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フリーダムワールド  作者: 雪原果歩
第二章 日本戦線編
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第二十八話 最前線の居酒屋

結局あの後、特に歩兵による抵抗は無く柏崎は占領された。


しかしながら、僕たちがここを空けて前に進むわけにはいかないために、佐渡に空挺隊の派遣を要請した。


『我、親鳥。降下5分前!』


僕はハッチから身を出して輸送機を探した。


すると、少し先に3機編隊の輸送機が見えた。


「親鳥を見つけた!コース良し、って伝えといて」


親鳥は佐渡から来た空挺隊の輸送機のコールサインだ。


「了解~。『こちら、小さな作戦司令部。親鳥を視認した、そのままのコースで侵入されたし。繰り返す、コース良し。コース良し』」


『誘導感謝する!』


それから少しの時間が経つと、空挺降下が始まった。


飛び出した隊員の背中からは即座にパラシュートが展開されている。


初めて空挺降下を見た僕は、若干興奮気味にその光景を眺めていた。


二番機、三番機と続いて降下していく様は正に、空の神兵と言ったところだろう。


空挺降下が終わり、部隊が展開し終えた段階で隊長らしき人物がシキツウまでやってきた。


「第一空挺団、第一大隊、大隊長、鹿山(かやま)陸軍中佐であります!」


大隊長と名乗る男は敬礼をして言った。


「虚春桜花大元帥です。車両の上からですみませんが、よろしくお願いします」


僕は答礼をしながら言った。


お互いに敬礼を解いて話始めた。


「いえ。それより大元帥閣下は、これからどうされるのでしょうか?」


「僕らは貴隊が柏崎に広域的に展開し終えた段階で、前進します」


「了解しました!現在、我が大隊は柏崎にて部隊の展開を行っております。我が隊の陣地及び、司令部の設営が完了出来次第、伝達の兵を向かわせます」


「了解しました」


「それでは、私は司令部の設営の方に回りますので、失礼します」


彼はそう言ってその場を後にした。


「あ~あ。写真撮りたかったなぁ・・・・」


「撮ればよかったものを、今更何を」


大空は無情にもそう言った。


この光景をどれほど見たいと自分が思ったのか知らないくせに!


「まぁ。ミリタリーの良さをわかってない君には、到底理解できない領域だろうね。そうだよね、無線オタク?」


僕は北陸自動車道における戦車戦が、起こる前の道中での会話で、大空が無線オタクすぎて学校でイジめられていたという話を安城から聞いた。


当然、その話をした時に大空はもちろん怒った。


僕が、「なんで知ってるの?」って安城に聞くと、実は大分前から彼らはネットの交流会での知り合いで、一度相談されたことがあると言っていた。


それ以来、道中で何かと僕に突っ掛かってくる大空に、ちょっとイラッと来たので皮肉を込めて無線ナードと言った。


「あぁ、そうだろうな。ミリオタが」


大空本人も、僕の事をこう言っているからある意味、お互い様という面もあるだろう。


「大空もムキになってんじゃないよ。事実は曲げようがないしな」


安城は笑いながら大空にそう言った。


「姉御、ホントやめてくださいよ!」


「大空くん、もっと強くなろう!そのプロセスとして野球をしよう!スポーツして脱もやし!」


村山は脱もやしと称して野球を勧めている。


というか、一緒にやりたいだけのようにも見えた。


「スポーツなんてやる暇ないですよ・・・。自分らはまだ高校受験終わってない段階で、徴兵されたんで・・・・」


年上には丁寧な言葉で話す大空に若干違和感を感じたが、まぁそんなものだろうと思いながら彼の話の続きを聞くことにした。


「まだ私立受験すら始まってない時に、学徒徴兵が起こったので、結局どうなるのやら・・・・」


「でも、政府がそれの対策案を考えているから、きっと大丈夫だ!」


「でも、時間はどうしようも無いじゃないですか。しかも、この戦いがいつまで続くのかもわからないですし、そこのクソみたいな司令官のおかげで」


なんだと!?いや、確かに開戦以来ガバガバな面もあったが、あれはしょうがないのでは?と自分でも思う。


それに僕の試算ではこの戦いは少なくとも、夏には終わる。


なぜならば、その頃まで戦っていれば、米軍の支援が来るはずだからだ。


まぁ、今現在進行形でそれが難航しているのだが。


それと記憶が確かであればだが、以前に内務省の使いの人と話した際に、今期の受験はある程度レベルを下げたり、時期を夏などに変更するなどの対応策の為の、特別措置法を提案する用意があるとの事だ。


だけど、クソ発言はちょっとばかし怒ったので言い返すことにした。


「僕の事をクソと言いたければいくらでも言いたまえ。こっちは君にはできない仕事をしているんだ、君も君の仕事をちゃんとこなし給え」


僕は大空にそう言い返した。


「桜花くん、喧嘩は良くない」


「おう、大空。あんたもいい加減にしなさい」


僕らは安城と姉さん二名に怒られて、しばらく気まずい雰囲気の中、しばしの時間を過ごした。




空挺降下から2時間程経つと、空挺団の兵がシキツウまでやってきた。


「第一空挺団、第一大隊所属、有馬軍曹であります!大隊長より言伝を任されました!」


「内容は?」


「第一大隊は既に司令部の設営を終了した。とのことです」


「了解した。それで、街の様子はどうだい?」


「は、はい?何故そんな事を?」


彼は意外な質問を投げかけられて、若干戸惑っているように見えた。


「いや、だって街の市民が反抗的だったら、ゲリラが発生する可能性もありえるじゃん?」


「そういう意味でしたか。街ではどちらかと言えば、歓迎されているような形ではあります!」


意外だな。正直、もうちょっと反抗的だと思っていたのだけど。


これなら憲兵隊の増援は要らないか。


「やはり、ここは以前までは自由民主国の領地でありました故に、こうなっているのではないかと。大隊長も仰っていました!」


そうか、ここは前までフランスが統治していた領域だったからか。


さすがに、急な政治思想の改革は国民にも無理をさせていたのだろう。


ある意味、開放となったワケか。それなら、そういう雰囲気になるのも頷ける。


「有馬軍曹、ありがとう。貴官は所定の持ち場に戻ってくれ!僕らは進軍を再開する!」


すると、車内からは「今からまた進軍!?一度休んだらどうだい?」と安城が言った。


「私も下士官の地位ながら同じことを具申させていただきます」


有馬軍曹もそう言っている。


どうしようかと考えながら空を見ると、気づかなかったが夕方になっていて、これからの進軍は視界的にも、兵士の体力的にも毒だと考え、柏崎で一度休むことにした。





夜になり、部隊員は空き地にテントなどを設営し始めた。


一部の仕官、下士官は街にあるホテルから招かれたため、そこで宿泊させてもらえることになった。


だが、他の兵士はこの冬の夜中にテントで寝ることになっているので、みんな少しテンションが下がっているようにも見えた。


僕は軍の指揮官だから、ホテルの招待を受けてホテルで一泊することにした。


ホテルは共産化する以前に立てられたものらしく、造りは豪勢だった。


そのため部屋も特に文句をつけることもなく、急なことにも関わらず料理まで用意してくれた。


その後、夜の街の中に出てみると街中では戦闘糧食を食べた後だが、腹の中にまだまだ詰め込めるという兵士達で、飲食店などの中で溢れていた。


よく見ると、ある種炊き出し状態と化していて、みんながタダで酒や飯を飲み食いして騒いでいた。


市民や店主も混ざって、よろこんでそれをやっている様子から、かなり辛い日々だったのだろうか、と思った。


そんな中、「開放記念 本日限定御代は無し!」という看板が立てられた居酒屋で、一般市民に混じって友永陸佐と戦車隊の仕官たちが酒を飲んでいた。


夜の街中を歩いて暇だったために、僕もその中に混ざることにして店の中に入っていった。


「よう、坊主!お前も飲みに来たのか?」


少し、酒で出来上がっている友永陸佐が「まぁ、座れよ」と言って近くの席を指した。


「あんた、子供みたいだけど、軍人さんなのか?」


僕が席に座るなり、店主がそう聞いてきた。


「おうよ!この坊主は俺達の大将だ!ほら坊主、自己紹介しろ!」


「ほう、この女の子がかい?」


友永陸佐が酔った勢いで会話に入ってきて、僕に自己紹介をしろと言ってきた。


まぁ、別に自分の階級とかを隠しているワケじゃないからいいけどさ。


それと僕は男だ。


「東海連邦軍、統合幕僚長の虚春桜花です。あと、僕は男です」


「統合幕僚長?しかも男?わっかんねぇな」


「ははは!店長、この坊主は大元帥だぞ!」


店長がわからないようなので、友永陸佐が大元帥だと言うと、店長は明らかに驚いた様子で僕の事を見ていた。


「大元帥!?こんな子がかい?おったまげたなぁ。おっと失礼、大元帥殿はどうされますか?」


「それじゃ日本酒で」


「あいよ、日本酒ね!ウチは国直営の店だったから、金で仕入れてたワケじゃないから、タダで問題ない!」


店主はそう言って気前よく出してくれた。


僕は、直営店で酒が此処にあって、それを僕らがタダで利用しているということはある種の鹵獲だなと思いながら、店主を含めた一般市民や、戦車隊の仕官らと話をした。


一般市民らと話をしていると、改革時は相当酷かったらしく、まずみんなが口を揃えて言ったのが、「金が紙くず同然になった」という事だ。


「俺達が資本主義の時代に、頑張って働いて稼いだ(フランス)円が急な改革で、みんな使えなくなった!」


「あん時はみんな銀行に駆け込んだんだけど、銀行に予め渡されてた(ソビエト)円が少なくて、換金したくてもできんかったのさ!」


「そうだよ!しかも皆平等とか言ってる癖して、それを言ってる高官だけがいい生活してるんだぜ!?」


「酒でもねぇとやってられっか!まぁ、そんな酒も賃金が少なすぎてあんまり買えなかったんだけどな!ガハハハ!」


「でもこれからは再びやってくる、古き良き時代!資本主義社会に乾杯!」


『乾杯!』


一般市民の酔っ払いが気分よく鳴らしたグラスの音は、店内によく響いた。




それからしばらくして、店内居た一般市民が興味深いことを言い始めた。


「たくさんの兵隊が山の中に入っていったのを俺は見た」


「それはどこで、どういう感じでしたか?」


余りにも興味深いことで、僕は食い気味に聞いた。


「お、おう。俺はトラックの運転手で、移動中に見たんだけども、あれは確か・・・・山形の月山に沢山の兵隊が入っていったよ。方角からして南の方から来たっぽかったな。」


南ということは、西部方面の戦線における主力だったものか?いずれにせよ、大規模な兵力が北上したのには変わらない。


「なんか、そいつら変な雰囲気だったんだよ。軍服なんだけども、あいつら白い(たすき)をしてたな。なんかの歴史映画で似たような感じの雰囲気を見たことがあるんだよなぁ・・・・」


その一般市民は頭の中で必死に思い出そうとしている。


「あ、そうだ!二・二六事件だ!それを題材にした映画の兵隊っぽかったな!」


二・二六事件は1936年2月26日に、大日本帝国陸軍の青年将校が東京で行ったクーデター未遂のことだ。


まさかとは思うけど、社会主義連邦の中で何かしらのクーデターが起きようとしているのか?


もし、西部における大規模な主力をクーデターに割けるとしたら、かなり大きい規模の組織となっている可能性がある。


それに、今このタイミングで一部方面とは言え、主力を引かせることができるということは、親資本の可能性も十分ある。


この状況を一気に変える爆薬になる可能性は十分にある。


さて、僕はこれからクーデターを起そうとする組織とお近づきにならなきゃな。

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