第七話 作戦会議
海将に案内され、奥へ進むと階段がある。何やら司令室は地下にあるそうだ。まぁ地下の方は空爆などの対策にはなるが、上の部分が崩れることとなれば自分たちは死ぬだろう。
まぁさすがにそれを考慮して脱出口ぐらいはあるだろう。というか考慮してなかったらここはどんなシロウトが造ったのかと聞きたいほどだ。階段をかなり下りると司令室と書かれた扉があった。扉には関係者以外立ち入り禁止とも書かれている。やはり機密保持のためだろう。
そもそもの話、扉は鉄製で、なおかつ鍵はカード認証タイプのために関係者以外は早々入れないだろう。
「それでは、扉をあけますのでお下がりください。」
海将がカードキーを翳して鍵が開いたことを確認すると扉を開けて、僕らに中に入るように促す。それに応じて僕らは部屋の中へ入っていくとその場所が大きい空間だと認識することができた。部屋ではなく、空間だ。例えがあるとするならばホールなどが近い大きさと形状だろうか。
奥の壁には極大のモニターがあり、手前側の場所には段々とコンソールが並んでいて、オペレーターと思わしき多数の人物がコンソールの席に座っている。
「閣下の席はあちらです。」
海将はいつの間にか扉を閉めて、段状の一番上のコンソールの椅子を引いてどうぞといわんばかりにニコニコしている。何が楽しくてニコニコしているのやら、だが、そんな僕も笑っている。何故か?それは、僕達はこれから戦をするからだ。恐らく海将は僕同じ類の人間。戦が好きなんだろう。
彼も、僕も。まぁ、周りに居る新しい将達の何人かは、何やら気味悪がっているみたいだけどね。僕が席に座ると海将は他の将を各々の席へ案内しはじめる。自分のコンソールを見ると色々と機能が備わっているみたいだ。
各コンソールと通信行い作戦立案を容易にできるそうだな。他には部隊配置や戦闘状況や軍の通信回線で通話することも可能みたいだな、前線との通信には使えるだろうな。するとグループ通話が勝手に始まった。
「閣下並びに新しき将軍のみなさん、聞こえていますか?」
「聞こえていますよ、海将。」
他の将も同じく聞こえているとの旨を聞こえた。
「それでは早速なのですが、開戦時期と開戦直後の進撃ルートなどの作戦立案などの会議を行っていただきたいと思っています。」
「まぁ、早々に決めるのがよろしいでしょうね。」
「ちなみにこの幕僚会議では助言を求められればしますが、私からは一切の口出しはいたしません。」
海将から直接はしないとの宣言を受けるがそもそもの話、自分達で決めるつもりでは居たからな。
正直、決めないと不味いと感じている。結局はタイミングがなぁ・・。とりあえず意見を出さないと。
「とりあえず、宣戦の布告は三月で行きたいと私は考えているのですがどうでしょうか?」
周りの将に聞いてみると賛同者がとりあえずは出た。エルスこと竹野と中村だ。
「はい、そうですね。先日の記者会見で戦争の準備をこちらもしているというアピールをしているのでこちらから攻める可能性があるという考えから、共産陣営は守りを固めはじめていると思います。なので私は閣下の意見に賛成です。」
「ふむ。俺もチェリーの意見に賛成だ。日本列島は唯でさえ小さいのに北方のみと来る。ここは現存する機械化兵で電撃的に北上するべきだろう。」
ん~。彼らは電撃的にかつ敵が守りを固めきれてないうちに攻めるのには賛成のようだけど・・・。
「それなら、雪はどうするの?」
「おまけに兵士の練度も高くない新兵で元学生が大量にいる。貴様は彼らを無駄死にさせるつもりか?」
反対意見は姉さんと風間だ。確かに二人の言うとおりだ。今の時期でも北は一部地域雪が残っていて、機械化兵の進軍を妨げる可能性があるし、新兵には昨日まで学生をしていたのが多いが・・・。
「まず雪に関して言えばこのまま四月五月に延期すれば向こうも同じ条件だ。敗走すれば向こうも有利になるために、今攻めるべきである。それと兵士に関して言えば一ヶ月の訓練期間を設けることができる。兵士には生き残ることを叩き込ませる。さらに、徴兵された新規の兵士は一律で機械化するために無理な白兵戦は行わない。さらに大部分としては現存している正規兵を前線に送りだし、徴兵した学生はなるべく後方支援に当てる。これを原則として兵士の運用をする。」
「それじゃあ積雪の部分はわかったけど、北部の山岳地帯はどうするの?あそこは自動車で進軍するにしても厳しいよ。」
「北部の山岳地帯は現存する連邦軍の山岳部隊にて制圧する。福島要塞線を越えた先では、上空からの航空支援もある。」
「ふーん・・・・それなら私は問題ないかな。」
「私も同じく。」
「それで、内容としては電撃的に要塞線を叩く。もしここで要塞線を一ヶ月の間攻略することが叶わなければ防戦に徹し、資本主義の連合の増援を待つ。要塞線を突破した場合は軍は一軍と二軍に分散し、一軍は西進し二軍は北進。一軍は福島要塞線のラインで分断し新潟の南部を孤立させて敵軍の一部の包囲殲滅を図る。新潟南部の敵軍を殲滅して、新潟南部一帯の安全が確認され次第、二軍はただちに北進し一軍と合流し、青森手前のラインまで進撃を続ける。その間に、大規模な海兵師団を編成して北海道へ上陸作戦を決行し、後方撹乱を起す。」
「そしてあとは本州の制圧が完了次第、北海道での決戦とな。まぁいいんじゃないかな?」
「また、同時進行で日本海並びにオホーツク海方面での海上封鎖を実施し北海道を物資的に孤立させる。」
皆も同じ感じで同意した。
これで作戦は大丈夫かと思った矢先、エルスが突然言葉を発した。
「国民はどうするよ。」
あっ。
「どうやって説明する・・・?」
「正直これはどうしようもないわね。」
「これに関して言えば私は何も言えないぞ。」
う、うーん。どうしたものか・・・。正直圧倒的支持を得られる手段があればいいんだがそんなんないよなぁ・・・・・。
「ありますよ。」
それは中村だった。
「何が?」
咄嗟に返してしまった。
「支持を得られる方法が。」
「本当?」
「えぇ。この手段が有効であるというのは、近年の少子高齢化社会などの背景があるというのもあります。近年の大企業の会長などで影で政府などを左右する権力者の方も高齢の方が多いです。その中でも特に二次大戦以前の昔を懐かしんでいるご老人が多いという条件も絡んでいます。」
なるほど、そういうことか。第二次世界大戦後、日本は分割されたが、日本が一つだった時を懐かしむ老人が居る。というよりも昔に戻りたい、もう一度統合を!という意見も多数ある。
「読めた。つまりは・・・・。」
「日本再統合の救国戦線です。」
エルスはその手があったか!と言いそうな顔をしている。
「その手があったか!そうすれば国内で反乱が起きる可能性も低くなる!事実、家族間での繋がりが強い現代日本ではこれが伝染しやすい。」
「私は賛成。一番いいかもしれない。」
姉さんからの賛成もあるし、あとは一人。風間だけだ。
「私はその類に関して言えば助言はできない。貴様らに任せる。」
よし!よし!大義名分はこれで完全に得られた。正直、この戦争で日本を統合するつもりでは居たけどまさかそれが大義名分になるとは思わなかったけどね。
というか何で木村君が大企業の会長の今やらを知ってるのかな?ま、いいや。
「よし、それではこれで我々の大義名分が確保されたわけだが・・・・。」
あっ。
「どうした、チェリー?何か忘れていたみたいな。」
「作戦名決めてなかった。」
「「あっ。」」
さて、どうしましょう。
「とりあえず、チェリー。お前が決めろ。」
「は?」
「閣下!これは歴史に残る作戦であります!これは閣下にお願いしたいです!」
中村君・・・・・。君はなんでそんなことを言うんだ。面倒じゃないか。でも、嫌いじゃないよそんな役。
「わかった。残りの二人は問題はない?」
「私は別に。」
「同じく特に問題は無い。貴様に任せよう。」
さて、どうしようかな作戦名。そうだな。新たな日が昇るんだ。日本がもう一度結束するのだ。
「作戦名はOperation rising sunだ。もう一度日本列島に一つの日の丸が昇るんだ。いいや、僕達が昇らせるんだ。東の海より昇る美しき太陽を。」