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フリーダムワールド  作者: 雪原果歩
第二章 日本戦線編
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第三十話 クーデターの経路

その後、僕はホテルに戻って一晩過ごした。


友永陸佐から聞いた立川レポートの内容に関しては、とても信じられないという感想しか沸いてこない。


それに、海将は本当に自分で背負いきる積りなのだろうか、という疑問もあるし、居酒屋で聞いたクーデターを図る反乱軍の話もある。


そのため、昨晩はあまり寝るまでにかなりの時間を要した。


「さて、今日は長岡までいけるかな?」


僕は身支度を整えて、部屋を出た。


とは言え、僕らはこのホテルに招待してもらった身であるために、ホテル側にお礼を代表として、一応は言っておかないと、という考えから僕はホテルのフロントまで行った。


フロントには受付の男性が一人立っていた。


「昨晩はありがとうございました。おかげで体が休まりました」


僕は極普通の、それこそ定型文かと思うような言葉でお礼の言葉を言った。


しかしながら語彙力が乏しい僕は、これでも一杯一杯という感じである。


「いえ、礼には及びません。まず、大概の東北地方の人間というか、自由民主国時代を生きた人間はこういう感じでしょうね。社会主義と化してからは、酷い政治でしたから。特に今の奥田政権は、高い税金をさらに高くしましたしね」


受付の男性は、戦争が起こってなかったら、もうじきこのホテルも危なかっただろう。とも言った。


「あっ、そういえば。」


受付の男性が急に何かを思い出したように言い出した。


「どうかしましたか?」


「軍隊と言えばなんですが、つい先日も軍人さんが泊まったんですよ。それも、政治将校だったんですよ」


政治将校、というと共産主義国における軍隊の、指揮権を握っているも同然の人間だ。また、共産圏の軍隊における政治将校は、逃亡兵や反乱分子などを、射殺などの手段を使って対処するという権限もある。


「それで、その政治将校がどうしたのですか?」


「いやぁ、私って意外とサボり性なんで、その日もお客様が使う休憩室で、隠れて休憩してたんですよ。すると、さっき私が受付をした政治将校とその連れの軍人さんが入ったきたんですよ。私は見つかったらマズイ、って思って必死に隠れてたんですが、軍人が部屋に誰も居ないと思ったのか、話を始めたんですよ」


「それで、話の内容っていうのは?」


「小さい声で話していたので内容としては、途切れ途切れにしか聞こえなかったんですけど、「東海連邦は戦いを選んだ。今度は我々の番だろう」だとか、「クーデター。いや、違う。日本維新はいつからだ?」っていうのと、「日本維新の決行は2月27日で話で進んでいる」というのが聞こえました」


やっぱり、クーデターをしようとする組織は居たのか!


その組織を上手いこと利用することが、次の目標だろう。


昨晩、居酒屋で話をしてくれた一般人の話によると、山形の月山の方へ入っていったということだから、反乱軍は北上しているものと考える。


それに加えて、大規模な組織と考えると、かなり大きい範囲での情報統制ができるという考えに至る。そもそもの話、社会主義連邦の中で情報統制が行われている現状で、情報事態が出回り難いだろうから、前提条件として、大きな動きをしても問題ない、という考えもできる。


それに、山の中に入れば人気も少ないだろうから、まず見つからない。恐らく、念には念を入れた行動だろう。


そして、クーデターを行うとするならば、まずは首都を占領するのが一番手っ取り早い。


社会主義連邦の首都は、函館だ。となると陸からで高速道路を使っての輸送か、民間船舶に軍人を乗せて、函館まで運ぶか。


月山の方面に入っていったという話から、陸路での輸送はこの時点で無くなる。


なぜならば、新潟方面から伸びる日本海側の道路を使用するほうが、明らかに早いからだ。


となると、輸送手段は海一本に絞られる。そして、この近辺で大規模な軍団を丸々、乗船させられるような船が必要にもなる。


これで、条件はかなり絞られた。


条件として


一つ 輸送は海路で行われる。


二つ 大規模な軍団を丸々、乗船させられる程の大規模な民間船舶が、入港できるような大きい港がある街。


三つ 軍団は月山、つまりは東北の方へ進んだ。


この条件から、出てくる街が一つだけある。


日本地理に疎い僕でも、これならわかる。


東北の主要都市の一つである、仙台だ。


「情報をありがとう。僕らはすぐにでも進軍するよ」


「あっ、当ホテルのご利用、ありがとうございました!あ、それから外に居る軍人さんには、おにぎりを配布させて頂きました!頑張ってくださいね!」


僕は受付の男性に手を振って、ホテルを後にした。


こうしては居られない、すぐにでも前進をするんだ。


そうじゃないと、このクーデターの首謀者と連携が取れない。


そう思い、駆け足でシキツウまでの道を僕は行くことにした。




シキツウが設置されている空き地まで着くなり、急いでシキツウの中に乗り込んで、乗員が居るのか確認した。


車内を見る限り、シキツウは乗員全員が問題なく居た。


「安城さん!急いで軍を出すよ。各部隊に早急に進軍準備を終わらせるように言って」


「お、おい!どういうことだよ、閣下!?」


僕は急いでいるから、余り構っていられないムードを醸し出して、安城にとりあえずやらせるように仕向ける。


「坂東一曹!いつでも発車できるようにしておいて!」


「了解しました!」


「あぁ、もう!わかったよ!そう言っとけばいいんだね!?」


最終的には、若干ヤケになった安城がそこに居て、その隣で大空がガクガクしていたが、僕は気にしないようにした。


「はいはい!全軍、進軍準備完了だってさ!」


僅かに数分しか立っていないが、準備を終えるところはさすが軍人と言ったところだろう。


「機動軍全軍は、長岡に対して進軍を開始する!全軍、前進!」


「了解したよ!『機動軍全軍は、長岡に対して進軍を開始せよ!全軍、前進!』」



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