第二十四話 独立陸戦総合火力機動軍
先の29戦車大隊の悲劇から30分経過した。
僕はその悲劇の直後から各方面軍と、通信回線を開いて幕僚会議を開き、各陸将と議論をしていた・・・・・ハズなのだが、一向に中身の議論が進まない。主な原因としては、エルスと中村君が初っ端に、互いの意見が対抗したからである。
「だから、当初の予定通りに突破できなさそうなら、なんとかここを耐え切って米軍の支援を待つのが先だって言ってるだろう!」
確かにこのエルスの発言は、計画通りにするのであれば正しい。場合によっては一気に制圧できる可能性もある。
「いいえ、英領日本軍と共同作戦で北部の上陸作戦を実行すべきです!このまま消耗戦をしていては、明らかにこちらに分が悪いです!ここは、流れに乗って進撃を続けるべきです!」
これも確かにありと言えばありな意見だ。事実、やつらの後方がガラ空きだった場合は、ここから一気に電撃的に包囲することも可能だ。だが、いかんせんリスクが高いというのがある。
というか、エルスの意見はもっともだが、アメリカはどうなっているんだ?
「オペレーター、アメリカ国内の状況はどうなっている?」
「アメリカ議会では、国粋的な意見が飛び交っていて、「自国の軍に他国の為に血を流させろと!?」という意見で、見事なまでに軍の派遣は難航してます」
「どんぐらい掛かりそう?」
「2ヶ月・・・・ですかね?」
オペレーターは、渋い顔をして一言返した。
あぁ・・・・。どうするかな?正直、2ヶ月掛かると言われれば、エルスの案は事実上無理だし、木村君の意見はリスクが高すぎるし、英領日本の義勇軍もまだ来る様子は無いもんねぇ。
「情けないな、貴様ら」
この状況を鑑みたのか、風間が話に入ってきた。そういえばだが、さっきまで風間は一度も発言をしておらず、ずっと二人の意見を流していたように見えた。
「あぁ!?なんだと、お前!?まともに話に参加してない癖して」
とうとう、エルスがキレた。スピーカーからは大音量でエルスの怒号が聞こえてくる。
もうちょっと冷静になれと言いたいところではあるが、一個大隊全滅となれば彼のようになるのも仕方ないのかもしれない。
「落ち着いてください、大竹さん!そんなところで言い合ってる場合じゃないです!」
中村君はそんなエルスをなだめようとする。
「それで、風間さん。その言い方だと、何か案があるんですか?」
「勿論、有る」
「だったら先に言えってんだ!」
「まぁまぁ、落ち着いてください大竹さん。それで、その案というのは一体?」
風間は一度、一呼吸置いてから語り始めた。
「新規の独立軍の設立だ」
「はい?」
その場に中村君の間抜けた声が流れた。
実際、僕も内心はそんな感じだ。新規の独立軍の設立ということは恐らく、既存の部隊を引き抜いて、独立して動く軍を再編するという意味だろう。
だが、今それをして何の意味があるのかということと、その独立軍に何をさせる気だという事だ。
「まぁ、話を聞け。東と中央が要塞線で貫けないとなると、次は北部に上陸戦を仕掛けるという案が持ち上がるが、それは前提として無理だ」
「な、なんでですか!?それだと、勝ち筋が見えないと思うですが・・・」
「だから話を聞けと言っているだろう。無理な理由として明確なものが一つある、それは北部の制空権は絶対的に取れないということだ。第一、時代は航空機との連携で戦う時代だ、敵の航空機が大量に要る敵陣のど真ん中に上陸でもしてみろ、一晩で全軍が蒸発するぞ」
確かにその通りだ。敵対空陣地の猛烈な対空弾幕を張られてしまっては、我が軍の航空軍は現在の戦線より、北へは移動できないだろう。航空母艦からの機体を発艦させても、数に限りもある。
また、制空権を確保しない状態で上陸しても、敵の超重爆撃機などが来て29戦車大隊の二の舞となってしまうのは明らかだろう。
「だから私は、機動的に西部を占領し北進する作戦を提案すると同時に、それを遂行できる新規の軍の編成を強く希望する」
確かに理に適っているが、一つの疑問が僕の中にはあった。
「風間陸将、西部の戦線を押し上げることは分かったが、何故新規軍の編成なんだ?」
「あぁ、理由か?そんなものは簡単だ。攻勢を西部方面軍の管轄にさせると危ないからだ」
「なっ、それはどういうことですか!僕が信用ならないということですか!?」
中村君が風間に対して食い気味に言う。
だけど、僕には風間の言葉の意味がよくわかった。
要は、攻勢部隊と防衛部隊は分けたいという意味なんだろう。もしも攻勢が失敗した場合、敵の反攻作戦で戦線が崩壊しかねないからだ。
僕らは現在、いわき、会津若松、上越のラインで戦線を張っている。しかし上越のラインが北上して、ここがもし殲滅された場合は西部及び中部方面における反攻作戦の激化と、戦線の後退、そして最悪のケースとして戦線を食い破られる可能性があることだ。
できることなら新規に軍を再編して、その軍で攻勢作戦を仕掛けるのが適正だろう。
しかしながら、それには一つ問題があった。
「新規に軍を設立したい、というのは分かったけれども、司令官は誰がするんだ?」
その発言から暫しの沈黙の後。
「貴様だ」
風間からその言葉が出た。というか、僕!?
「いや、待てよ。僕は現在進行形で総指揮官をやっているわけですが、それは・・・・」
「問答無用。貴様は今の段階で、雪空が攻勢作戦で使えると思うのか?」
チラリと姉さんの方を見ると、何故かわからないが興味なさそうにスマホを弄っているように見えた。
「だ、だめだ・・・・・」
その光景を見た瞬間に、その一言が僕の口からスッと抵抗なく出てきた。
「だろう?」
風間のその一言を聞いて僕は、ハァと溜め息をついて抵抗を止めた。
それは、風間の言葉が正論であるからだ。
やはり、この現状では風間の言う通り、東部や中央から進軍するのは不可能だろう。となれば、どこに進撃するべきか?自ずと見えてくるのは西部だ。
当初の予定では西部ではかなりの抵抗が予想されていたために、進軍をする予定はなかったが、あの要塞線の迎撃能力を見て、幾分かマシだと思い、踏ん切りがついた。
「おーい、誰かすまないけど海将を起して来てくれ」
「それなら、私が行って来る」
名乗りを上げたのは姉さんだった。
「んじゃ、お願いするよ、姉さん」
姉さんが出て行った20分後に姉さんは海将を連れてやってきた。
戻ってきた姉さんの顔には若干の疲れが見られたために、海将は相当寝起きが悪いのだなと思ったが、先程ようやく当直を終えて寝ていたのに、それを起したとなるとちょっと罪悪感がした。
「閣下。何かありましたか?」
海将は眠そうな顔のまま、司令室に入るなり僕の前に来てそう言った。
「とりあえず簡単に、噛み砕いて、要約して言うんでちゃんと聞いててくださいね?」
海将は「はい」と一言応えた。
「独立軍を新たに組織して、西から北上して頑張るために、僕がその軍の指揮官になるから、あとは任せた」
その発言を聞くと、海将の先程まで眠そうだった顔が一瞬で消し飛び、驚いていた。
「閣下、それはどういうことですか!?」
「どうもこうもないよ。さっき、要塞線に威力偵察として戦車大隊を送ったんだけど、全滅しちまったから、ここを突破できる気がしないから、西から攻めようって話になっただけだ」
「いえ、そういうのではなく、あとは任せたの辺りです。閣下自らに指揮をしてもらわなければ困ります!」
「う、うーん?いや、どちらにせよ僕が前線に行く事になるからなぁ」
「それだったら、私を前線に!」
海将を前線に?それはナンセンスだ。
「第一、貴方は海将でしょうが。海将、貴方に電撃戦が出来るんですか?」
実際これなんだよな。
この軍の指揮官は、電撃戦が出来なければ意味がない。
すると、海将は何か閃いたような顔をした。
「どうしたんだい?海将」
「いえ」
フフフと海将は不気味な笑いをしている。
「前線に行くから指揮が出来ない、こう仰りたいであれば、指揮車で指揮すればいいじゃないですか!」
うん?何か今変な言葉が聞こえた気がするんだが、気のせいかな?
聞き間違いなのを確定するために、僕は彼に何と言ったか聞くことにした。
「海将、今なんて言いました?」
「指揮車で指揮をすればいいんですよ」
クッソ!全然聞き間違いじゃなかった。第一、前線で指揮をする指揮車でどうやって、ここのレベルの情報を処理するっていう話なんだよ!
「さすがに・・・・無理があるのではないのでしょうか?」
思わず下に出てしまった。
「いえ、大丈夫です。直接的な情報処理はこちらで行いますので、閣下はただただ指示を出せばよろしいのですよ」
海将はニッコリと満面の笑みを浮かべてそう言った。
僕にはその笑みは悪魔の笑みにしか見えなかった。
だが、この戦争を勝つためには仕方の無い犠牲だと覚悟をして、渋々了承をした。
さて、指揮官問題が終わったところで新規の独立軍の編成をするとしよう。
今回の軍に要求される能力としては、オールマイティで機動的な攻撃が出来る、ということだ。
また、今回は突破力が必要なので、少数精鋭で行くのがいいだろう。
それを考慮すると、まず最初に火力と速度を兼ね備えた航空騎兵が要ると考える。
航空騎兵と言えばどんな部隊があったかな?
思いつくのは先の二月事件で活躍した、烏やワルキューレだ。
ワルキューレに関して言えば、開戦直後の作戦でも戦果を上げた部隊でもあり、大隊規模の部隊ということもある。
それを考えると航空騎兵はワルキューレを引き抜くとして、次は陸戦隊だ。
陸戦隊はやはり、歩兵と戦車だろう。まぁ陸戦隊に関して言えば、もはやもう決まったも同然と言えるメンツが、連邦軍には既に存在する。
戦車部隊は、友永陸佐率いる第34戦車旅団を引き抜く。
陸戦の猛者だ永友陸佐の部隊は、歴戦の兵ばかりだ、今回の戦場でもきっと大活躍してくれるだろう。
歩兵部隊は第一機械化狙撃大隊を引き抜く。我が軍の第一機械化狙撃大隊は、他国の特殊部隊と同義であると、胸を張って僕は言える。
それこそ、アメリカで言うデルタフォースやNavy SEALsであったり、イギリスで言う特殊空挺部隊だ。
それほどのまでの猛者が揃った機械化大隊なんだ、一般歩兵相手の市街地戦で負けるようなヤワな部隊では無い。
さて、軍の詳細を決めたところで、次に名前を決めるとしよう。
名前は重要だからね。歴史に残るから、絶対に重要だ。
こんなところで中二病全開の命名をしたら、絶対に末代まで恥をかくのは明らかだろう。
それを考えたら、真面目に名前を考えなければならないと思った。
そうだな、連邦軍での独立した軍であり、陸戦における火力を総合したような軍だから・・・。
よし、独立陸戦総合火力機動軍だ。
なんだか、頭が悪そうな名前だな。




