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フリーダムワールド  作者: 雪原果歩
第一章 楽しい生活の始まり編
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第五話 元自宅警備員となった司令官が謎の女性と出会ったそうです

突如としてけたたましい甲高い音が僕の新しい家の外で鳴った。その音のせいで心地よい眠りから覚まされた僕は何だ何だと窓の外を見てみる。窓の外には若い男女が兵士宿舎から急いで外に集合、整列をしている。


恐らく彼らは訓練兵で、さっきのは起床ラッパだったのだろうと察した。たぶんだが外に今現在進行形で整列している若い男女の彼らは徴兵された学生だろう。訓練兵の中には、兵士にしてはおどおどしている者も少なくなかった。


まぁ、気の毒とは思っておいたほうがいいだろうが結局のところは致し方のない事だ。とりあえず服を着換えよう。昨日は色々とあって、着替えずに寝てしまった。確かだが海将の説明の中に制服がクローゼットの中にあるという話があったはずだ。


クローゼットを漁ってみると海将の説明通りに制服が入っていた。この季節の制服は通常の戦闘服の上に指定コートを着るみたいだ。このコートにも階級章が付いていて、階級が即座にわかるだろう。海将殿への感謝の気持ちを心の中で思いながら、僕は着替えて外へ出た。


外へ出ると朝日がまぶしい。スマホで時刻を確認すると午前六時。2月の朝とは言え最近まで引きこもりをしていた人間にはこんな朝日はつらい、がここは負けじとさっき窓から見た新兵の様子を見に行く事にした。


新兵たちは既に朝の点呼を終えて、教官を先頭にランニングをしている。そういえばだが、兵士を教育するに当たってさせることがいくつかある。その中にランニング中に歌う、ミリタリーケイデンスと呼ばれるものがある。


言ってしまえばムカデ競争の右左の掛け声のリズムを歌で歌うわけで、教官が歌って、訓練兵が歌うわけだが・・・・。


「俺たちゃ資本の豚たちだ!」


「「「「「俺たちゃ資本の豚たちだ!」」」」」


そう・・・・。歌詞が大抵ひどかったりする場合が多いが、しかしこれにも意味はある。自虐的な歌詞を大声を歌うことで羞恥心だったりなどをなくし、下っ端だろうと意見などを言うために勇気をつける。攻撃的な歌詞を大声で歌うことで勇敢で攻撃的な軍人精神を身に付けやすくするということだ。


「だーから赤を殺すんだ!」


「「「「「だーから赤を殺すんだ!」」」」」


うん、やっぱり凄いね(遠い目)と思いながら、彼らを傍観していると後ろから声を掛けられた。


「大元帥殿、おはようございます。」


國正海将だ。海将には昨日お世話になったばかりだから礼も言わなきゃな。


「おはようございます、國正海将。昨日はありがとうございました。急な願いを聞き入れてもらえまして。」


「いえいえ、礼には及びません。それで、彼らはどうでしょうか?先ほどからご覧になっていたようですが。」


「彼らは徴兵された学徒兵ですよね?それであれなら上出来ですね。」


「はい。それでですね、お話が一つありましてですね。閣下に幕下の将を選んでいただきたいのです。」

「幕下の将・・・か。それじゃあ、まず一人に國正海将を指名します。そして、海将は徴兵した学生の中から学業の成績がよかった者と軍事関連に強い者を抜粋して、貴方自らに選んでいただきます。いいですね?」


う~ん・・・・。やっぱり面倒くさいものは他人に放り投げるに限る。しかし、海将はドが付くほど真面目なのか僕の命令を受け入れた。


というかもう既にその類の者達は準備させていたらしく、今日の10時頃に会合する予定を取り付けた。その際の海将との集合場所は僕の新しい住まいの前だそうだ。


僕は海将と別れて基地の中をぶらぶらすることにした。


教官の人は何やら慌ただしい様だが僕には関係ないと言わんばかりに基地内を散策し始める。確認するが、名古屋基地は連邦軍の中枢と言っても過言ではない軍事基地だ。


一部は伊勢湾に面していてドッグがあり、又小規模だが航空基地も内部に存在する。そのため、結構広いのだ。子供がかくれんぼをしたら確実に誰か見つからない子が出てくることが必至な程に複雑に入り組んでも居る。


僕はまず手始めに陸軍施設が集中するところから近い海軍のドッグなどが存在する区画を回ることにした。海軍施設は資材置き場が大半を占めていて、倉庫がいたるところに存在していて、暗い路地のようなものが大量にできている。


その為に、極稀に人目に付かない路地に耳を傾けると淫靡な声が聞こえたりすることがあるそうだ。そんな噂に興味を示して僕は人が余り通らない通りに存在する路地を集中的に調べ始めた。調べ始めていくつめかの時に僕はすすり泣くような声を耳にした。


気になって、僕は奥へと進んで行くとそこには銀髪の綺麗な女性が座り込んで泣いていた。身長からみるに恐らく年は僕の2つか3つ上だろう。顔立ちも日本人とは明らかに違うと人目でわかった。長い銀髪があり、背丈が大きく、女性の魅力の一つとよく言われる胸も大きい、かなりの美人だ。


そんな彼女に一瞬見惚れたが、正気を保って彼女をもう一度見ると、彼女は訓練兵の紋章をつけていた。泣いている彼女に僕は話を掛けてみた。


「どうしましたか?」


「う・・うぅ・・・・・なんで・・・な、なんで私は・・・・私だけができないの・・・・。」


訓練で行き詰ったのだろうか?それとも何か拗れた人間関係だろうか?とりあえず彼女を泣かせたままというのも気分が悪いので一旦落ち着かせるようにしよう。


「何があったのかは知りませんが、一度思いっきり泣きましょう。そうすれば落ち着ける。他の誰にも見られる心配はない、だから泣いて落ち着きましょう。」


と言って彼女を正面から抱きしめてあげる。すると彼女は堰を切れたように泣き出した。僕は人間が負の感情だったりするものを背負い込んでいる人間を落ち着かせるには一度思いっきり泣かせてあげるのが一番効果的だと思っている。


何故なら、人は感情というものを無意識のうちに勝手に自らに蓄積しまっているからだ。そして、その先にある未来というのは今さっきまでの負の感情をむき出しにした彼女ような状態である。そしてその蓄えてしまった負を全てを涙だったり嗚咽だったりなど、自分の行動にして感情を開放することで自分の中を水平にしてプラスマイナスゼロの状態する。


プラスマイナスゼロ、即ち水平ということ。水平にすることで全体が見渡せるのでより落ち着けるわけだと最終的に僕は思う。しばらくすると彼女は泣きやみ僕に話かけてきた。


「あ、あの・・・・貴方の名前を教えていた、いただけませんか?」


「名前?なんで?」


「え、えーと。その・・・。」


「虚春桜花。虚しい春の桜の花と書くんだ。」


「は、はい。わ、私はエカチェリーナ・ルキーニシュ・ナトルスタヤ。カチューシャって呼んで下さい。」

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