第八話 敵国の首相との会談
結局あの後、作戦の決行は3月16日に決まり各々へ与えられた宿舎へ戻っていった。その後、数日間特に何もなく日付は2月20日になった。
今日、僕は名古屋基地にて北の首相と話をすることになっている。日本列島のね。そのために僕は現在午前9時という朝早い時間に控え室で時間を待っている。朝に弱い自分がこんなことをするもんじゃないな。
さすがに自分でもイライラしてきた。すると控え室に係員の女性がやってきた。
「閣下、準備が整いました。」
係員の女性はこれだけを伝えるとスタスタと外へ逃げるように出て行ってしまった。僕は意を決して部屋の扉を開けた。中にはニタニタと笑っている太った中年のおっさんが待っていた。
「初めまして、閣下。奥田正志です。よろしくお願いします。」
「虚春桜花です。こちらこそよろしくお願いします。えーと、確か今は日本社会主義国家では無く日本社会主義国家連邦になったのですよね。正直言うのもだるいです。」
顔が明らかにウザいんだよ、デブが。という風になっても彼はニタニタと笑ったままだ。
「まぁまぁ。それで早速なのですが、先日の徴兵の話などは一体どういうことですかな?」
は?何言ってるのかよくわからないんだけど。自分達がやっていることが自分達がどんな反応を起すのかまったく考えてないのか?まぁ、いい。
「ははは。黙れ、赤の豚どもが。てめぇらが手を伸ばそうとしてるから、こうしてんだよ。」
「はっはっは。何を仰るかと思えばそのようなことを。手を伸ばす?一体なんのことやら?我々はあくまで世界革命を起そうとしているだけですよ」
彼の目は明らかに狂っている。思想の狂信者。暴力革命に対抗しようとしているって言っているんだが、話にならない。それ故に何も考えていない。第一に革命を起そうとしているのは貴様らではない。僕達だ。それをわかっていない赤共は哀れなことだ。
「話になりませんね。狂人の戯言に付き合っている暇などこちらにはないのですよ。」
「狂人とはひどいですね。ふふふ・・・・。」
「話は以上ですかな?僕らから貴方達に聞くことは一切ありませんので。それでは。」
僕が席を立って立ち去ろうとすると
「資本主義世界の終焉への歩みを今、一歩一歩進んでいるのですよ。きっと今回の戦、世界大戦となり、我々の全力の殴りあいが始まる。そしてきっと貴方の名前は永遠に刻まれるでしょう。人類史上最低最悪な戦争を始めた人物として。」
僕を引き止めたいのか?なるほど、そういうことか。恐らくこの類の狂人だと、目的に対する執着心が強いだろう。会話を振り返れば目的が見え隠れしないでもない。きっと武力をそこまで持ってないと思ったんだろうね。そうしてそこに武力をチラチラ見せてやることで無血開城などを要求すると。哀れなことだな。まだそんな事を目論んでいるなんて。
さて、最後にアイツに揺さぶりをかけて終わりにするかな。
「それでなんだ?僕は決して貴様のような人間の言葉では動じない。何故なら貴様の目的を僕はもう既に見抜いている。狂人は勝手に日本海にでも沈んでろ。」
「待て!おい!待て!てめぇそれでいいのか!?きっと何万も、幾つもの若人の命が失われることになるぞ!?それでいいのか!?」
ふふふ・・・・・。あの狂人慌ててきたな。さっきまでのニタニタしていた顔は一転、焦りが一気に表れた。忙しい顔だね?ははは。恐らく余り彼らも血を流したくないんだろうな。だって、世界に革命の風を起すなんて言ってるもんね。バカじゃないの。血を流す覚悟をしていないならすんなよ。夢を見てるのがお似合いだ。あ、そうだ。
「そうですね、3月15日の23時30分にもう一度お話しませんか?」
恐らく彼はこれに乗る。チャンスは一度たりともつぶしたくないだろうからね。
「も、もちろんです。」
人をそこまで死なせたくないくせして、暴力革命なんて合ってないんだよな。所詮は夢物語、理想論だ。
奥田との会談を終えて僕はスタスタと歩き出していた。