第三十四話 高高度空挺歩兵
筑波学園都市での一幕から数日経過した。
僕は新潟方面に居る軍に再び戻った。
「本州における要塞線は既に崩壊した!これ以上、抵抗したところで無駄である!大人しく武装解除して投降せよ!」
シキツウの中からでも聞こえる、ヘリのスピーカーから流れる投降を呼びかける言葉が、この戦争の終わりが見えた気がした。
そういえばだが昨日の朝、連邦海軍のアーレイバーク級駆逐艦『秋雨』から電報が飛んできた。
内容は『我、民間船舶の富士丸号を補足せり。これより富士丸号の護衛任務に就く』との事だった。
富士丸号は南城中将が率いる、青き自由の会に所属する反乱軍を乗せた民間船舶だ。
そして、僕たち東海連邦軍は今何をしているかと言うと、東北地方方面の残党狩りだ。
残党狩りと言っても、敵さんが居るところが福島要塞線の真後ろだから、僕たち来た途端にみんな武装解除して投降してるんだけどね。
それを考えると、社会主義連邦はどれほどあの要塞に頼り切った防衛計画を、立てていたのかと思うよ。
軍隊的には、絶対的過信は禁物だ。
事実、歴史上ではそれをしてきた愚か者は、基本的に負けている。
有名な例を挙げるとするならが、1944年3月から7月まで起こったインパール作戦を僕は挙げる。
その作戦は、当時の日本軍の戦闘能力を過信しすぎた故に、補給を無視して計画・実施した作戦だ。
散々たる結果になったのは言うまでもない。
全てに失敗の可能性があることを考えなければ、中がスカスカになったジェンガのように、一つの柱が抜かれると一気に崩壊する。
恐らく、今回の戦争で防衛計画を画策した社会主義連邦の参謀総長は、歴史に愚将として名を残すことになるだろう。
「青き自由の会より緊急伝!」
安城が叫んだ。
その言葉を受けて僕はヘッドセットを装着した。
『繰り返す、こちら司令部。小さな作戦司令部は応答せよ。青き自由の会より緊急伝!』
確か今頃は上陸作戦を決行するハズだが、何か問題でも起こったのか?
「『小さな作戦司令部の虚春です。報告お願いします』」
『上陸作戦は失敗!現在、敵と交戦中!』
何だって!?
どうしたものかな。正直、ここから手を出すのは難しいというのが、個人的感想だ。
空挺団を援軍の出すというのも一つの手ではあるが、その間の護衛戦闘機の問題もある。
現実的に空挺はかなり難しい。
そんな考えをしていると、シキツウ後部のハッチが開いた。
そっちを見てみると、東海連邦軍の様式とは違う軍服を着ていて、薄ら笑いの顔の軍人がそこには居た。
「お困りですかね、東海さん?」
「誰ですか?」
警戒心マシマシの様子を隠さず僕はそう言った。
「まぁまぁ、警戒しないでくださいよ。私は大日本帝国空軍の人間ですよ」
「軍人さんなら、軍人さんらしく所属を明らかにするのが当たり前ですよね?」
「おっと失礼。私は第三空挺連隊所属の、青山少佐という者です。以後、お見知りおきを」
第三空挺連隊?正直、大日本帝国軍の詳細はよくわからないから、そこらへんは放置しておいて話を聞くか。
「それで、第三空挺連隊の青山少佐は何のようで此処へ?」
「私、実は帝国の特使を任されておりまして閣下のお傍に居るようにと、上層部より命令されたのですよ」
「そうですか。今は少々忙しいので、お引取り願いたいです」
明らかに嫌そうな顔をしながら僕は言った。
実際、僕はこんなやつを相手にしている暇はない。
「まぁ、待ってくださいよ。閣下は、我が空挺連隊の内容をご存知で、それを仰っていますか?」
「生憎ですが、僕は貴軍のことはわかって居ませんので、それを言われても困りますね」
あぁ、じれったい。
早く帰ってくれ。
「では解説致しましょう。我が第三空挺連隊が扱う主な兵科は、高高度空挺歩兵です。俗に言う、HALO降下ですね」
HALO降下!?
確かだが、HALO降下は高度10000メートルほどの高さから空挺降下するハズだが、帝国軍はそれを部隊化したのか!?
そうなれば、ここは一つ事態の突破を図れるかもわからない。
「青山少佐、先程までの無礼を詫びたい」
「いえ、とんでもないです」
彼はニッコリと微笑みながらそう言った。
「貴軍の第三空挺連隊に、北海道方面上陸作戦の援軍に向かってもらいたい」
「いいですよ?高度10000メートルでの護衛戦闘機はそちらが出してくださいね?AJ戦闘機は我々より良い性能ですので」
「えぇ、もちろんです」
北海道上陸作戦!日本戦の終わりが見えて来てしまいました。
けれども、人の歴史から争いの二文字は消えず ということで今回はここまでです!
来週も投稿しますので、よろしくお願いします!