プロローグ
「悪い悪魔もいれば、良い悪魔もいるの。
だから貴女は…うーん…それなりに良い悪魔になってく
れたら、嬉しいな?…ね?」
───悪魔なのに良いも悪いもあるのかとか、それなりってなんでしょうとか、子供ながらに沢山思いましたが、これがお母さんの口癖でした。
そんな少しふんわりしたお母さんに育ててもらった私は、幸いなことにも一般的な悪い悪魔にも、魔王みたいな悪いトップを目指すことも無く、平和に育ってました。平和が1番ですね。うんうん。平和過ぎて、本当に退屈だなと思う程でした。
だから私は、人間の近くに住むことにしました。
これを伝えた時のお母さんの顔は今でも覚えてますが、凄く面白い顔をしてました。娘の決めた事なんだから…でも人間の近く…みたいな、困った笑い顔でした。
…人間はそんなに怖いのかな?小さい頃読んだ本には、昔は争っていたけど今は共存していると書いてましたし、特に怖さは感じなかったのですが…。
お母さんも長生きしてますから、もしかしたら争いを知っているのかも知れませんね。兵隊さんかな。
ただ、止めても私が引かない事を知っているからか、案外あっさりと許可をくれて、荷物も一緒にまとめてくれました。家族揃って寝る最後の夜には、色んな話をして…みたいなことは無く、爆睡でしたね。2人とも。
……そんな懐かしい思い出から、色んな事がありました。楽しい事も疲れる事もくだらない事も、本当に沢山。これは、ほんのちょっと背伸びをして一人で生きてる私の、なんてことは無い普通の日記です。