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フリーダムワールド  作者: 雪原果歩
第一章 楽しい生活の始まり編
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第六話 カチューシャの新しい道と新しき将

謎の訓練兵の女性ことカチューシャ・・・ねぇ。時刻を確認すると9時ジャストだった。今の時間帯、訓練兵は訓練を普通にしているハズだが、彼女は抜け出してここに居る。まずは事情を聞かなければいけない。


それと、たぶん彼女はここの通路が若干薄暗いからか、もしくは泣いていていつもと違っていて気づいていないだけなのか僕の階級には気づいていないみたいだ。まぁそっちのほうが好都合だけどね。


「さて、カチューシャ今の時間帯ならば訓練兵は訓練を受けているはずがだ君はどうなっているんだい?僕にはそれを聞く義務が恐らくあるんだろう。」


「実は・・・・わ、私の祖父と父は有名な戦車乗りで、私も戦車科に行く事になって・・・。え、えーと・・・・その・・・。」


彼女は恐らく逃げの言葉を考えている。言うのが恥ずかしい人間の典型的な例だ。


「それで、なんでここにいるの?」


話をしなければいけない。そうしなければ君は何時までもそこにいることになるんだ。僕はそう思った


「うっ・・・ぐぅ・・・・。わ、私・・・・・・、戦車の操縦、命令、砲手、色々試したの・・・・・で

も祖父や父の様にはいかなかった。こ、このままじゃ、父と祖父に合わせる顔が・・・。」


「気にするな。」


「えっ?」


彼女は若干驚いたような声を出した。


「そんなことを気にするな。もしカチューシャ、君が戦車乗りとして才能が無いとしても他に何か才能があるのかもしれない。軍人の兵種で偉いも偉くないもない。恐らく、カチューシャが軍人として立派に働けばきっと君の父と祖父は満足してくれるだろう。君には戦車乗りとしての才能は無いだろう。だがしかし、君はそれ以外をやっていないはずだろう?君の言っていることからして。だからこそ君は未知数なんだ。」


そうだな。彼女の名前から思いついたが多連装ロケット砲でもさせてみるかな。


やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

山本五十六の言葉だ。まずはやらせる。それが大事。


「多連装ロケット砲をやってみるのはどうだろうか?君の名前のカチューシャから思いついたんだ。第二次世界大戦中にソ連軍が移動式のロケット砲を開発し、実戦に投入した兵器の愛称がカチューシャなんだ。だから、君もこれをきっかけに他の兵種への歩みを踏み出してみるといいだろう。」


僕は制服のコートを脱いで彼女に掛けてあげた。まだ2月の寒空の中に迷彩服一枚は寒いだろう。相手が野郎ならたぶんしなかっただろうが、相手は女性だからな。僕も温情の無い人間ではない。それと、僕も昨日付けで司令官となったからでもある。兵士一人一人を大事にしなくて何が司令官だろうか。そんな気持ちで僕は彼女にコートを掛けて、軽く敬礼をしてその場を立ち去った。時間を見ると時刻は午前九時半を指そうとしていた。


僕は急いで予備のコートを取りに戻り。海将との待ち合わせ時間に間に合わせなければならない。走ってみると意外にも9時40分には自宅まで戻ることができた。とりあえず予備のコートを身に着けて外に出ようとすると時刻は45分だった。あと15分程度は待つつもりだったのだが、外に出てみるとさっきまで居なかった海将が何故かそこに居た。


「あれ、海将?確か約束の時間は10時頃でしたよね?」


「はい。間違いありません。」


「では何故そこに?早くないです?」


「いえ、連邦軍では、15分前行動は基本ですよ。」


基本なのか・・・・・。すごいっすね。さすがに軍隊、格が違った。万年引きこもりニートだった僕とはさすがに違うよね。ということで、僕は海将と合流して新しい将が待つ司令部へ向かうこととなった。


そうだ、彼女の為にも手を回さないとね。恐らく彼女には戦車は向いていない。とりあえず、ロケット砲兵の育成コースへ回して成績に問題があればまた他の部署に回すって形で。


「海将、戦車兵訓練コースのエカチェリーナ・ルーニシュ・ナトルスタヤという女性をロケット砲兵の育成コースへ回してください。」


「ふむ。それはかまいませんが何故でしょうか?」


「先ほど彼女と会ったのですが、恐らく彼女には戦車は向いてない。だからとりあえず他の部署に回して成績が振るわなければまた他の所にという感じです。兵士一人で戦いが左右する場合があるからこそ、無駄な兵士は一兵たりとも作りたくない。」


「わかりました。ですが、彼女には少し残念な気持ちを覚えます。」


「海将、貴方まで何を言っているのですか?彼女も何やら言っていましたが・・・、父や祖父が、と。」


「閣下はご存知ありませんでしたか?彼女の父は共産陣営で、ベトナムなどの各地の代理戦争で我々資本陣営に恐れられた戦車兵であり、祖父は第二次世界大戦では史上最大の戦車戦とも呼ばれるクルスクの戦いでの英雄です。」


初耳だ。正直、だがしかし。


「だったらなんだ?彼女は彼女だ。彼女自身の才能を生かすことが一番重要なのではないのか?」


「ごもっともです、閣下。それと、あちらが司令部になります。」


海将が指を指した先はコンクリート造りの大きい建物があった。入り口周りを見ると厳重な警備が敷かれていた。ここが如何に重要な場所かということをこれだけで物語っている。

中に入ると4人の若い男女が並んで立っていた。2人ほど面識のある人物が居たが、とりあえずスルーだ。


「それでは中村さんから順に自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「は、はい!」


「残りの方々もよろしいでしょうか?」


残りの3人は無言で頷くが内一人の男が僕に対して睨んできた。おぉ怖い。そんなに僕って彼から怨みを買っていたかな?そう思っていると、若干小太りな青年が話し出す。


中村冬樹(なかむらふゆき)です!兵器や敵将について、自分で言うのもなんですが詳しいです。閣下、よろしくお願いします。」


中村くんか、さすがに幕下の将となる人物の名前ぐらいは覚えないとな。小学生の時、まだ僕が学校とい

うものに通っていたときは人の名前を一人を除いて一切覚えなかったからな。


「次は私ね。私は君が知っている通り雪空明海(ゆきぞらあけみ)。よろしく。」


二人目は女性で年上、比較的長身で、綺麗な黒の長髪が特徴的な・・・・・というか僕の近所に住んでいる、所謂近所の姉さんなわけなんだが。何故こうなった?海将は何故姉さんを選んだし!?海将に視線を向けると彼は苦笑いしながら答える。


「いや~・・。彼女は地理に詳しいので・・・・。」


うん!確かに日本列島は地理を使った戦いが有効だけどさ!なんで姉さん!?確かだが姉さんは高校には通っていたハズだが、たしかヤクザの家系だったはずだ・・・・。大丈夫なのか?ま、まぁ確か任侠を思いやる古き良きところだったからたぶん大丈夫だろう。とりあえず気を取り直して次行こう!


「私は風間影子(かざまえいこ)、傭兵だ。戦場を知っているからという理由で、そこに居る海将に依頼さ

れてきた。少なくとも貴様らが金を払う限り私は貴様らを裏切りはしないから安心しろ。」


訂正する。睨みが一つ増えた。風間と名乗る傭兵は、短髪でタンクトップという動きやすい格好になっている。顔のいくつか小さな傷を負っているが、余り気にはならない程だ。というかこの子、やばくない?しかも最初の挨拶で裏切りの話出す時点で何度か裏切りをしたことあるのかな?まぁ、今回の大戦で僕らが負ければ彼女や、彼女の同僚が困るだろうから裏切りは早々無いだろう。さて、最後の一人で最初から僕を睨んでいる人だ。


「昨日振りだな、チェリーブロッサム。本名は大竹忍(おおたけしのぶ)だが、貴様はエルスと言えばわかるだろう。」


昨日も見たが、若干痩せ気味だと言えば皆がそうだろうと答えるだろうと考えるほどの体格の男。まぁ昨日の大会の決勝戦の相手だ。しかしながらハンドルネームを覚えているわけないだろ。興味ないんだから。


「うーん、ハンドルネームまでは覚えていなかったな~。正直、昨日の決勝戦振りというのが正確かな?」


「うるっせぇ。こちとら昨日は負けて速攻家帰って不貞寝してたと思ったら徴兵されてここまで連れてこれらたんだよ。もうおかげさまでてめぇとの戦いで疲れた頭が癒されきってないってーの。」


「ご愁傷様で。」


だが本心は


「ざまぁ。」


「てめぇ、今ざまぁって言ったな!?」


「おっと。思っていたことが口に出てしまった。すまないね。」


彼から謎の因縁を付けられてさすがに面倒になったので、彼との会話はやめて司令室へ行こうかな。


「ところで海将。司令室はどこですか?」


「それでしたらこちらへどうぞ。」


「おい、こら。待てぇ、チェリーブロッサム!話はまだ終わってねぇぞ!?」


僕らはエルスの話を無視しながら海将に案内され、奥へ進んで行った。

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