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フリーダムワールド  作者: 雪原果歩
第一章 楽しい生活の始まり編
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第十五話 彼女のトラウマ 僕の恐怖

自宅に戻ってみると、自宅の前に姉さんが立っていた。周りには人は居なく、姉さんの雰囲気自体がいつもとは違う。


あぁ、あれなんだろうなと察して僕は思わず溜め息をついてしまった。


何年前からだろうか、姉さんがこうなったのは。姉さんは僕の溜め息に気づき、僕の方を向いた。ここに居てもしょうがないので、僕は自宅の扉を開けた。


「中に入ろうか、姉さん。」


姉さんは頷いて、僕のあとを追って自宅の中に入ってくる。中へ入っていくと後ろからいきなり姉さんに抱きつかれた。


こうなったらしょうがないので、一度、シャワーを浴びて、そのまま寝室へ行き、着替えて二人でベッドの中に入ることにした。


姉さんは僕に『愛情』を求めてくることがあった。

あった、というのはここ半年の間姉さんとは会ってないからだ。ひどい時は毎日来ていたこともあった。元々、僕と姉さんの繋がりは、姉さんが僕が虐められて不登校になってから心配して僕の事を見に家まで来てくれていた近所のお姉さん程度だった、あの事件が起きるまでは。




2年前、姉さんの父親こと雪空真人(ゆきぞらまさと)率いる雪空組のシマを奪取しようとする組、深山組が雪空一家に対する襲撃事件があった。


深山組は雪空組に対応させる暇を与えないために雪空一家がバラバラに居るときに同時に襲撃を掛けた。


その結果、雪空真人は襲撃により死亡し、またその妻である雪空明子(ゆきぞらあきこ)も同じく死亡、その後、雪空組の指揮系統は一時混乱したが、幹部がそれを建て直し反撃をして、深山組を壊滅に追い込んだ。


そして姉さんはその日、僕の家に居た。当然のことながら僕の家にも深山組の襲撃があった。


おかげで家具などがボロボロになって、僕と姉さんにトラウマを擦り付けられたけどもね。


でも何故、姉さんだけが生き残ったかというと、当初の計画として深山組は雪空夫妻への襲撃が失敗した場合の交渉材料を持っておくために生かしておくように指令していたそうだ。


あぁ、2年前のあの日を思い出すよ。確か、ニュースでは今年一番の真夏日と記してあり、室内で窓を締め切り冷房を掛けていても外から蝉の鳴き声が聞こえていた━━━━━。




━━━2年前━━━━

ピンポーン とインターホンの音で起床した。自分の部屋にある時計を確認すると、時計の針は時刻16時を指していた。時間からして姉さんと早間さんが来たのだろう。早間さんは姉さんが外出する際に付けられる護衛の人だ。けれども、僕が思うに早間さんはかなりの変人だと思う、何故なら女性なのに男物のスーツを着ているから・・・・ということだ。しかも、早間さんは姉さんと同じ年なのに学校もそれで行っているのだから、変人としか言い様がないと思っている。


誰かが応対してくれると思ったけれども、この時間では家族は基本的に誰一人として家に居ないので、玄関まで行き、扉を開けるとそこにはいつも通り、学校の制服を着た姉さんとスーツを着た早間さんが居た。


「こんにちは、桜花くん。」


「・・・・おはよう、姉さん、早間さん」


「もう・・・16時なのにまだ寝ていたの?この前、生活を改善しなさいって言ったよね?」


姉さんは驚いたように言った。

僕は、その言葉に何も返すことはできなかった。


「お嬢もこう言ってるのですから、改善されてはどうしょう?桜花さん。」


確かにいつも改善するように促されてはいるが、致し方の無いものってものがありましてですね・・・・。

そう思っているとジト目で僕のことを見つめてくるもんだから、無意識のうちに目を逸らしてしまった。


「あ、目を反らしましたね。」


早間さんはさらに僕を追い詰めてくる。


すると意外なところから助け舟がやってくる。


「早間さん、ダメですよ、そんな風に追い詰めたら。」


しかしながら姉さんの目は笑っているように見える。


こういう時の姉さんはマズいと過去の経験で僕は身を以って経験している。


「姉さん・・・・助けてくれるんだよ・・・ね?」


姉さんは笑いながら言った。


「えぇ、もちろん。だから・・・・・・」


「だから・・・・?」


「大人しくしててね!」


その最後の言葉を聞いた瞬間、僕の足は自分の部屋へ向けて駆け出していた。


がっ......駄目っ........!駆け出したその次の瞬間には早間さんの超人とも言える身体能力の前には手も足も出ず、取り押さえられてしまった。


恐らく早間さんは、某格ゲーで有名な背水の陣のジャストガードに負けず劣らずの速度で反応、対応までこなしただろう。早間さん、本当に頼みます。このままだと僕は・・・・・。と目で懇願すると、早間さんが一瞬、揺らいだ気もしたが、そんなことはなかったのだと現実が目の前に立ちはだかってきた。


「もう逃げられないよ・・・?」


じりじりと詰め寄ってくる。


「ちょ、ちょっと待った!一つ聞いていい?」


「え?何?」


「何をする積り?」


「え?何って・・・ねぇ?罰として、桜花くんに女装させるんだけど?」


やっぱりか・・・・・やっぱりなのか・・・・ッ!姉さんが僕に対して罰紛いのものを与えるときは大抵こうなんだ!


「お、お嬢、どうなさいますか?」


早間さん、一旦落ち着こう?早まるな。というかなんで興奮してるの!?早間さーん!戻ってきてー!


いや・・・・待てよ?


ある一つの発想が頭の中を過ぎった。


「今日は、女物の服を姉さんが持ってきてないから問題無し!セーフ!」


よし!勝った!そうだよ!現物が無いのにどうやって僕に着させるんだ。


第一僕に着させるという発想がおかしい。


「誰が、私が持ってくるって言ったのかしらね、桜花くん?」


「それは・・・・・どういう。」


「日影のを借りるに決まってるじゃない。」


日影━━━虚春日影


僕の実の姉であり、姉さんの同級生である。


「影姉のを借りてまでなんで女装させようとするのさ!?」


「だって・・・・着せたら可愛いと思うんだもん。あ、それと、あとこの前、私が改善しなさいって言ったことをやってなかった罰ね♪」


そう言うと姉さんは、僕が風間さんに拘束されて、体の自由が無いのをいい事に、僕の服を脱がそうとし始める


「ちょっと待って!本当に待って!話しを聞いて!」


すると姉さんは、何?と行為を途中で止められて不機嫌そうにこっちを見てくる。


というか、そこで止められて不機嫌そうになる姉さんを見ると非常な残念な気分になれてきた。


それよりも・・。


「いやー・・・・姉さんは何故かわからないけど、僕にピッタリのサイズの女物の服を持ってくるから、いつもは着せられてるけど、家にはある女物の服は母親か、影姉のものしかない・・・。ということは何を言いたいかと言うと、この家には僕に合うサイズの女物の服は無い!」


すると姉さんはそれは思いつかなかったと驚愕した。


いや・・・・、気づいてよ。


僕は姉さんのことが、だんだんと残念に思えてきた。


「早間、桜花くんの拘束を解いてすぐに家に桜花くんの服と、カメラを持ってきてちょうだい。ネットに拡散するわよ。」


「ちょっと待って。今聞き捨てならない言葉が耳に入ったんだけど・・・。え?僕の服?僕、女装したことないよね?」


「えぇ、だから、サイズを測って、新しく作ったの。」


姉さんの言っている言葉の意味が理解ができなかった。


「だから、サイズを測ったの、日影が。」


姉さんが発したその言葉は、僕にとって死刑宣告に等しいものだった。こんなご時勢にそんな事をされたら僕の女装がネット上で、一生晒され続けるだろう。それはなんとしてでも阻止しなきゃ、と心に硬く誓った。


しかしあの姉ちゃんはいつも変なことしかしない・・・・。今回に関して言えば、堪忍袋の緒が切れた。宣戦布告待ったなし、12月8日朝だ。明日の早朝に寝ている姉ちゃんに奇襲を掛ける!


「はい。しかしながら、しばらく出してなかったので、少々時間が掛かるかと・・・。」


その瞬間、早間さんが居ない時間に僕は逃げ出すなり、解決策を見出すなりの行動を起さなきゃいけないことが確定した。


「わかったわ。それじゃあ、よろしくね。」


「はい、お嬢、お任せを。」


すると早間さんは僕の拘束を解くと、すぐさま雪空家へ走っていった。姉さんの自宅である雪空家は、武家屋敷のような造りになっていて、中が結構広く物を探すとなれば時間がかなりかかるだろう。何故そこまで知っているかと言うと、家が超が付くほどの近所だからである。その近さは、駅前徒歩5分の物件も驚きの、徒歩30秒というレベルだ。


近所で、影姉と姉さんが同じ小、中学校に通っていたこともあり、近所付き合いもある。もちろん雪空組の組長でもある、雪空真人とも会ったことがある。雪空真人は、誠実過ぎて時々、極道だという事を忘れそうだったことがかなり印象に残っている。


それから僕と姉さんは、ここで待っててもなんだからということで、自分の部屋に行くことになった。姉さんは相変わらず僕に女装をさせる気みたいだ。


ネットの拡散力で僕の女装写真が拡散されてしまったと考えたら・・・・。さらば、僕の安泰な引きこもり生活。


僕の部屋に行こうとすると、インターホンが再び鳴る。通話ボタンを押すと画面には宅配便の配達員らしき男が映っていた。


「はい、どちら様でしょうか?」


「あ、ムサシ運輸です。お荷物を届けに参りました。」


荷物?何か買った覚えはないんだけどな・・・・。姉ちゃんがアマゾネスで何か買ったのかな?


「姉ちゃん、宅配業者が荷物届けに来たっていうから、ちょっと出てくる。」


「逃げるかも知れないから、私も行くわ。」


いや、逃げないよ。というかその発想は無かったわ。


二人で再び玄関まで行き、扉を開けるとそこには男が配達員が二人居た。しかし、普通の配達員とは絶対的に違うものがあった。荷物の代わりに片方の男が連邦国内で、密輸されて、比較的安価な拳銃である、トカレフを、もう片方の男がAK47なんて代物を持っていた。


自体が把握しきれない僕は、一瞬硬直してしまった。横をチラ見すると、姉さんも同じ状態に陥っていた。


すると、トカレフの方の男が言葉を発する。

「大声を出すな、家の中へ入れ。」

その瞬間にこれは姉さんを狙ったものだとようやく頭が理解した。

僕らは武器を持ってないので大人しくしたがって、家の中へ入った。


襲撃者の二人組は、僕たちにリビングの部屋に行けと命令された。


トカレフの男は、AKの男にリビングで通路を見張るように指示した。


リビングに入ると、僕らはテーブルの片側に座るように命令された。


トカレフの男は、トカレフを服の中に仕舞い込み、僕らの正面になる方に座り、話し始めた。

「なぁ、お前が雪空明海だな?」

男は、姉さんを見ながら言った。

姉さんはとても襲撃者におびえているようで、体が若干震えつつも、頷いた。


姉さんと襲撃者のやりとりで少し間が空いた。


それにより、僕は冷静さを取り戻すことができた。


具体的にというと、テーブルの上には恐らく姉さんが何かを食って、そのまま放置しただろう皿とフォークが残っていて、テレビがついていることなどに気を向けられるレベルには冷静、というよりもリラックスできている。


そんな自分が異常なんじゃないかと若干思えてしまって仕方ない。


実際、今はもう既にどうすればこの襲撃者を制圧、もしくは殺害することができるかを考え始めている。


すると、襲撃者は仕舞っていたトカレフを右手に持ち、初弾を装填してから、席を立って僕の方へ歩み寄ってきた。

そして、僕の傍まで来ると僕の頭にトカレフを突きつけてきた。


「お前は、誰だ?」

襲撃者は質問する。


「僕?僕かぁ・・・・・。ただの引きこもり?でお願いね。」

拳銃を突きつけられてもリラックスして対応。

となりじゃ姉さんが恐怖の余りに目を一生懸命に閉じて、現実を見ないようにしている。


するとトカレフの男は

「あ、そう。じゃ、お前いらんわ。」

そう言ってトリガーに手を掛けた、その瞬間

「お嬢~~!持って来ましたよ~!」

玄関の方から声がした、早間さんが戻ってきた。


襲撃者の二人組が一瞬、動転した。

その瞬間にテーブルの上フォークを手に取って、思い切りトカレフの男の右手に突き刺した。


すると、男は痛みでトカレフを手放した。

それを僕はキャッチし、フォークで思い切り突き刺された痛みに悶える男の腹に一発、ゼロ距離で撃ち込んだ。


弾丸は命中し、男は倒れこみ、苦しみ悶えている。


反動で手からトカレフが一瞬離れそうになったが、何とか握り締めている。


なんせ、人生で初めて銃を撃ったのだから、仕方のないことだろう。


AKの男の方を見るとさっきの銃声でようやく気づいて、僕の方に銃口を向けて引き金を引いた。

が、しかし男は頭が真っ白になっていて、我を忘れていたのか、見事なまでのノーコン射撃で部屋の中の家具をボロボロにしていった。


すると、男の背後からいつの間にか来ていた早間さんが、男に襲い掛かった。


もちろん背後からの奇襲ゆえに男は反応できずに後頭部に早間さんの蹴りを食らい、その場に倒れた。僕の隣で苦しみ悶えている男とは違い、そいつはピクリとも動かなくなった。


その後、僕は、僕にトカレフをくれた死に損ないの男に、家をグチャグチャにした御礼として、男の頭に一発の鉛弾をプレゼントした。


すると、さっきまで苦しみ悶えていた男は動かなくなった。恐らく、即死だろう。


すると早間さんは慌てた様子で、何事かと聞いてくるので、襲撃だと僕は答えた。


とりあえず、早間さんはこの発砲事件の揉み消しと、死体となった男の処理を行ってくれると言ってくれた。


いやぁ、ありがたい。正直、こんなところで発砲事件があったとなると困るのはウチだからね。


早間さんに姉さんの保護をお願いしながら、姉さんの方を見ると、泣きながら失禁していた。


まぁ、こんな恐怖体験は滅多に経験しないだろうからしょうがないと思った。


僕は部屋の中を見渡すと、AKの男が乱射したせいで家具には穴が開き、食器は割れ、テレビは破壊され、家族にどう説明しようか考えていたところで、さっきのトカレフが僕の目に入った。


その瞬間に何をやっていたんだ?と僕は今頃思い始めた。


僕は男にフォークを突き刺して、トカレフを奪い取り、それを使って"人を殺した"。


なのに何で僕は何も感じていないんだ?


わからない━━━━。


だからこそ心の底から湧き出る恐怖が僕を支配した。


その瞬間、僕の意識は途絶えた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


今、思い返せばあれは僕と姉さん、二人のトラウマだったと思い出すことができた。


姉さんは両親を失い、人前で自分の感情をさらけ出すことをやめてしまった。


愛情を僕に求めるのは、求めていた人が居なくなってしまったから、だと思っている。


もはや、僕はどうしようもないと、半ば諦めている。


そして、なんで僕はあの場で意識を失ってしまったのだろうか、未だによくわからない。


思春期から来る感情の多様性からなのか、など色々今までに考えてきたことがあるが、よくわからない。


思い返せばあれは僕が生き残るためには仕方のないことだった。だって、そうしないと殺されていたのかもしれなかったのだから。


その時に僕の頭の中で本当に殺す必要はあったのか?とふと思った。気づいてしまった。


あの場で、あの男は別に殺す必要なんてなかったんじゃないかって、気づいてしまった。


だって、あいつは腹に一発食らって立ち上がることさえ困難な状況で、どうやって僕を殺すんだ?下手をすればあいつはそのまま出血多量で死んでいた。


なのになんで僕はあいつの命をあの場で、自分の手で終わらせたんだ?


そして、それに何も思っていなかった自分の異常性にも気づく


何故かわからないが、呼吸が乱れ始め、胸が苦しくなってきた。


何がなんだかわからない恐怖が僕にまとわり付いてくる。


このままでは前と同じだと思い、一度、深呼吸をした。


すると、呼吸は元に戻り、落ち着くことができた。


これ以上、考えていても無駄だと思い僕は寝ることにした。


いや、これ以上考えることが怖いから寝ることにしたのか。


自らそう悟り、眠りに入った。

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