オレホン
お久しぶりです。
生存報告がてら
青い空、白い雲、こう続いたら、大抵のやつは海だろうと考えると思う。
実際俺もそうであるし、今だってそうである。山とか言うやつもいるが人はそれぞれだ。別にいいと思う。
だが、海に来て未だ一度も泳いでいないどころか水にすら触れていないのはどうだかなぁ、と思う。夏なのに。あと、人が一人もいないのは寂しい。
まあ、魔物はたくさんいちゃったりするのだが。
「……なぁ、俺たちなんで勇者達の尻拭いなんてしてるんだろうな」
魔物ーーと言っても色々な種類があるのだが、ここでは悪魔のような種類のヤツだーーの斬撃を一歩前に出て、くるりと1回転半して回避しながら、おれはそう言葉を漏らした。そうすると、
「でも、ここを通したら……正直ヤバいと思いません?」
魔物の黒い瘴気を纏った剣と氷でつくり出した剣とを打ち合わせ、鍔迫り合いをするいかにもな服装に身を包む女魔法使いがそう返してきた。
俺は逆さまになったままーーこんなことが出来るのは、魔法使いの“浮遊魔法”のお陰だーー戦闘をしていた俺は、ちらりと王都の方を見る。
蒼い海の上2、3キロ程離れている王都付近で戦闘しているであろうヤツらのコトを頭の片隅に思い浮かべ
「ヤバいな。ここを強いヤツを通すとか……うん、ないな」
「…………やっぱりそうなりますよね」
ちらりと横の魔法使いを見ると、同じことを思い浮かべたのだろう。少し魔法使いが疲れた顔をしていた。炎とか雷とかで、剣を使っている彼女を魔法使いと読んでいいのか些か疑問であるが、そう言う名の職業だから仕方ない。
今度もしも功績が認められるようなことがあったら、魔剣士という職業でも作って貰うか……と同じ苦労人である王様《本当のお友達》のことを思い浮かべてみる。
そうする間にも魔物はどんどん押し寄せてくる。
《魔物侵攻》。
“魔王の軍勢”とも呼称されるこの現象は、“魔王の復活”やら“悪魔将軍の侵攻”などのハプニングやら、はては“住処がなくなったから”という地球環境問題なんかでよく話題に上がることが原因で起きるらしい。(……というか……俗称は、何世代か前の地球からやってきた勇者が付けたらしい。何やってるんだ)
そして今回起きたわけとは言いますと。1番最初ーー魔王の復活である。魔王が復活したから、勇者が呼ばれたわけであるから、当然と言えば当然であるのだが……。
勇者たちが……その残念な所為で、こちらの負担がやばいのだ。魔王軍は軍隊として統制されているというのに、民衆からの勇者への期待が薄れるのを防ぐため、勇者自身にある程度の数の魔物は倒してもらわないといけない。
そのせいで俺たちは、高レベルの魔物とかを殲滅しつつ、勇者達で対応できるだけの数こ強さの魔物をリズムよく王都の方へと流さないといけないのだ。
……何この無茶ぶり……。そんなふうに悪態をついてみる。これは勇者がいない方が簡単のではないか。毎度のことであるがそう考える。いつも(てゆうか、異世界地球から数週間前にきた俺にとっては初めてなのだが)の方がやはり良いのではないか。魔王に強化されているとしても、そっちの方がやはり良い気がするのは俺だけでは無いはずだ。
元に近くの女魔法使いも、「こんな時姉さんが腑抜けていなかったら、姉さんがしっかりしていてくれたのならもっと楽だったのに……」とぼやいている。
ちなみに余談ではあるが、女魔法遣いのいう姉さんとは、“軍略の鬼才”と呼ばれていた女騎士のことである。女魔法使いはく、王城でもある部隊の筆頭騎士で、近衛騎士にも近かった……そうだ。俺は勇者に付きまとっている姿だけしか見ていないので、いまいち信じられないのだが。
この前とか……
「王よ、なぜ税の取り立てを止めないのでしょうか」
と勇者。
「王よ、勇者様の言う通りにございます。どうかご英断を」と呼応するように言う女騎士。
勇者はあれだ。……現代社会の教科書をもう一度見てこい。女鬼下なんだ、リスクの計算位しろよ。軍略が得意だったんだろう? それ以前に、昔口癖だったとか言う“貴族の義務”とかはどうした。税の取り立てをやめたりしたら、街の消火団とかもなくなるんだぞ。
あと他にも貴族制度は間違っているなどなんだかわかんないこと言っていた。確かに現代だと、それが正しいかもしれない。だが、絶対王政の時代にそんなことやったり、言ってみろ。議会をしているうちに、他の国とかに攻められて終了だ。あと魔物に攻められても終了だが。
まぁこれも余談だが、公爵に向かって、
「あなたはそれでも宰相なのかっ!」とかどなっていたりした。
逆に問おう。貴方はこの国の何なんだ。
……勇者(勇と書いてバ、者と書いてカと読む)か……。
そんなことを考えている間にも戦闘は続く。
迫ってくる敵はたくさん。こちらは2人。
絶望的な物量差であるが、何とか覆すしかない。
と考えて、焦りはしているのだが、いかんせん大量すぎて実感がわかない。
はぁ……と大きなため息をついて気合を入れ直す。
剣をしっかり握りしめ、俺たちはそれぞれの目の前にいる敵に斬りかかった。また、この活躍も勇者のものとして処理されるんだろうなと思ってしまったのはご愛嬌であろう。
………………………どうか聞いて欲しい。
俺が勇者達の後始末に奔走する羽目になった理由をーー。
今本格的に連載を考えてるやつがあります。
きっとえたらない……はずです。
そっちをよろしくお願いします。