春に囚われたまま
春に囚われたまま、夏が来た。
多分、心の底から愛していた筈なんだ。
伝えたい事しかないのに何時だって言えなくって。
書き起こした言葉だって嘘ばかりで。
毎日毎日泣きそうだったけれど、貴方を恨んでばかりだったけれど、でも愛おしくて堪らない日々だった。
嫌でも大人になっていく日々の中で、貴方の前だけでは子供でいられた。
嫌でも穢くなっていく日々の中で、貴方の前だけでは綺麗でいられた。
けれど、もう春は終わった。
貴方は、もう此処に居ない。
私は春を抱えたまま、言えずに終わった愛を抱きしめたまま、
春に囚われている。