第三十六話 足らない証拠と破綻した考え
「内閣総理大臣、アメリカとのホットラインを使用し始めました」
「アメリカ国防長官が会見を始めました」
「ソ連からの表明発表されました。内容としては、我が国は日本社会主義連邦にある核には関係ないと発表」
絶えず報告が流れてくる。
ここは石川の司令部だ。
僕はことの重大さに気づき、多くの情報量を取得できる司令部へとヘリを使って戻ってきた。
機動軍は依然、周辺地域の残党狩りを行っている。
また、我が軍は北海道方面に対しての支援上陸を計画している。
支援規模としては、機械化連隊が2個分ほどだ。
「アメリカ国防長官の会見が終わりました。内容としては、日本列島に核があるということは、許される行為ではなく、戦争は通常兵器にて行うべきである、です」
やっぱりアメリカさんはお怒りか。
そりゃそうだよね。自分達の射程距離内に、いつ核を撃ってもおかしくないような状況の国があるのだから。
これが、本物の抑止力ということか。
恐らく1つが見つかったということは、他に2つ3つあってもおかしくないということだ。
「内閣総理大臣より、連絡です!」
オペレーターの一人がそう言った。
「ホットラインで話をしてたんじゃなかった?」
「先程終わりました。回線、繋ぎます」
それから少しして、少しのノイズが走ると声が出始めた。
『東海連邦として、軍部に対しての要求をここに私はさせて頂きたいのですが、元帥は大丈夫ですか?』
「大丈夫です、一刻を争う事態です」
『ありがとうございます。それでは、東海連邦としては今回の北海道核発見事件に関しましては、これを断固として許さず、敵に核を撃つ暇を与えずに敵を撃滅せよ、です。また、アメリカ大統領とのお話でも大統領はこちらの考えに賛成しておられました』
「わかりました。それでは、電撃的に北海道を勝ち取ってみせましょう。今こそ機械化部隊の強さを見せ付けるときですよ」
僕がそう言うと、通話が切れた。
「オペレーター!民間船舶でもなんでもいいから、ありったけの船を集めろ!いいな!?それと各部隊を各主要港に移動させて、船での行軍準備!」
民間船舶、港、ここまで来れば大概の人間はわかるだろう
そう、上陸作戦だ。
「北海道全域に、高高度偵察機の出動!」
それも、四方八方からのだ。
そうすることにより、相手の抵抗力を減らして一気に勝ち取る。
電撃戦というよりかは、ただのゴリ押しだけど仕方ない。
核がさらにもう一つ無いという、確証がないなら急いで北海道を取るべきだ。
それこそ、相手に反応させる暇なく。
「空挺レンジャー団も出撃用意だ!作戦内容は高高度落下傘降下にて、札幌の敵の総本部である共産党本部を襲撃だ!護衛戦闘機も直ちに出せ!スクラブルだ!」
「了解しました。それとですが、外務省より電文です」
「内容を頼む」
「はい。ソビエト領地、極東ロシア、ウラジオストックにて大規模な船舶の出港準備の動きあり、とのことです」
ソ連が参戦するのか・・?
この状況で北部からの増援はマズい。
「駆逐艦を日本海北部へ急行させろ!駆逐艦には日本海北部の海上封鎖の任務に就かせるんだ!」
畜生。
何がなんだかわからなくなってきた。
現在、友軍は北海道の市街地にて戦闘を継続中であり、被害甚大。
また北方からはソビエトの援軍の動きあり。
それに北海道に核弾頭?
なんだよ、これ。
まるで、全て仕組まれていたようになってるじゃないか。
全ての元凶は、魔王だ。
コイツさえ居なければ、僕たちの勝利は確定していた。
けれども、今は政治的にも軍事バランス的にも大きく揺れている。
そう、コイツの出現で僕たちの今まで本州で積み重ねてきた勝ち分は、全部チャラになりやがった!
歴史の話をしよう。
それは遥か昔の話だ。
1945年の8月、日本列島に2発の核爆弾が投下された。
その結果、膨大な破壊力によって街が2つ消し飛んだ、跡形もなく。
時代は進むと大陸間弾道ミサイルの時代になった。
それにより、核を爆撃機に積まないでも撃てるようになった。
結果どうなったかというと、冷戦だ。
核により世界は狂い、世界は核を恐れ始めた。
何故ならばそれ一つを持つことにより、強大な大国を小国が脅すことができるからだ。
大国と言えど、街を丸ごと一つ吹き飛ばされては堪ったもんじゃない。
だからサムおじさんこと、アメリカ合衆国を中心にして核拡散防止条約という、主要国家以外の核の保有を禁じた条約が出来上がった。
だが、北海道には核がある。
もしもまだ核が他にもあり、そして僕の推測が正しければ、その核は世界の中心と謳われているアメリカ合衆国首都、ワシントンD.Cを狙っている!
そう、名古屋ではダメなんだ。京都ではダメなんだ。
世界の警察と呼ばれ、資本陣営の親玉であるアメリカの喉元にナイフを突きつけないと、彼らは逆転できないんだ!
今の資本主義の社会の経済の中心は、アメリカと言っても過言ではない。
欧州は英国しか資本主義の国は存在しておらず、主要な外資系企業は忽ちアメリカへ逃げた。
裏を返せば、アメリカを脅してしまえば僕たちの陣営は崩れる。
いや、待てよ?
どうして僕はそう考えたんだ?
そもそもの話、社会主義連邦はソ連の同盟では?
ならば何故核を使う?世界が終わりかねない核を使う?
いいや、その前提が間違っているとしたら?
もしもの話だが、社会主義連邦とソ連の関係が既に破綻していたら・・・?
ソ連の意向を無視して、社会主義連邦が南北統一を実現するために戦争を吹っかけていた場合?
ダメだ、証拠が足らない!
恐らくだが、札幌の共産党本部には資料があるハズだ。
世界さん、頼むからもうちょっとだけ待っててくれよ。
僕たちのこれからの動きで、あんたの生死が決まるから。
今週はなんとか更新できました!絶対に3週も投稿できないなんてことは避けたかったので、決死の覚悟で頑張りました!ここ最近忙しかったなんて言い訳は、言い訳に過ぎませんので置いておいて・・・・。
さて本編ですが、この局面になって主人公の仮定などが一気に崩壊して、戦いは新たな局面へ!
次回をお楽しみに!