家に住んでいるので、朝はこんな感じで、日光と鳥さんに起こされます。
私は、メルア・アク・ヨハンナと言います。夢魔と言われる悪魔です。ただ、大多数の人が想像する夢魔とは違うと思います。えっちな事は興味無いですし。
「ぶぅ!ぶぅ!」
おはよ、ぶぅちゃん。
この子はぶぅちゃんです。私のペット、兼使い魔です。使い魔…うん、やっぱり魔族っぽくて良い響き。
使い魔の定番はやっぱり鳥さん、コウモリとかが多いんですけど、私はブタさんが好きなので、この子と一緒にいます。小さな羽がついてて、めちゃくちゃ可愛い。
さて…今日は確か…街で用事があった筈なので、お買い物ついでに行かないといけません。
ほらいくよ、ぶぅちゃん。
「ぶぅ!」
ぶぅちゃんは羽生えてるけど、飛べません。羽に対して大きく育ってしまったので、私の横をトコトコ歩いて着いてきます。可愛い。
私は夢魔ですが、人間を襲って食べたり、魔法を使ってイタズラを…とかはしません。イタズラは好きですけど。
その代わりなのか、生きていくために、夢の中のコア…エネルギーを喰べないといけないようで。あんまり説明は難しいんですが、モヤモヤした感じなんです。核なのに。
それが、人間の、特に悪夢の中に美味しいのがあるって最近私が発見してしまって、誰にも内緒にしているんですけど、私のなので。それで、たまに悪夢ばかり見てしまう人の夢の中にお邪魔して、ご馳走を喰べるわけです。
今日の用事も、それ関連です。
…ぶぅちゃんにご飯を食べさせながら、次第に町が見えてきました。
木で出来たゲートをくぐれば、到着です。
ここは〈ハウ〉という街です。
広くもなく狭くもなくといった感じですが、港もありますし、お城のある街も割と近いので良い街だと思います。なので近くに住んでいるのですが。
この街で取れるお魚と果物は凄く美味しくて、私たちの好物になってます。コアとは別腹です。
「ようメルアちゃん!今日もちっこくて可愛いな!よし、おじさんからプレゼントだ!好きな果物持っていきな!」
ありがとうございます。ではこのピンクのやつを2つもらいます。
「おっ、それは採れたてだからな、しっかり味わうんだぞ!ぶたさんもなっ!ハッハッハ!」
おじさんにお辞儀をして、先を急ぎます。
今のは『剣のおじさん』です。お名前は昔聞きましたが、わかりやすいのでそう呼んでます。
剣のおじさんはいわゆる雑貨屋さんで、なんでも取り扱ってるみたいなんですが、ずっと腰に剣を構えていて、なんか面白い人です。
俺は昔は凄い剣士だったんだぞーがははー、みたいな事をよくご機嫌で話しています。
…もしかしたら、本で読んだ争いの時のお話なのかな。今度じっくり聞いてみよう。うんうん。お勉強は大切。
私が初めてこの街に来た時、この剣のおじさんともう1人、女の人がお話してくれて、そのおかげもあって、今もこうして出入りしたり、近くに住んでいられるわけです。ぶぅちゃんにも優しいですし、この人達は私は好きです。
その時のお話も、いつか日記にまとめられたらいいな。懐かしいし、あったかな思い出です。
…私が色々思い出したり考え事をしていると、なんか下の方から凄い声が聞こえるような…
「ぶぅぶぅ!ぶー!!!」
…あぁ、まだ果物あげてなかったから、怒ってるのか。怒ってる姿も可愛いなぁ…
ごめんねぶぅちゃん、はい、どうぞ。
「♪~」
すっかりご機嫌ですね。さっきご飯あげたばかりなのに、よく食べる子です。私が与え過ぎてる気もしますが、食べてる姿が可愛いのでついついあげちゃいます。これが分かる人はきっと大勢いるはずです。うん、いるはず。
もうそろそろ目的地に着きそうですが、こんなに人とすれ違っても、皆私が夢魔…悪魔だなんて気がついていないのが不思議な気持ちです。そりゃ、羽とか尻尾とかは普段は見えませんけど、羽生えてるぶたさんといつも一緒だし…少しは分かりそうなんですけど。
お母さんはすぐバレちゃって大変、なんてお話をしてくれてましたが、なにが違うんでしょう。
…大人の魅力?フェロモンみたいなもの?
うーん…。私も少しは大人になっていると思うんですが、お母さんと比べると、やっぱりそういう魅力というものは…。
…やめましょう。考えていてすごく悲しくなってきました。
いいもん。私はぶぅちゃんがいれば。
気持ちが少し寂しくなってしまったので、ぶぅちゃんを抱っこしながら歩く事にしました。ぶぅちゃんはこれも好きだから、お互い幸せです。
幸せな気持ちになりながら、ようやく今回の目的地に着きました。何の変哲もない、一軒家です。ここに居る方が悪夢に悩んでいるとかいないとか。分かりませんが、とりあえずノックしてみましょう。
すみませーん。メルアですけどー。