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Never Garden < 三芒星編 >  作者: RONTAISHAN
第一話「 シルエット 」
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君のチッタ

 足は海岸に向かっていた。


 この浜辺が好きだ。

 島の果てまで、すっとつづく美しい岸部と水平線。いつまでもみていられる。

 それにしても、島に来てから、、数時間ごとにいろんなことが矢継ぎ早におこった。


 しかも、、どれも人生級のイベント。

 “なんだよ・・・ここ・・・”


 

 時間経過のない不思議な世界。世の中は、知らないうちに時が過ぎていたりする。知人はみな歳をとって、自分だけ子供だったりして・・・。

 膝をかかえたマークは涙目で、笑っていた。


 ?いや、でも、サリーは一晩で大人になった。

 ここは、数日で・・・。じゃあ、数か月後には・・・。


 脳裏にうかぶ子供の顔をした白髪の自分。

 ジョーがせっせと、島に人を補充しているのはそのせい?

 “だから、子供ばかりいる・・・”


「お得意の妄想風船、ふくらんでるね」


 振り向くと、少し後ろにキャプテンがいる。パイプに何か仕込みながら、話しかけてきた。

 いつも気配なく、そこにいる。


「いいじゃないか」 


 バッチリ目が合った。微笑んでいる。

「ザックと話してくれたかい」

 マークはうなずいた。

「ありがとう」


 なんでお礼を言われるのかわからない。

「ザックは、いつも何かを伝えられないで、すぐ意識の世界に行ってしまう。今はそこに逃げ込んでいるわけではないんだが、昔の癖だ。それもザック。それがザック。どんなザックでもいい」


 キャプテンと話をしているうちにさっき、ザックを一人にしたことを後悔した。あれでは、奇妙な自分をさらしたザックから逃げてしまったみたいだ。きっとザックは自分が嫌われたと思ったにちがいない。いや、もっとよくない。あの様子から、ザックはいつもそうした扱いを受けてきて、もう何も感じないくらい慣れてしまっているんだ。体の痛みにも、心の痛みにも、何も感じない。

 自分も、そんな扱いをする一人になってしまった。


「君のチッタが好きだ」


 いっつも、やさしい目でみつめてくる。そのたびに悲しくなるのはなぜだろう。

「毎晩、わからない文字や言葉を聞きにやってきた。雨の日も、風の強い日も、自分はずぶ濡れだったが、本は大切にシートにくるみ、いつも大事そうに抱えていた。ザックにとって本は何だったのかな」 

 ザックのところへ引き返そう。マークは立ち上がった。


 海風が髪をなびかせる。

 風にのった、かすかな香り。波打ち際を歩くサリーが、ニーロの手を引いて、こちらに向かっている。

 先ほどのワンピースを着ていない、いつものつぎはぎの服。


「なんで?」


 ささやくように聞いた。

「みんなのようすが…」

 さびしそうなサリー。


 ニーロが波と遊んでいる。そこにいたキャプテンは、跡形もない。

 浜辺に人影はない。また以前のように、三人きり。


「でも、いいんだ」

 なにがいいんだろう。


「うん」


 サリーが何を納得したのか、わからない。けど、うれしい。


「いこう」

「うん」


 差し出した手をサリーが握りしめる。つないだ手にニーロがぶら下がった。ニーロを肩車して、歩き出す。


 ずっとみていたい。マークの晴れやかな横顔とその先をみつめる翡翠(ヒスイ)のような深い緑。


 一日のおわりにはまだ時間があった。雲はすでに色づき始め、流れる風が三人の髪をやや、強めに梳いている。紅の雲と水、風、一瞬の黄昏(たそがれ)を焼きつけておこう、永遠に思い出せるように。

 三人は同じ思いを抱いていた。



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