三話 序章は始まり
光に包まれたランティーは巻き込まれたピヨを抱き込み庇いながら眩しい光の中を必死に目を細めながらまわりの様子をうかがっていた。
「くそ!油断した!!」
ドラゴンであるランティーは色々な人間に呼び出される事が多かった。利益目的の奴や魔法使いが特に多く、使役にしようと追いかけられた事も一回ではなかったため、ふだんは日常生活で気をつねにはっていたので簡単には呼びだれてないようにしていた。
「・・・ふぅ、ごめんなピヨ巻き込こんじまって・・・」
少し大きなポケットにはいっているピヨに言うとピピピと鳴いた。
『ピヨは大丈夫だよ!王様は?』
ランティーは苦しながら笑うとピヨから目線をずらし真っ直ぐ前を見る。
俺のせいなのに心配されて・・・世話ないよ、しっかりしないと!
「出口が見えてきたぞ!」
光の先に何かの風景がみえてきた。
「ピヨ!俺が必ず守ってやるからな!」
『うん!』
風景に近づくにつれて光が眩しくさらにランティー達を包んだ。
気がつくと水の中だった、目を開くとぼやけてよく見えない。
とにかく水面に向かって泳ぎ顔をだした。
「おい!ピヨ!大丈夫か?!」
ピヨはすぐにポケットから出ると飛び回りランティーの肩に乗った。
『ピヨ、大丈夫だったよ。王様が魔法かけてくれたんでしょう?』
「ピヨ!よかった!魔法が効いたんだな。」
光に包まれる直前に魔法をかけたが発動したかどうか不安だったが大事なかった事に安堵した。まわりはまるで神殿のような内装でその真ん中の水鏡の中にいるらしくランティーは首を傾げ。
普通は呼び出し・召喚を行なった魔方陣がある場所に飛ぶはずなのにそれもない、それよりも誰もいないのはなんでだ?
「何かおかしいな・・・」
『王様?』
「なんでもないピヨ、悪いけどまわりを見てきてくれないか?」
『うん!いいよ!!』
ピヨはランティーのまわりを一周すると他の部屋に向かった。
ランティーはそれを見守るとゆっくりと動き岸に上がろうと足を動かす。
ドクン
ドクン
ドクン
ドクン
ドクン!!ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、
なんだ・・・なんでいきなりこんな!
ランティーは胸を押さえてた、痛みが胸を襲い来る。どうにかしようと考えるが痛みと苦しみで何も出来ない。水の中に沈みながら体を丸める、背中に光が集まり出し無数の数の光がランティーの背中から放たれ何枚も光が広がった。それはまるで妖精の羽のようにランティーの左右に寄り添うと水に濡れた体を空中に浮き上げる。羽は大きく一度羽ばたき、水を払った。
「クッアァ!!」
痛みに苦しむランティーの顔が歪む。強制的な体の変化になすすべがなく、呻く声が響いた。
羽はランティーの体を包み込こむ、まるで水の水面のように羽の光は波打っていた。
ドクン
ドクン
ドクン
ドクン
体が熱くなり血が上る!!
『グガガガがアアアアァー』
鳴り止まないざわめきに目を覚まし、いきよいよく背を起こした。髪は汗ではりつき、荒い息が静かな夜に響いた。息を整えるように深呼吸を深くしてはりついていた髪を手ではらう。
神官であるアルアはこれほどのざわめきを感じた事はなかった。
ここ『100年間』鳴らなかった鐘の音が響く、アルアはすぐに飛び出した。ドンッ!!と扉を飛び出したところで何かにぶつかる。
「アルア!!」
「カーティス様!!」
アルアはすぐに頭を下げてあやまるとカーティスはアルアの頭を上げさせる。
「アルアも感じたのだろう!それにこの鐘の音!!」
「はい!神がきます!!」
二人はうなずくと目的の場所に急いだ。
『グアアアアアアアアァ』
『グァッググガッアアアアアアアアアア』
完全にドランゴン化してしまったランティーは胸の痛みにさいなまれながら今や首を振る事しかできないほどになってしまった。
苦しい、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、苦しい、苦しい、熱い!!!!!!! なっなんだ!これ!!体が!!!やめろ!!!もうやめてくれ!!!!
『痛いのか?』
《痛いのであろ?ならばその者にひざまずけ!!》
『苦しいのか?』
《さあ!早く!!その者を認めるのだ!!》
嫌だ・・・嫌だ・・・お前は誰だ?俺に話かけるな!!
『お前は・・・・俺を知っているのか?』
いつの間にか目の前にいた青年はランティーに一歩近づく。
やめろ!!今の俺に近づくな!!!
たたみかけるように頭の中でうるさいほど違う声が響いてランティーは声を張り上げる。
《お前はあの方のために生まれたのだ!!!早く!!!ひざまずくのだ!!!》
俺は・・・俺だ!!!!!!なめてんじゃね!!!!!
ランティーは強く目を見開くと尻尾や羽を丸めて球体になり光とともに水の中へ沈んでいく、水鏡はランティーの光で黄金に光輝き水面に紋章を映しながらゆっくりと光を消しっていく。
お前が俺の事を知らなくてもいい・・・・・俺はお前が
嫌いだから
バンッと大きな音がして誰かが水に飛び込む。
「どうしてあなたが!!!」
「うるさい!!」
青年はその場を離れる。
「お待ち下さい!!カリウス様!!!」
声を無視して扉へと向かう。
「カーティス様!!神が!!!」
「!!!!」
扉が開き静かにしまった。
アルアは必死に水に濡れた体を引き上げて自分の膝にその者の頭を乗せる。銀の長い髪を手で払いのける。
「この方が・・・神・・・」
「ええ・・・そうです。また始まるのですね・・・」
アルアは複雑そうに顔を影を落とす。
「・・・・・・この王国はまた荒れるでしょう。厄災と幸福のために・・・・」
ランティーはアルアの膝に頭を乗せながら少し目を開ける。
俺は・・・俺は・・・
暗くなる視界の最後によぎったのは俺を苦しそうにみる目の印象的な男の顔だった。
つづく
二話で断片的?だった所を詳しくそしてどうなったかを書きました。うまくいったかな?